日本刀は刃物であるだけでなく、武士の魂や刀霊に対しても、尊敬の念を抱きながら注意深く取り扱わなければなりません。正しい取り扱いをしないと、刀身が錆びてしまうこともあるでしょう。本記事では、日本刀の油が取れないときに使うための、ベンジンについて解説します。日本刀のお手入れをしようと考えている人は、参考にしてくださいね。
ベンジンとは
ベンジンとは衣類についたシミを落としたり、シールをはがしたりするのに使える液体で、家に1本常備しておくと便利なアイテムです。昔から使われているものですが、デリケートな衣類も傷めることなくシミを溶かして落とせるすぐれものとして知られています。
ベンジンは、原油から精製された無色透明の液体です。ガソリンと成分が似ており、使用すると石油特有のにおいがするのが特徴となっています。石油由来の成分なので引火しやすいため、取り扱いには注意が必要です。カレーや口紅、ファンデーション、ボールペン、食用油、機械油などの油汚れを溶かすのに適しています。通常の洗剤を使ってシミ抜きをするときは、シミ抜きをした後に必ずすすぎ洗いするでしょう。
しかし、ベンジンは蒸発して衣類の繊維内に残らないので、シルクやウールの衣類など、普段はクリーニングに出しているデリケートな素材でも家でシミ抜きできます。ベンジンを使ったシミ抜きの方法は、シミのついた衣類の下にタオルを敷き、ベンジンをつけた布や歯ブラシなどを使って、タオルに汚れを移すようにトントンと軽くたたくだけです。
一部だけをたたくと色ムラになってしまうので、広めにたたいてまわりとなじませるようにすると目立ちません。ベンジンが乾いた後に残ったシミは、油シミではない水溶性の汚れかもしれないので、食器用の洗剤などを使って部分洗いすればキレイに落ちます。
石油のにおいが強いので、使用する際は窓を開けて風通しをよくした状態で行いましょう。衣類によっては色落ちすることもあるので、目立たない部分につけてテストをして相性を確認してください。シミ抜きに使う以外にも、油性フェルトペンやクレヨンの落書き、シールはがしやシール跡の掃除にも効果を発揮します。さらに、日本刀の油が取れないときにも利用可能です。
ベンジンを使う際の注意点
ベンジンは石油由来の成分のため、使い方を間違えると危険です。初めて使う場合にはとくに、服の傷みだけではなく周囲の状況も確認する必要があります。使用する際に注意しなければならない点について説明しましょう。
換気する
ベンジンは揮発性が高く作業している間も、成分は空気中に散布されていきます。密閉された空間で吸ってしまうと危険です。においや気体を吸い込むことのないように、窓を全開にして換気扇を稼働させ、しっかりと換気を行いましょう。
火気厳禁
ベンジンは石油から精製された液体なので、燃えやすい性質があります。ガスが充満した場所では、少しの火でも大きな火災を引き起こす可能性があるのです。火のそばでは絶対に使用しないようにしましょう。また、静電気を起こす可能性のある家電も遠ざけておくと安心です。
マスク・手袋をつける
ベンジンは危険物なので、肌に直接触れると手荒れや炎症を起こす可能性があります。直接手に触れないように、ゴム手袋などを装着して作業しましょう。また、作業が終わった後はよく手を洗うことが重要です。
色落ちの確認
染色や生地によっては、ベンジンを使用することで大きな色落ちや色抜けを起こすことがあります。使用前に必ず、衣類の目立たない部分で少量を使用して色移りテストをしましょう。色移りが見られたら使用を中止してください。
保管場所
石油系の液体なので、直射日光が当たる場所で保管すると劣化してしまいます。安全に保管するために、直射日光を避けて涼しい暗所で保管しましょう。そのほかにも、捨てる場合には流しなどに流さないようにしてください。揮発性が高いため、空気のこもらない場所でふたを開けておくだけで蒸発するでしょう。
ベンジンはどこで買える?
ベンジンはどこで手に入るのでしょうか?ベンジンは、大型のドラッグストアやホームセンターで取り扱っています。また、スーパーマーケットや薬局に置いてある場合もあるのです。ドラッグストアなどにない場合は、インターネットで購入できます。「カイロ用」と「シミ抜き用」の2種類があり、カイロ用はシミ抜きでは使えないので間違えないようにしましょう。部分的なシミ抜きであれば少量で足りるので、その都度使い切れる量を購入するとよさそうです。
油汚れなどしつこく頑固なシミや水洗いできない衣類に効果のあるベンジンですが、正しい使い方をしないと大切な衣類が傷む原因になってしまうこともあります。普段なかなか使わないアイテムなので、シミ抜きをする場合には普段着などで試してから使ってください。日本刀の手入れの場合は、打ち粉の代わりにベンジンを上質なティッシュペーパーなどに含ませて使用します。その際も注意点に気を付けて使うようにしましょう。