丙子椒林剣(へいししょうりんけん)は、7世紀頃(飛鳥時代)の作とされる直刀です。現在は日本の国宝に指定されています。
概要
「丙子椒林剣(へいししょうりんけん)」は、飛鳥時代(6~7世紀)に製作されたと伝えられる直刀で、大阪・四天王寺が所蔵し、国宝に指定されています。伝承では聖徳太子や蘇我馬子との関連があり、寺伝に基づいて古くから「太子の佩刀」と称されてきました。現存する日本刀の中でも特に古い遺品であり、反りをほとんど持たない直線的な形状を示すことから、わが国に伝世する上古刀(じょうことう)の代表例の一振です。刀剣愛好者や研究者からも、日本刀の原形を示す重要な資料として評価されています。
刀身について
刀身は刃長約65.8センチ、切刃造、丸棟、内反りごころの直刀で、鋒(きっさき)は鋭く三角形に尖る「かます鋒」です。地鉄は小板目交じりの柾ごころでよく詰まり、地沸が細かく冴えています。刃文は直刃調を基本とし、浅く湾れごころを帯び、匂深い小沸、刀区からの焼出し、小足入り、そして直ぐに焼詰められた帽子が特徴です。指表腰元には篆書体の「丙子椒林」の四字が金象嵌されており、その象嵌文字が名称の由来ともなっています。
来歴
古くは「丙毛槐林」と呼ばれ、蘇我馬子や物部守屋にまつわる伝説が語られていましたが、江戸時代に新井白石が正しく「丙子椒林」と読むべきと示したことで、その名称が定着しました。寺伝によれば、聖徳太子が佩刀したとされ、法隆寺金堂鎮壇具に納められていたともされますが、確定的事実は不明です。1912年に旧国宝、1952年に新国宝に指定され、現在は四天王寺が所蔵し、東京国立博物館へ寄託されています。
まとめ
丙子椒林剣は、日本刀の歴史的源を伝える貴重な刀剣であり、直刀形状や金象嵌の銘など、上古刀ならではの特徴が際立っています。刀身の鍛造品質や保存状態の良好さは稀有で、伝承と技術が融合した文化財です。必ずしも聖徳太子の佩刀であった証拠はありませんが、その由来と伝承、技術的完成度を併せ持つ本剣は、日本刀の起源と発展を探る上で欠かせない存在です。国宝として守られるべき、日本刀と刀剣文化の象徴と言える逸品です。