室町時代は、武家と公家の文化が混ざり合いながらも、洗練された伝統を生み出す時代になりました。文化の特徴としては、三大将軍義満による「北山文化」と、八代将軍義政による「東山文化」がとくに有名とされています。今回に記事では、室町時代における日本刀の価値や相場について、詳しく解説していきたいと思います。
時代の流れに姿を変えていった室町時代の刀たち
日本刀は時代の流れに合わせ、その姿を大きく変えていくことになります。室町時代初期の日本刀は、身幅などのバランスが保たれており、美しい姿が特徴とされています。当時の日本刀の風貌は、武家による政治が盛んである鎌倉時代の背景を汲んだものがあります。
しかし、戦に好んで使用される実戦向きのものではなく、外見を重視した美術的な価値のあるものが求められるようになりました。その後の平和の影響から、国内での日本刀の需要は徐々に少なくなっていきますが、将軍である義満はこれらの刀を大量に生産することで、明への輸出品として取り扱うことになります。そこには目的があり、それは当時日本では鋳造されていなかった銭貨の輸入が狙いで、その結果、義満は銭貨を大量に国内へ流通させることに成功するのでした。
しかし、室町時代後期にはそれまで続いていた平和も終焉を迎え、日本刀は武器として、最も本領を発揮する時代に突入していきます。その後の応仁の乱によって、戦国時代に移り変わっていくなか、刀剣の需要は急激に高まることになりました。そしてついに、クオリティの低い「数打物」と呼ばれる日本刀が大量に生産されるようになったのです。
さらに、鉄砲が日本に伝来した事により戦のスタイルが変わり、刀剣を振りかざす足軽が主体の戦から、集団での戦に切り替わりました。そのなかで、鉄砲の攻撃に耐えることのできる防具を強化し、日本刀も長期戦を見越した従来品の両手で握る刀から、片手で握ることのできる刀が造られるようになります。
室町時代当時の日本刀の相場は？
室町時代初期では、日本刀のランク付けがなされるようになり、とくにその職人のなかでも、長船正光が名をはせています。当時から安土桃山時代頃に成立したとされる、５振の名刀は童子切安綱、鬼丸国綱、三日月宗近、大典太光世、数珠丸恒次という名称がつけられており、あらゆる時代の武将達にとって、とくに価値のあるものとして受け継がれていきます。
これらの名刀は、さまざまな時代に作られていますが、なかには実戦で使用されることなく、仏教と深くつながったものも存在します。天下五剣は現代においても、歴史的な価値を備えた国宝・重要文化財等として大切に保管されています。当時の武将にとって、刀剣は戦いで使用するものではありますが、歴史を踏まえた美術的にも価値があると判断された日本刀は、殿様からの褒章にもなり得るのでした。日本は古来より、米などを年貢や俸禄として取り扱い、物々交換が主流の時代でした。
室町以降になると、日本刀も金銭を通して売買されるようになりますが、貨幣や米などの価値に安定性がない時代のため、当時の具体的な相場を知ることは困難といえます。ただし、戦国の頃には美術的価値のある刀剣を約10貫紋（現代で約60万円）程度で購入することが可能であったようです。しかし、時代背景から量産された「数打物」は、その質から価値は認められることはなく、戦に出る足軽や一般兵への貸出品として扱われることになるのでした。
室町時代の日本刀は現在どのくらいの価値がある？
現代は日本刀には鑑定書が発行されるため、それにより本物か偽物かを判断することが可能になっています。なかでも「公益財団法人日本美術刀剣保存協会」が発行する鑑定書が非常に重要とされています。鑑定書にある、刀剣の切れ味によってランクを表す呼び名も理解しておくことで、より歴史的な刀剣の価値を見出すことができると言えるでしょう。
さらに詳しく解説すると「格付け」は全部で5ランク存在し、上から最上大業物（さいじょうおおわざもの）、大業物、業物、準業物、なまくらとなっています。なかでも、最上位の「最上大業物」と分類される日本刀の値段は、現代では1000万円前後の相場となってきます。これらの日本刀は刀として優れているのみならず、歴史的な文化財としての価値の意味合いがあるからこその価格となっています。
対して、戦乱の時代に量産されることになった「数打物」の場合、その多くは刀狩等で姿を消すようになりました。しかし、現代まで残存したものの場合、順当な手順を踏むことで、刀剣ショップで購入が可能です。その価格帯はピンキリになっており、時代が古い場合では、相場が高い傾向にありますが、状態の良いものでも約50万～100万円程度で購入可能になっています。
いかがでしたか？近年はオークションなどで日本刀が出回ることも多く、比較的容易に購入できる環境になっているかもしれません。しかし、一口に日本刀といっても前述のように価値は多様になります。そのため、上記で述べた時代背景から、自分の好みに合った日本刀の購入を検討してみてはいかがでしょうか。