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公開日:2023/08/01  

日本刀とは異なる刀剣の系譜!長巻と薙刀の違いと特徴を紹介!

長巻と薙刀の違い
かつて日本で広く使われていた武器といえば、日本刀が有名ですが、そのほかにも長柄の武器として「長巻」と「薙刀」が存在します。これらの武具は外見が似ているため、しばしば混同されることがありますが、実は多くの違いがあります。ここでは、「長巻」と「薙刀」の違いについて紹介しましょう。

大太刀から発展した長巻とは

そもそも「長巻」とは、大太刀から派生した刀剣の一種です。鎌倉時代に武士が社会の主導権をにぎるようになると、武人としての威厳を誇示するために、三尺を超える大太刀が作られるようになりました。これらの大太刀は、力強い武士によって扱われましたが、その長大さゆえに非常に重く、取り扱いが難しいという欠点があります。

そこで、柄が長くなり、刀身の鍔元から中程に太糸や革紐を巻き付けた形状の刀剣が登場したのです。これらは「中巻野太刀」または「中巻」と呼ばれ、大太刀を自由に振るうことが難しい人々や力のない者にも扱いやすくなっています。

中巻は通常の刀よりも威力があり、振るうだけでなく、薙ぐや突くといった幅広い攻撃にも使用されました。戦場では槍と並んで重宝され、徒歩兵や騎馬武者の両方に使われていたのです。ただし、柄が長いために自在に扱うには相当な熟練が必要であり、慣れていないものが振り回す際には、自分の馬にけがを負わせてしまうという危険もありました。

長巻と薙刀の違いとそれぞれの使われ方

長巻と薙刀はとても似ていますが、大きさ、刃の反り具合、横手・横手筋の有無、拵(柄の装飾)、形状、そして扱い方などの点で違いがあります。こちらで詳しく解説しましょう。

大きさ

まず、大きさに関してです。長巻の刃長は約3尺で、柄の長さも約3から4尺で、刃と柄の長さがほぼ同じです。一方、薙刀は刃長が約2尺で、柄の長さが約9尺と、柄が刃よりも長いのが特徴です。

刃の反り具合

長巻の先反りは浅い一方、薙刀の先反りは深くなっています。

横手・横手筋の有無

横手・横手筋の有無も違いのひとつです。横手・横手筋は鎬造りの刀に特徴的なもので、長巻には存在しますが、薙刀にはありません。

拵(こしらえ)

拵(柄の装飾)にも差があります。長巻の柄には麻紐や革などが巻かれていますが、薙刀の柄にはほとんど装飾が施されていません。

形状

形状に関しても異なります。長巻は一種類の形状ですが、薙刀は巴型薙刀、静形薙刀、筑紫薙刀の3種類の形状があります。

扱い方

長巻と薙刀はどちらも薙ぎ払うという使い方をしますが、その扱い方にも違いがあります。長巻は柄と刃の長さがほぼ同じため、振り回すことは難しいとされているのです。代わりに、刀身の長さと重量を生かして一振りで相手の腕を切り落としたり、鎧の上から叩きつけたりするなどの使い方がされました。

一方、薙刀は刀身よりも柄の方が長いため、間合いが広く、振り回すことに向いているといわれています。

現存する長巻が所蔵している場所

現存する長巻が所蔵されている主な場所としては「刀剣ワールド財団」が挙げられます。刀剣ワールド財団は、日本刀や甲冑などの伝統工芸品および美術品を収集・保存・展示することを通じて、日本の文化の発展に取り組むことを目的とした財団法人です。長巻は江戸時代に入ると、刀身の長さが三尺以上であるため、「刀」ではなく「戦道具」とされ、個人の所有が禁じられるようになりました。

そのため、現存する長巻は非常に希少な存在です。しかし、「刀剣ワールド財団」は、このような状況の中でも貴重な長巻を所蔵しています。具体的には、「長巻銘備前長船住重真」と「長巻銘平信秀於大坂元治元年十一月日」が所蔵されているのです。「長巻銘備前長船住重真」は鎌倉時代後期に作られ、陸奥国二本松藩(現在の福島県二本松市)の藩主である「丹羽家」に伝来し、後に徳川家へ献上されたといわれています。

また、「長巻銘平信秀於大坂元治元年十一月日」は江戸時代後期に活躍した刀工である「栗原信秀」が作刀したものとされている長巻です。これらの貴重な長巻が、「刀剣ワールド財団」によって所蔵され、保護・公開されているので、興味のある方は一度足を運んでみるといいでしょう。

まとめ

今回は、長巻と薙刀というよく似た武具についてご紹介しました。見た目の類似性にも関わらず、長巻と薙刀は外見や使われ方など、大きな違いがあることが分かったでしょう。刀剣の世界には日本刀以外にも古くから使われてきたさまざまな武具が存在します。ただし、長巻に関しては江戸時代に入ると、刀身の長さが三尺以上の刀は戦道具として個人の所有が禁止されましたので、現在、これらの武具を見る機会はあまり多くありません。

また、現存する長巻は非常に少ないです。しかし、刀剣ワールド財団が貴重な長巻を所蔵しています。長巻の所蔵品には鎌倉時代後期や江戸時代後期の名工によるものも。もし機会があれば、違いを理解した上で長巻を鑑賞してみると興味深いでしょう。

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