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公開日:2026/04/24  

日本の国宝、「備州長船住長重 甲戌」とは?

国宝指定の短刀「備州長船住長重 甲戌」とは
備州長船住長重 甲戌は、長重の作で「相州伝」の技を活かした傑作と言われる短刀です。

概要

短刀 銘 備州長船住長重/甲戌たんとう めい びしゅうおさふねじゅうながしげ/こうじゅつ)」は、南北朝時代初期の建武元年、すなわち1334年に備前長船派の刀工・長重によって作られた国宝の刀剣です。名称にある「備州長船住長重」は、備前国長船に住した長重の作であることを示し、「甲戌」は制作年を表す干支です。日本刀というと長大な太刀や打刀を思い浮かべがちですが、本作は刃長26.0cmの短刀であり、小さな姿の中に高度な鍛錬、刃文、地鉄の表情が凝縮されています。文化財としては1942年に重要文化財、1953年に国宝へ指定されました。現在は個人蔵で、公開機会は限られますが、長重の代表作であるだけでなく、備前物と相州伝の交わりを考えるうえでも非常に重要な日本刀です。

刀身の造り

本作の造り込みは、短刀らしい平造で、棟は三つ棟、姿には浅い内反りが見られます。地鉄は板目肌がわずかに流れ、よく詰み、地沸が厚くつき、地景が入るなど、単に整っているだけではない力強い景色を示します。刃文は湾れに互の目が交じり、砂流しや足が働き、匂口は冴え、小沸がむらなくつく、とされています。さらに金筋が現れる点も見どころで、相州伝の影響を強く感じさせる鋭い働きが特徴です。帽子は乱れ込んで突き上げ、先が尖り、強く返る構成で、短い刀身ながら視線を引き込みます。

歴史・時代背景

長重は、備前長船派の流れに属しながら、いわゆる相州伝の技法を高い水準で示した刀工と評価されています。南北朝時代は武士の戦闘様式や美意識が大きく動いた時期で、刀剣にも実用性と迫力、そして個性的な作風が求められました。備前伝は一般に地鉄の美しさや匂出来の刃文で知られますが、本作では沸、地景、砂流し、金筋といった相州伝的な働きが際立ちます。この混成的な魅力は、同時代の名工・長義の一門に位置づけられる長重ならではの特色といえるでしょう。また、本作は豊臣秀吉に仕えた刀剣鑑定の名家・本阿弥家本阿弥光徳の指料と伝えられています。鑑識の頂点にいた人物が身近に置いた日本刀という伝承も、この刀剣の格を物語っています。

まとめ

備州長船住長重 甲戌」は、国宝刀剣の中でも、短刀という限られた寸法に南北朝期の技術と美意識を凝縮した名品です。見どころは、備前長船派の端正さだけではありません。地沸、地景、砂流し、金筋など、相州伝の精悍さが強く感じられる箇所に大きな魅力があります。さらに、本阿弥光徳の指料と伝わる来歴は、刀剣が単なる武器ではなく、鑑定・所有・伝来を通じて文化的価値を高めてきたことを示しています。小品でありながら重厚な存在感を放つ、長重を代表する日本刀の傑作といえるでしょう。

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