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公開日:2020/08/15  

一瞬の勝負「居合術」について解説

日本の古来から伝わってきた剣術の中には、居合術というジャンルがあります。刀を鞘に納めた状態から素早く抜き、そのまま切る動作へと移るというのが基本です。ではそんな居合術とは具体的にどのようなもので、何を特徴としているのかを確認してみましょう。

流派によってさまざまな考え方がある

剣術にはさまざまな流派があり、根本的な考え方や実際の戦い方、稽古の方法までさまざまな部分に違いが出ます。そして居合術は剣術全般に当てはまることなので、同じように流派によって解釈が異なることが多いです。

現存したり記録に残っている流派には、居合術を主にしたものと他の剣術の中に含まれているものなど、いろいろな形があります。その中で主な解釈として挙げられるのはまず、居合をそのまま居合わせた意味と捉えて、急な立ち合いの場面でもすぐに対応できることを目的とする考え方です。

まだ真剣が使用されていた時代では、刀による命の奪い合いも多かったですが、基本的には先に一太刀浴びせることができたほうが圧倒的に有利になります。研ぎ澄まされた刀はそれだけ切れ味が鋭く、少ない力であっても相手に深手を負わせることができるからです。したがっていざ立ち合いになったときに、相手よりも早く動くことが重要でした。

そして居を座っている状態と考え、体勢を低くしている状態から繰り出す剣術だという解釈もあります。ただ正座をしたり胡坐をかくような場面では、侍は刀を鞘ごと抜いて自分の横に置いたり、訪問先の家に預けるのが主でした。そのためこの考え方は実用的ではないという説や、座った状態でも腰に差したままの小さいほうの刀、脇差を居合術で使用する流派もあります。

いずれの場合も素早く戦える状態になるという点は共通しているため、速さが命という考えは正しいでしょう。また刀を抜くと同時に斬りかかるイメージを持たれがちですが、中には最初に防御を考えるものもあります。その場合は鞘から抜いてまっすぐ相手に向かうのではなく、まず相手の攻撃を受けてから反撃に移る動作になります。

最重要な速さを実現するためには

居合術で重要とされる速さを出すためには、刀を持つ右手だけをただ素早く動かすだけではいけません。握りひとつにしても力が入り過ぎていると動きが固くなってしまうため、柔軟性が求められます。

また鞘を握る左手は親指で始まりを作る鯉口切りであったり、刀身が全て出せるようなサポートが必要です。そのうえ抜いた状態からすぐに斬る動作へと移らなければならないので、体勢も重要になってきます。

そうして戦いに入るという目的のためだけに、無駄を省くことで動きが洗練されていきます。したがって一瞬の間に剣術全般でも重要視される部分が数多く入っているため、基礎的なものとするのもひとつの考え方です。その短いながらもいくつもの要素が組み込まれた一連の流れを実現するために、稽古で同じ流れを何度も繰り返すしかありません。

達人だからこそできることがある

居合術は何代も続いた歴史のうえで稽古を繰り返すことで動きが完成されていきますが、そうして現代にまで名を残している達人は何人もいます。

彼らには刀を抜いた瞬間が周囲の人からは確認できなかったり、一瞬の内に何太刀も浴びせたなどの逸話が伴っている場合も少なくありません。もちろん誇大的な表現をしたものもあるかもしれませんが、それを確認する方法はないうえに、決してありえないことでもないです。

ただよく漫画などの創作で見られる居合術の表現で、刀を素早く抜いて相手を斬った後、鞘に戻すまでの動作も一瞬でおこなうというものがありますが、これは現実的ではないです。速さを重視するのはすぐに戦えるようにすることが目的なので、戦いが終わった後では必要ありません。

もし相手を斬ったのであれば刃の部分に血が付着し、そのまま鞘に納めると中で固まったり錆びの原因になります。たとえすぐにその場から逃げなければならないなど急ぐ状況であっても、一瞬での動作は求められません。したがってどの流派でも抜きから斬る動作は素早く、そこから先はゆっくりおこなう点で共通しています。

また居合術には鞘の内で勝つという言葉があり、達人ほどとなれば刀を抜かなくても相手を倒すことができるという意味です。刀ではない体術的な応対や気迫で攻撃させないなどいろいろな捉え方ができますが、いずれにしても常人にはできない芸当です。

 

古い時代から始まった居合術の歴史は、現代でも複数の流派によって受け継がれています。そしてその一部は展覧会などで実際に目にする機会もあり、もちろん自身が入門することも不可能ではありません。

さらにメディアでも取り上げられる可能性は十分にあるので、もし見る場合はここまで挙げてきた流派による考え方や動きの基本など、細かな部分にまで目を向けてみましょう。より深い部分を知ることで、動作の中から得られる情報が多くなるはずです。

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