人々の心を惹き付けてやまないものとして、日本刀が挙げられるでしょう。美術品としての姿形、刀にまつわる所作も魅力にあふれています。中でも夢中になる人が多い構え方と技は流派や時代、対峙する相手によっても異なるため知的好奇心をくすぐられますね。今回は日本刀の構え方と技について解説します。携帯方法や握り方も確認しましょう。
日本刀の携帯方法とは?
日本刀の構え方についてみていく前に、まずはその携帯方法について知っておきましょう。日本刀を持ち運ぶ方法は大きく分けて3種類存在し、刀の形や時代によって携帯方法の主流も変化してきました。
1つ目の方法は、腰に吊るすというものです。平安時代に登場した太刀(たち)を持ち歩くための方法で、太刀紐を用いて水平になるよう固定します。言葉の上では日本刀を佩く(はく)、あるいは佩刀する、と呼ぶようです。
2つ目の方法は、日本刀をかつぐというものがあげられます。元寇を機に流行した大太刀は、その名の通り太刀よりも大きかったため佩くことができず、背負って携帯する方法がとられるようになりました。この大太刀の衰退とともに登場したのが打刀(うちがたな)です。多くの人がイメージする日本刀は、この打刀ではないでしょうか。
打刀の携帯方法が3つ目の日本刀を差す、あるいは帯刀することに該当します。呼び名通り腰に差して持ち運び、江戸時代には脇差とともに角帯の間に入れて固定するのが主流となりました。刀を差すときの角度などにはバリエーションが見受けられ、藩の決まりやそれぞれのセンスによってこだわりのスタイルで携帯されていたようです。運び方1つとってみても歴史の流れを感じられることから、日本刀に眠るロマンには驚かされます。
日本刀の構え方と技
それでは日本刀の構え方について確認していくことにしましょう。日本刀の構え方は流派によっても異なり、どのような相手と対戦するかによっても変わってきます。
剣術においては五行の構えという代表的な構え方が存在するため、まずはその5つをおさえておくとよいでしょう。1つ目は「中段の構え」です。身体の真正面に刀をおくこの構え方は、攻撃にも防御にも対応しやすいとされています。剣先をどこに向けるかによってさらに5つに分類され、喉元に向ければ「正眼の構え」と呼ばれるのです。
2つ目は「上段の構え」で、頭上に振りかぶった状態で構えるため、素早い攻撃が可能になります。刀の長さを活かすことができる、攻撃的な構えであるとされているようです。3つ目は「下段の構え」で、剣先を低い位置につける構え方で防御に向いており、主に攻め合いの中でとられます。
4つ目は「八相の構え」です。刀を身体の右側に立てて構えます。飾りのついた兜着用時など、刀を振りかぶることが困難なときに用いられたそうです。耐力の消耗を抑えられる構えとしても知られています。最後が「脇構え」です。右足を引いて剣先を後ろに隠すように下げて構えます。刀の長さがわからなくなるため、攻撃的な要素を多分に含んだ構え方です。この他にも防御が堅く対上段に向く「霞の構え」などは、特殊な構え方の中でもよく知られるところではあります。
また、基本的な技についても紹介しましょう。まずは「袈裟斬り」です。相手の左側の肩から右側の脇腹に向けて斜めに斬りつける技で、名前はもちろんお坊さんの衣装からきています。次に「抜刀」です。鞘に納まった状態の刀を一気に引き抜き斬りつける技で、スムーズに刀を抜くという点に重きが置かれます。構え方や技にはまだまだ多くの種類があり、それぞれに特徴が存在するのです。日本刀を楽しむ際の知識として、知っておくとよいでしょう。
日本刀の握り方
最後に、日本刀の握り方についても確認しておきましょう。日本刀は両手でもつのが基本です。右手を前にして、左手は感覚を空けて握るようにします。右手の人差し指は鍔(つば)に触れるように持ちますが、親指は鍔についてしまわないよう気をつけましょう。左手は、柄の末端にある柄頭(つかがしら)をあまらせるようにしてください。刃の背にあたる峰の延長線上に両手の親指と人差し指の間が乗っていればOKです。
柄に対する角度が直角になるように握ったり、手首が下向きになるように握ったりしてはいけません。絞り過ぎるのもよくないため、力の加減も覚えましょう。全体的に柔らかく握ることが大切です。力の強く入る指ほど力を抜くように意識して握れるようになるとよいでしょう。
日本刀の基本的な構え方と技に関して、おわかりいただけたでしょうか。日本刀は培ってきた歴史の分まだまだ奥が深く、大人の趣味としても人気です。博物館などで見られるだけでなく、近年では日本刀を鑑賞できるカフェなども増えています。所持したり専門店で買取りしてもらったりすることも可能なので、決してハードルが高いものと身構える必要はありません。みなさんもぜひ、日本刀に関する知識を深めていってください。