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公開日:2023/06/01  

戦場の名残を留める鎧通!ほかの短刀との違いと特徴に迫る!


アニメや漫画、ゲームなどでよく登場する日本刀。実物を前にするとなんともいえない威圧感と芸術的な美しさを感じます。本記事では日本刀の中でも、とくにマイナーな短刀「鎧通し」の性質や使い方、ほかの短刀との違いなどを解説します。短刀とはいえ特殊な形をしている鎧通しとは一体どんな刀なのでしょうか。ぜひ最後までご覧ください。

一味違う短刀「鎧通(よろいどおし)」とは

鎧通しは、鎧を身にまとった相手に対抗するために開発された特殊な短刀です。最近のゲームでは、暗器としても知られています。ここでは鎧通しの性質や使い方について解説します。

鎧通しの性質

鎧通しは、鎧を着用している相手に対して使用される武器です。通常の刀では鎧を斬ることはできませんが、人間の関節部分は動かしやすくするために、より柔軟な素材が使用されています。そのため、取り組んだ際には刀ではなく、鎧の隙間に鎧通しを刺して戦うことがありました。鎧通しは一般的な短刀よりも刀身が分厚くなっており、刺した後に回すことで相手に大きなダメージを与えることができたといわれています。

鎧通しの使い方

通常の短刀は、柄の部分を前にして腰に装備しますが、鎧通しは柄の部分を背中側にして装着します。この装着方法を「馬手差し」と呼び、敵と取り組んだ際に鎧通しが抜けたり奪われたりするのを防ぐことができました。鎧通しは日本刀のように構えるのではなく、忍者のように逆手に握って使用する武器であり、背中側に柄があるのは理にかなっているのです。

鎧通しの使い方や装着方法にイメージが湧かない場合は、武将の細川澄元(ほそかわすみもと)を検索して、腰に携帯された鎧通しを見ることができます。YouTubeにも鎧通しの使い方に関する動画がありますので、確認してみるとよいでしょう。また、鎧通しは迅速に取り出せるため、敵の石垣を登る際に隙間に刺して足場として利用されたともいわれています。

戦国時代に栄えた鎧通の特徴とほかの短刀との違い

ここまで鎧通しについて解説してきましたが、ここからは別の短刀についても触れていきます。ほかの短刀の性質を理解することで、より鎧通しとの違いを理解できるでしょう。

刺刀(さすが)

刺刀は鎌倉時代の薙刀が主流であるときに活躍した短刀です。薙刀は距離が遠い相手には有利ですが、距離を詰められると窮屈になり、戦闘がしにくくなります。そのようなときに刃渡りが短い刺刀を使ってたくみに戦闘をしていました。刺刀は時代と共にどんどん長くなり、最終的には打刀のモデルになったとされています。

寸延短刀(すんのびたんとう)

室町時代末期から江戸時代かけて活躍した短刀が寸延短刀です。寸延短刀は日本刀のような反りはなく、真っ直ぐな形をしているのが特徴となっています。

懐刀(ふところがたな)

懐刀は常に腰に携帯しておく刀ではなく、護身用として女性が持ち歩いた刀といわれています。武家出身の女性が結婚する際に、自分の身は自分で守れるようにと願いを込めて渡された刀とされ、後に花嫁に送られる「守刀」として扱われるようになりました。

現代に残る鎧通として有名な短刀

現代でも知られる鎧通の一例として、以下の刀を歴史と共に紹介します。これらの刀は現在も大切に保存されており、機会があれば目にすることができるかもしれません。

厚藤四郎

厚藤四郎は鎌倉時代に活躍した藤四郎吉光によって京都府で作られました。この刀は全長7寸2分(約21.8cm)と小ぶりですが、重厚な作りで刀身の厚みは最大で1cm以上あります。一般的な日本刀の刃厚は6〜8mm程度といわれているため、この刀は非常に厚いといえるでしょう。最初の所有者は足利将軍家でしたが、後に豊臣秀吉や黒田官兵衛、徳川家康などに渡りました。

天保七年八月日

この刀は長運斎綱俊(ちょううんさいつなとし)によって作られ、強い反りが特徴です。また、刀身の先端部分だけが両刃になっており、「切先両刃造」と呼ばれる特殊な形状で、逆手でも鎧の隙間から容易に振るうことができるように設計されています。

明応七年八月日

この刀は備州長船祐定によって作られ、戦国武将の十市遠忠(とうちとおただ)に愛されました。刀身には祐定独特の刃文である「蟹の爪」と呼ばれる模様があります。

まとめ

本記事では、鎧通という短刀の性質や使い方、そして他の短刀との違いについて解説しました。鎧通は甲冑の隙間に挿して使用される刀であり、その特徴は刃の厚みにあります。日本刀とは異なる佩き方もあり、柄を背中側にする「馬手指し」という方法が基本でした。

また、有名な鎧通のひとつである厚藤四郎は、非常に珍しい形状である1cm以上の厚みをもっています。短刀の詳細を見てみると、時代によって刀の形や使い方も変化しており、その進化が考えられることがわかります。鎧通に興味がある方は、実際に本物を見ることができる博物館や美術館などに足を運んでみることをおすすめします。そこで、鎧通の魅力を存分に味わってみてはいかがでしょうか。

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