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公開日:2019/01/10  

日本刀に銘を切るとはどういう意味?

日本刀に銘を切る、といった言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、つい最近刀に興味を持たれた人は、意味が良く分からないかもしれません。

そこで、この言葉が何を意味するのか分かりやすくご案内していきます。

 

名前のほか製作年月を刻む場合もある

一言で言えば、銘とは刀を製作した人の名前などのことです。

この刀は誰が作ったのか分かるよう、刀工が自分の名前を刀に彫ることを言います。

これが行われ始めたのは大宝時代とされており、制定された律令で工匠名などを入れるよう義務付けられたとされています。

刀はこの時代に広く作られていたそうで、各職人の技量によって仕上がりにも差が出始め、誰が鍛えたのか明確にすることが目的だったとも言われています。

また、刀工名だけでなく、製作年月日を刻む場合もあり、後世に作られた刀ほど多く見られるようになります。

そして、ちょっと不思議に感じるかもしれないのが、2月8月に製作時期が集中していることです。

実はこれには理由があるようで、鎌倉時代の終わり頃は冬至以降に鍛えた刀は2月、夏至以降に鍛えた刀は8月、といった風に記す慣例があったそうです。

つまり刀に2月や8月と刻まれていても、本当に全ての物がその月に作られた訳ではないと思います。

そのほか、刀工が官名でもある受領名を授かっている際は、受領名を刻んだりします。

本来、受領名は神職や武家の官職名でしたが、特定の商工業者などにも授けられていたと記録されています。

受領名の刻まれた品は、今で言えばブランド品に相当しますので、ほかの職人が手掛けた品と比べてひときわ高い価値があったそうです。

 

「切る」と言われることには訳がある

銘の意味は概ねお分かり頂けたと思いますが、では次に疑問に残るのが、何故「切る」と表現するのかということです。

通常、マジックペンで名前を書く時は、名前を切るとは言いませんよね。

ですが、刀に名前を記述する時はペンで書く訳ではなく、タガネなどで刻んでいくのです。

タガネは鋼鉄で作られたノミのような小さな工具でそれを刀に当てて、後ろの部分をカナヅチでコンコン叩いて文字を彫っていきます。

タガネで刻んでいくと、彫られた部分はV字状に削れるため、見た目が肉を刃物で切り開いた感じに見えるのです。

そのことから「切る」と表現するとされています。

切り終わった後の表面には、文字の線に沿ってタガネ枕と呼ばれる隆起が見られるのも特徴です。

最初は立っていたタガネ枕も、数十年や数世紀という長い年月を経る間に、柄木と擦れるなどして消えていきます。

また、名前などを切る場所は殆どの場合、茎ですから、普段は柄木に覆われていて確認することはできません。

どうせなら常に見える刀身に切れば良いという感じもしますが、タガネで彫るため、そのぶん刀の強度が下がって折れやすくなることから、茎に切ったのではないかと思います。

そのうえ刀身は研ぎますから、研いでいくうちに擦り減って名前が消える可能性があることから、避けたのかもしれません。

刀身に名前が切られた刀も存在しますが、サビが生じやすいなど、手入れが大変になることも関係しているのではないでしょうか。

 

刻む内容には多様性があって奥が深い

日本刀はそのまま使うほか、用途や自分の体格に合わせて長さを短くすることがあります。

この寸法直しは磨上げと呼びますが、刃の先端部分を詰めるのではなく、柄の部分である茎を切り落とすのが基本です。

この場合、ともすれば刀工名が彫られた部分をカットするため、途中から無名の刀になってしまうケースがあるのです。

ですが名前を残す方法がない訳ではなく、例えば刀工名より下の部分を切断し、後は必要な長さになるよう、折り返して刀の長さを調節します。

名前の部分は上下逆さまになりますが、記述部分を残すことはできます。

しかしながらどうしても茎を全て切り落とす必要があり、それでも何とかして刀工名を残したい場合は、名前の所だけを切り抜き、新たに仕上げた茎にはめ込んだりします。

そのようにして名前が残された日本刀も数々ありますので、場合によってはその刀が歩んできた歴史を垣間見られると思います。

ところが、最初からあえて名前などが刻まれていない刀も存在します。

かつての日本では高貴な人などに献上する場合、刀工などの名前を入れない習わしがあり、逸品であっても無名の場合があるのです。

そして、後世になって無名の逸品を鑑定士が調べ、製作者が明確になりますと、後から名前を刻み入れることもある訳です。

その時はタガネで彫った溝に金を入れて金象嵌に仕上げたり、朱色に染めた漆で加工する場合もあります。

刀に名前を入れるだけでも奥の深い話ですが、そのほかにも試し切りの結果や、その時の斬り手などを記すなど、刻み込まれている内容も多様性が見られます。

特に試し切りの記録に関しては、その刀がどれほど素晴らしい切れ味を持っているか、といったことも伝わってくるのです。

 

日本刀に銘を切るとは、刀の製作者が自分の名前や製作年月などを、主に茎へ刻み記すことです。

文字はタガネという工具で刻むのですが、彫られた文字が肉を切り裂いたように見えることから「切る」という表現が使われています。

また、元々何も記されていない刀でも、後世に鑑定して名前を入れることもあります。

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