「日本刀を持っているが、売ったらいくらになるか知りたい」人は、高額買取を期待してもよいでしょう。なぜなら、現在は類を見ない刀剣ブームのためです。アニメ、ゲームの影響により、日本刀は若者や世界中の人から注目されています。その分、日本刀の買取需要も上がっているのです。今回は中でもとくに高価買取が期待できる、最上大業物について紹介します。
最上大業物とは
最上大業物とは、日本刀の中でも最高級の切れ味を持つ日本刀を指します。具体的には日本刀の切れ味をランキング化した書物、懐宝剣尺(かいほうじゃくけん)で選ばれた12工と、その後発行された古今鍛冶備考(ここんかじびこう)で追加された3工を合わせた15工のことです。
中でも有名な刀工は長船秀光、長曽祢興里(ながそねおきさと)、そして三善長道(みよしながみち)などの刀工達となっています。日本刀の売却額には主に、刀工の知名度が関係しているようです。そして最上大業物に選ばれた15工は、著名な名工が多いとされています。そのため、最上大業物に選ばれた15工の名前が入っていれば、それだけ高額買取が期待できるのです。
日本刀の切れ味をランキングにした書物「懐宝剣尺」
懐宝剣尺とは江戸時代中期、山田浅右衛門(やまだあさえもん)という人物が、日本刀の切れ味についてまとめた書物です。介錯人であった山田浅右衛門はある時、罪人の遺体で刀の試し斬りを行いました。
最上大業物の切れ味判定は、この時につけられたものです。山田浅右衛門は切れ味のよい順に「最上大業物」「大業物」「良業物」「業物」と4つに刀をランク分けしました。現在、日本刀の鑑定は主に「切れ味」と「美しさ」の2つの判定がありますが、「切れ味」の判定に関してはこの4つのランク分けが元になっています。
古刀期の名刀を手がけた刀工達
古刀とは、最古の日本刀を指します。日本刀には美しい反りがありますが、それまでの刀は直刀でした。平安時代の半ばに生まれた日本刀は、約600年後の室町時代の末期までに、目覚ましい発展を遂げます。ここでは古刀期の名刀を手がけた刀工達を紹介しましょう。
最も多くの刀工を輩出した刀工集団、「長船派」
岡山県を拠点としていた長船派は、数多くの名工を輩出してきました。さらにこの一派が製作した刀には、凄まじい逸話が残っています。川を渡って逃げる罪人を背後から斬った際、罪人が川を渡り終わった後に真っ二つになるという逸話です。長船派の代表的な刀工には、「長光」、「兼光」、「秀光」などがいます。
截断銘を持つ名刀
截断銘(さいだんめい)とは、刀の切れ味を刀身の茎(なかご)に記したものです。時代の刀工達は、切れ味をさまざまに表現してきました。ここでは截断銘について紹介します。
生々しい截断銘、「二ツ胴」
二ツ胴とは、人間の首なし死体を横に重ねて試し斬りをした際、胴体がいくつ斬れたかを表しています。つまり二ツ胴なら胴体二つを両断する威力がある、ということです。そして他にも「三ツ胴」「四ツ胴」といった表現もあります。最高数は兼房(かねふさ)の「七ツ胴」です。
刃が触れた程度でも切れる様を現した「笹露」
続いて紹介する截断銘は、孫六兼元が製作した笹露(ささのつゆ)です。笹の葉についた水滴は、ちょっとした衝撃でも落ちてしまいます。そこから転じて、刃が触れた程度でも切れる様を現したのが笹露です。
斬られたことに気付かないほどの切れ味「八丁念仏団子刺し」
最後に紹介する截断銘は、八丁念仏団子刺し(はっちょうねんぶつだんござし)です。八丁念仏とは、斬られた相手がそれに気付かず八丁(約870m)歩いた後、体が真っ二つになったといわれています。そして団子刺しとは、刀を杖がわりにして歩いていたところ、刀が石ころを貫き、いつの間にか団子状になっていた様を表しているのです。しかし刀の作者は判明しておらず、刀自身も関東大震災の時に消失してしまいました。
最上大業物に入った新刀期の刀工達
「新刀」は、豊臣秀吉の天下統一から江戸時代中期までに生まれた刀を指します。新刀期には、従来の規律にない新しい刃文が生まれました。ここではそうした時代に生まれ、最上大業物に入った刀工達を紹介しましょう。
新選組局長が愛刀とした「長曽祢虎徹」
長曽祢虎徹(ながそねこてつ)は、江戸時代中期に活躍した刀工です。長曽祢虎徹は、もともとは甲冑を専門とする職人でしたが、50歳を機に刀工へ転じます。元甲冑職人というだけあり、その刀は抜群の切れ味を誇りました。とくに石灯篭切虎徹(いしどうろうぎりこてつ)は、大枝を斬ろうとしたところ、勢い余って石灯篭まで斬ったという逸話が残っています。
長曽祢虎徹が製作した刀は、大名といった上流階級の人々に好まれ、新選組局長であった近藤勇も愛刀としていました。長曽祢虎徹は刀剣業界にとって、その人気ゆえ「虎徹を見たら偽物と思え」といわれるほど贋作(偽物)も多いといわれています。
会津を代表する刀工、「三善長道」
上杉謙信や白虎隊などで有名な会津藩です。会津においても虎徹に匹敵する刀が生まれ、「会津虎徹」と呼ばれました。それが三善長道(みよしながみち)です。三善長道の作成した刀には、「三ツ胴」だけではなく、片手だけで胴を切断したという逸話も残されています。
日本刀の価値は、切れ味以外にも作成時代や作者、保存状態に市場価値などの要素があります。相場にも幅があるので一概にはいえませんが、高くなると数百万円、重要文化財ともなると数千万円ほどにもなるのです。もし自宅に眠っている刀に最上大業物を作成した銘が入っていたら、ひょっとしたら名刀の価値があるかも知れません。