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公開日:2023/07/01  

軍事技術の粋を集めた古代ギリシャ・ローマの剣の魅力と特徴を解説!


日本に日本刀があるように、海外にもそれぞれの国家を象徴する武器が古くから存在しました。西洋剣を例にとれば、古代ギリシャ、ローマの剣がその代表格でしょう。しかし、具体的にどんなものだったか、日本刀に比べると、詳しく知らない方も多いかもしれません。今回の記事では、歴史を踏まえたうえで、特徴や魅力について解説します。

西洋剣のルーツは古代ギリシャの剣

武器の進化の歴史は、各時代の文明の発展と重なります。当時の最先端技術が、惜しげもなく利用されているのが一般的です。では、西洋剣の起源は、いったいいつ頃なのでしょうか。歴史上では、紀元前1,700年、デンマークで発見された、岩石製の剣が始まりだといわれています。

北欧青銅器時代初期に製造されたものと推測され、この段階ではまだ鉄製ではありません。鉄でつくられるようになったのは、紀元前1,200年以降で、古代エジプトで発達した製鉄技術が、ヨーロッパへ広く浸透してからのことです。

また、20世紀半ば、イングランド東部、ケンブリッジシャーの遺跡で見つかった大量の青銅製の剣も見逃せません。青銅器時代を示す出土品のなかには、のちにカープス・タン、つまり、鯉の舌と名づけられた剣がありました。このタイプの剣は、フランス北西部で発祥し、紀元前9世紀頃の西ヨーロッパで一般的に普及していたと考えられています。さらに、紀元前8世紀頃になると、現在のギリシャのアテネで、世界史でおなじみのスパルタと呼ばれる、都市国家が誕生しました。

国家の宿命として、他国との戦争に備えるため、軍隊の充実が図られます。当時のスパルタ重装歩兵軍は、ギリシャで向かうところ敵なし、とも謳われるレベルでした。その際、クシポスという全長30cmぐらいの短剣を補助武器用として装備し、戦闘時では敵のとどめを刺す役割を担っていたといわれています。このクシポスは、次項で説明する古代ローマの剣、グラディウスに強く影響をおよぼしました。

古代ローマを代表するグラディウス

古代ローマの軍事面で大いに活躍したのが、グラディウスと呼ばれる剣です。誕生したきっかけは、紀元前264年から始まったポエニ戦争中のことでした。ポエニ戦争とは、西地中海の支配をめぐって、古代ローマと、ライバル国家であるカルタゴとの間で繰り広げられた争いです。

100年以上、3度に渡った戦いの末、古代ローマが勝利しました。その戦争のさなか、ローマ人は、中央アジアからヨーロッパへ進出中のケルト人と出会います。独特の短剣を使って戦うケルト人の姿は、見慣れないローマ人にとっては新鮮に映ったにちがいありません。

というのも、当時のローマ軍では、長い剣が主流だったからです。ケルト人との巡り合いを契機に、彼らの短剣をヒントにした、グラディウスがつくられるようになります。グラディウスの全長は、50~70cmぐらいで、銑鉄と軟鉄を組み合わせた合金製という点が大きな特徴です。硬いながらも、割れやすい銑鉄、柔らかいうえに、伸びのある斬鉄の融合は、当時の古代ローマの製鉄技術がいかに優れていたかを物語っています。

古代ローマの新時代を斬り拓いたスパタ

共和制ローマから帝政ローマへ移行すると、次は、再び長剣の時代を迎えます。グラディウスに代わるものとして、スパタの登場です。騎兵用に使われたスパタは、幅広で、厚みのあるグラディウスと異なり、細身で、かつ厚みも控えめな剣。

その始まりは、帝政ローマが支配下に置いた、ケルト人一派、ガリア人からの影響が色濃い、といわれています。なぜなら、当時のローマ軍のなかには、ガリア人も数多く加わり、ともに戦ったと考えられるからです。

やがて、ローマ帝政時代の後半に起こった歴史的な動乱を抑えるために、皇帝のディオクレティアヌスが軍事改革を断行します。これを分岐点に、騎兵中心へと編成が変わった軍隊の間でスパタが広く使われるようになり、ローマ軍の力強い戦力となりました。

古代ローマ軍の全兵士所持していたプギオ

最後のプギオは、グラディウスとスパタと違い、いざというときのための携帯武器としての側面があります。全長20~30㎝ほどの小さな剣で、5cm以上の幅をもち、中央辺りがふくらんだデザインが特徴です。尖端が鋭く、敵の息の根を止める武器として使われていました。興味深いのは、戦闘時だけでなく、まるでナイフのように、日々の生活でちょっとした作業にも使用されていたことです。当時の人たちにとっては、とても便利な道具だったのでしょう。

当初は、素朴な見た目で、飾り気もない剣でしたが、時代が進むにつれて、柄頭や鞘への装飾が常態化します。その装飾は、歴史の常として、身分の高さや権力レベルを誇示する意味合いが強いものでした。そんなプギオですが、実は世界史に名を残した英雄、カエサルの暗殺時にも使われたといわれています。

まとめ

古代ギリシャ、ローマで使われていた剣について、解説してきました。デンマークで発見された岩石製の剣から、一定の時代を経て、青銅製、さらに製鉄技術の髄を集めた鉄製へと材質も変化していきます。国家間で起こる戦争のたびに、剣は進化し、より強力になっていったのは紛れもない事実でしょう。

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