Skip to content
公開日:2020/02/01  

日本刀の柄にはどのような種類がある?

日本刀を、より深く知るために持っておきたいのが拵(こしらえ)に関する知識です。特に構えるときに握る柄の部分にも種類があり、時代によっても多種多様なデザインが登場しています。

ここでは美しさと実用性を兼ね備えた刀とするため、さまざまな工夫が凝らされたパーツについて解説します。

直刀や太刀など刀の種類によって柄も変わる

拵(こしらえ)とは刀を携帯するための外装である刀装の形式を指しますが、拵は太刀や打刀など刀の種類によっても違いがあります。太刀拵や打刀拵といったようにそれぞれパーツが異なり、同じ部位でも時代によって名称が区別されることもあります。そんな中でも特に注目したいのが、柄(つか)です。

つかは刀身を差し込み、構えるときに直接手で握るという、使う人にとってとても重要な部位だからです。握るのに都合がよいように施され、さまざまな工夫がなされており、本体を木地、上端を頭、下端(鐔側)を縁または口と呼び、ちょうど中間をつか間(つかま)といいます。

ここに穴をうがち、目釘を通すことで刀身をつかに固定する仕組みになっているのです。つかには鮫皮をきせて上を柄糸で巻く仕様が一般的ですが、長い歴史の中で異なるデザインも生まれていますので、実は刀身に負けず劣らず興味深いパーツと言えるでしょう。

時代によってもかなり様相は変わります。直刀の時代には、つかも木地だけのものが多く、糸や革、金線などが巻かれているものもありましたがかなり上等なものです。さらに高級品になると金銀や金銅製の板金で包んだものなども出土しており、儀式用として手をかけたものも存在しています。頭の装飾にも環頭式や円頭式などの形式があり、奈良朝期の高級品では希少木であり強く色つやもよい紫檀や赤檀などの素材や、黒柿などの木が木地に使われるようになりました。

これが太刀の時代になると、装飾太刀や蒔絵太刀などの儀仗刀とは異なり、武器として使うための実用品用の拵が登場します。武用の太刀では、つかは鮫皮やなめし革の上に組糸をしっかりと巻いた糸巻太刀が主流です。組糸ではなく革を巻いたり琴糸や銀線などを巻いたりしたものもあり、握って振ったときに筋がブレず、手汗をかいても滑りにくい工夫がなされるようになりました。

そして打ち刀の時代になると、脇差と揃いで同じ形の鮫皮をかぶせ、糸や革を巻いて縁・頭・目貫をつけるスタイルが確立します。現代でよく知られているものは江戸期のもので、公式に「裃差し」という拵が制定され、ここで一定のデザインに落ち着くことになりました。それでも各藩が独自性を追求した結果、それぞれの地域でオリジナリティあふれる拵が育ったのもこの時代です。

歴史の中で特殊な柄も考案されている

現代人がイメージするつかは江戸時代以降のものが一般的ですが、そういう目で見ると一風変わったつかも存在します。例えば「反り柄(そりつか)」は、つか自体が反っており、両手では握れない角度になっているのが特徴です。

中国の歴史もので目にすることがあるかもしれませんが、これは片手打ちの刀に使われていたつかで、起源は中国王朝の漢だと言われています。実は日本に伝わったのは豊臣秀吉の朝鮮出兵の時代で、現地で見て帰った武器を構造し直し、高麗柄と呼んでいたとされます。

寛永のころには越前宰相秀康の系統である前福井藩と雲州松江藩で多く作られたことから「越前反り柄」とも呼ばれました。実は騎馬戦でつかが手綱に引っかかっても外れやすく、片手打ちのこの仕様は非常に役に立ったと考えられています。

次に一風変わっているのは「輪鼓柄(りゅうごづか)」です。両端から真ん中に向かってゆるやかにへこんでいく形は、まさしく鼓(つづみ)に近い形態と言えるでしょう。両側から細くなるものを両輪鼓、刃の側はへこまず棟の側だけが細くなっていくものを片輪鼓と呼びます。

戦国時代の打ち刀に多く、江戸時代は享保ごろまでブームとなっていたものの寛政ごろには一度廃れ、その後また見直されて安政ごろまでまた流行したデザインです。ほかにも糸を巻かずに鮫皮をそのまま見せる出し鮫柄(だしざめづか)や漆を塗った堅牢な漆柄(うるしづか)などもあり、糸巻や革巻きを見ただけでどこの藩士のものか判別できるほどでした。

糸の巻き方にもさまざまな特徴がある

ユニークなのは、つかに巻く糸の種類や巻き方にもさまざまな工夫がある点です。変わり巻きと呼ばれるものは、籐や鯨のひげ、馬の尻尾などを巻いたり、巻き方も片手巻きや平巻き、摘み巻きなど特徴的な巻き方をしたりすることで特徴を前面に出しているのが注目できます。

もちろん奇をてらうばかりではなく、滑りにくさや長持ちさせる工夫などが盛り込まれていますが、なかなか上手くは行かなかったようです。例えば捻り巻きのように糸をX状に巻くことで手の滑りは防ぐものの、糸が山盛りになってかさばりすぎ、握り心地が悪いことが欠点になったものなどもあります。

その見た目からへびの模様のように見える蛇腹巻きや、握りやすく摩耗も防ぐ片捻り巻きなど推奨されるものも生まれ、実に豊かな表情を刀にもたらしています。日本刀を見るときには、是非つかにも注目し、どのような時代にどのように使われたか想像するのも楽しいでしょう。

 

日本刀の柄には実にさまざまな種類があり、刀の種類によっても時代によっても異なる工夫を見ることができます。

特に江戸時代に一定の拵が公式に決められたあと、各藩が独自性を出すためにバラエティに富んだつかのデザインを考案した点が非常に注目できるでしょう。詳しくなれば、つかを見ただけでどこの藩の刀かがわかるようになります。

これから買取店などを訪れる際には、是非、刀身だけでなくつかにも注目してみてはいかがでしょうか。

よく読まれている記事