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公開日:2024/06/01  

江雪左文字の持ち主とは?天下の名刀となっていった理由を解説!

天下の名刀となっていった理由
日本の国宝に指定されている江雪左文字。多くの武将たちから愛された名刀ですが、なぜそれほど愛されていたのでしょうか。また、江雪左文字の歴代の所有者は誰なのでしょうか。そして現在はどこにあるのでしょうか。かつての持ち主たちが挙って愛した江雪左文字が天下の名刀となった理由についても解説していきます。

江雪左文字とは

江雪左文字は、こうせつさもんじと読み、南北朝時代の初期(14盛期頃)に作られたといわれている日本刀のことです。刃長78.1センチメートル、反り2.4センチメートルの太刀。短刀作りを得意とする初代左文字によって作られた日本刀で、板目のつんだ鍛えや深く明るく冴える作風などに左文字の特色が表れています。

なぜ江雪左文字という名前が付けられたのかというと、もともとは北条氏政の家臣である板部岡江雪(江雪斎)の愛刀であり、筑前国(現在の福岡県北西部)の刀工である左文字の打った太刀であることから、江雪左文字と名付けられることとなりました。鎬造で庵棟。身幅あり、鋒やや延び、地沸厚く、地景入り、所々飛焼があります。

刃文は匂口冴え、小沸は最も深く大乱足入りの造りです。日本刀は所有する者の好みによってアレンジやカスタムされるケースが多いのが特徴ですが、江雪左文字も所有者の美意識によって磨かれ、彫られ、さまざまな拵や刀装具の取り合わせが繰り返されてきたことで、所有した全ての者の好みを反映している作品であるといえます。

江雪左文字の歴代の所有者

筑前国の左文字によって作られた後に板部岡江雪(江雪斎)が所有していた刀ではありますが、作られてから一生涯にわたってずっと所有していたわけではありません。そして今でこそ天下の名刀といわれる江雪左文字ですが、はじめから天下の名刀と呼ばれていたわけではありません。もともと板部岡江雪(江雪斎)が所有していた太刀は、のちに豊臣秀吉が所有することとなります。どのような経緯で豊臣秀吉の手に渡ったのでしょうか。

江雪左文字とよばれるきっかけとなった板部岡江雪(江雪斎)は、後北条家の支流である田中泰行を親に持ち、後北条家に身を置いていました。当初は後北条家に仕えていたものの、後北条家は徐々に衰退します。その後はあの戦国武将、豊臣秀吉の手に渡りました。『日本刀大百科事典』によれば1589年に面会した板部岡江雪(江雪斎)と秀吉は話し合い、沼田城を後北条家に下す対価に北条氏政を上洛させることを決めました。

しかし後北条家は沼田城を奪った後に沼田城のみならず名胡桃まで奪ってしまいました。秀吉はこれに激怒して小田原征伐を行いましたが、約束を破ったとしても主人に従うのは当然のことであり筋であると言った板部岡江雪(江雪斎)に感銘を受けました。臆することなく首を刎ねよと言った板部岡江雪(江雪斎)を赦し、迎え入れた際に板部岡江雪(江雪斎)は秀吉に江雪左文字を献上し、所有権が秀吉のものとなったのです。

現在はふくやま美術館が所蔵

国宝「江雪左文字」は現在、広島県福山市にあるふくやま美術館が所蔵しています。ふくやま美術館は、公益財団法人ふくやま芸術文化振興財団によって管理運営されており、地域の芸術文化振興やその発展を目的として1988年11月に開館しました。

福山市広域圏関連作家の作品からイタリアを中心としたヨーロッパ美術の作品まで幅広く展示されています。そのなかの刀剣(小松コレクション)として飾られているのが江雪左文字。初代頼宣の佩刀として紀州徳川家に伝わり受け継がれてきましたが、1934年についに売却され長尾美術館が所蔵することとなりました。

その後、福島市の名誉市民である小松安弘氏の所有となったのをきっかけに、2018年にふくやま美術館に寄贈されたのです。江雪左文字は数々の有名な武将の手に渡ってきたこともありその伝来自体が伝説的で、かつての持ち主たちに愛されて天下の名刀となった過程を如実に物語っています。所有する人の思い入れや美意識が反映されるからこそ深みの出る刀剣は、その付属品にも数々の物語が秘められています。

とくに江雪左文字は、有名な武将の手を経てきたからこそ他の刀にはない特別な魅力を感じられるかもしれません。かつての持ち主たちに愛され名刀となった江雪左文字はふくやま美術館に大切に保管され、現在もたくさんの人に愛されています。

まとめ

たくさんの武将に愛されて名刀となった江雪左文字は、板部岡江雪からはじまり大切に大切に受け継がれてきた太刀です。国宝となり売却されてからは広島県福山市のふくやま美術館に所蔵され、国重要文化財などとともに丁寧に展示されています。たった一本の刀でも、さまざまな物語や所有した人物の思いが反映されているもの。所有する人物によるカスタマイズや、その美意識が反映されるからこそ他の太刀にはない魅力を感じるのかもしれません。実際にお目にかかれば、かつての所有者たちの思いや秘められた物語を紐解くことができるのではないでしょうか。

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