日本刀に興味があるなら、やはり気になるのが切れ味でしょう。とは言え、買取店で購入した日本刀でいきなりなにかを切るというのは危険ですし、刀にも失礼なのでやめましょう。
そんなときには、真剣の試し切りを体験させてくれる道場を訪れるのがおすすめです。まったく初めての人でも真剣をふるう体験ができます。
日本刀の切れ味を試すのが試し切り
日本刀は現代においては美術品であり、決して武器ではありませんのでまずはそこを念頭に置いてください。趣味として所有する場合、買取店などで購入して鑑賞するだけでも十分な醍醐味があります。
ただ、武士や刀匠の魂をダイレクトに感じたいという場合、やはり試し斬りを希望する愛好家は少なくありません。もしくは、映画などを観て、一度でいいから真剣に触れてみたいと希望する人もいるでしょう。
基本的に試し切りとは、その刀がどれほどの切れ味を持つものか吟味する行為を指します。現在では多くの場合、巻藁や畳表、青竹などを立てて振り抜きますので、間違っても江戸時代のような物騒なイメージはありません。
例えば古い畳表を折り重ね、固く巻いたものを一昼夜水に浸け、取り出して1時間程度置いたものなどが広く使われています。なぜ水に浸けるかというと、乾いた状態では表面を刃がすべってうまく斬れないことが多いからです。
大事なのは巻いた中央に大きな空洞を作らないことで、固く巻き留めるために太い輪ゴムなどで留める場合もあります。ちなみに水に浸けると臭いがきつくなるので、漂白剤などを入れる場合もあります。
立てて固定したものを上から斜め下に袈裟斬りするのが一般的で、かなり慣れていないと水平斬りや連続斬り、下からの斬り上げなどはとてもできません。手練れになると跳ね上がった小片を空中で叩き斬るなどの技もありますが、時代劇で見るような簡単なものではないので、素人ができるようなものではないことも覚えておきましょう。
刀を振るときのコツは道場で習おう
真剣での試し切り体験ができる道場があります。あらゆる宗派がありますがWebサイトなどで検索すれば見つけることができますので、信頼できる道場であり、心惹かれる師範のもとへ申し込むのがよいでしょう。
細かくは道場ごとに異なりますが、まずは必ず刀の基礎を学ぶことができます。初めての人がいきなり真剣を振るのは危険ですから、最初は刃が付いていない模造刀で握りからしっかり練習するのが基本です。肩幅くらいに足を置き、右手を前に左手を後ろに柄(つか)を握り、右足を前に左足を後ろに構えます。同じほうの手足を出すイメージですが、右利きでも左利きでも構えは変えません。
初めてなら袈裟斬り(けさぎり)を教わるのが基本で、刀を真上に上げ、そこから斜め左に向かって斬り下ろす方法になります。なぜ初心者が袈裟斬りかというと、刀身の重さを活かしてシンプルに振り下ろす斬り方なので、重力に沿って素直に振れば比較的簡単に斬ることができるからです。実際に初めての場合、筋肉自慢・力自慢の男性より力の弱い女性のほうがきれいに斬れることが多く、刀は腕の力で振るものではないことがよくわかります。
また、普段包丁を使っている人のほうが吞み込みが早いのですが、刀は切る刃物ですから、斧のように叩き割る道具ではありません。力に任せて振り下ろすのではなく、「引いて切る」イメージがとても大事で、そこがコツになります。
太い大根や大きな魚を包丁で切る場合、まな板に向かってまっすぐ刃を下ろしてもなかなかきれいには切れません。料理に慣れた人なら無意識のうちにも手前に引いて切る力加減をしているはずですが、実は刀もそれと同じことなのです。
竹刀で戦う剣道では切るのではなく叩くほうが正解なので、剣道の有段者はこれがなかなか自然にできないことも多いようです。
迷いなく精神を統一することが大切
刀を実際に武器として使っていた江戸時代の侍も、実は扱い方が達者な人ばかりではなかったと言われています。特に江戸は平和な時代なので、真面目に鍛錬していた人は別として、ほとんどの侍は戦でも下手な叩き合いをやっていたとも言われます。
刀に触れたこともない現代人には感覚があるはずもありませんが、道場で基礎を学べばしっかり型が身につくでしょう。切っ先から20cm程度先で対象物を斬るイメージと言われています。
道場では刃のない模造刀で何度も寸止めを練習し、打ち込みの角度なども体に染み込ませてから最後に真剣を扱います。きれいに刀が入ると斬り口がまっすぐきれいになり、刀にも体にも負担がかからず一瞬で斬ることができるでしょう。
振り下ろす際のコツは、迷いなく斬ることに尽きます。振るときに迷いや不安があるとほとんどの場合巻藁などの途中で刃が止まってしまい、最後まで振り抜くことは叶いません。力任せではなく、静かに気合を込めることはとても難しいですが、精神統一をして是非臨みましょう。ちなみに日本刀の平均的な重さは1~1.5kg程度ですので、手首などを傷めないように気を付けてください。
日本刀の試し切りは、刀の切れ味を確認するための行為です。現在では真剣による体験をおこなっている道場がありますので、Webサイトなどで検索して申し込むのがおすすめです。刀の握り方から構え方など基礎をしっかり学び、刃のない模造刀で何度も練習をしてから挑めます。
濡らした畳表などを斬ることが多いですが、コツは振り下ろすだけでなく刃物として引いて切ることです。また、迷いがあると刃が途中で止まってしまうことが多いので、精神を統一して静かに気合を入れて臨みましょう。