Skip to content
公開日:2025/10/24  

鎌倉時代の刀剣「短刀 銘 来国俊」とは?

鎌倉時代の刀剣「短刀 銘 来国俊」とは

刀工、来国俊(らいくにとし)の作「短刀 銘 来国俊(たんとう・めい・らいくにとし)」は、日本の国宝に指定されている刀剣です。

概要

熱田神宮宝物館が所蔵する国宝「短刀 銘 来国俊(裏年紀:正和五年十一月日=1316)」は、鎌倉中期の名工・来国俊による代表作として「熱田の来国俊」と称されます。刃長は25.1cm、平造・三つ棟で重ね厚く、わずかに内反りを示す端正な姿です。来派山城国(京都)に栄え、粟田口派と並び刀剣史を担った工人集団で、本作は同派の洗練を短刀に結晶させた基準作といえます。1955年2月2日に国宝指定、1911年の重文指定に遡る公的評価の積み重ねも本作の位置を裏づけます。熱田神宮の所蔵品解説や展覧会情報でも繰り返し紹介され、刀剣・日本刀に関心を持つ来館者にとって必見の一口です。

刀身の特徴

造りは平造三つ棟、身幅は身長に比してやや広め、重ねは厚く、頑丈な作り込みです。鍛えは小板目肌がよく約み、地沸が細かくついて地景の陰影が豊かに観取できます。刃文は広直刃に浅い湾れを交え、ところどころに小足・葉が入り、匂口に叢立ちが見られる沸出来で、来国俊の静謐で格調高い作風を端的に表します。帽子は表裏とも小丸で、わずかに掃きかけ二重ごころ。彫物は表裏に刀樋に素剣を添え、意匠は簡潔ながら気品があります。茎は生ぶで先栗尻、鑢目は切、目釘孔二。表中央に大振りで明快な「来国俊」銘、裏に年紀を刻み、銘文から作者76歳時の制作と考えられます。刀剣研究上、短刀における来派の典型を示す実見資料です。

来歴の詳細

本作は熱田神宮に伝来し、同宮宝物館の中核資料として保管・公開されてきました。近年は東京国立博物館へ寄託・出陳される機会もあり、2025年初頭の館内展示でも「Aichi・熱田神宮寄託の国宝短刀 来国俊(1316年)」として掲出されています。国宝指定は1955年2月2日、重文指定は1911年4月17日で、文化財台帳に詳しい計測値・作域記述・銘文が登録されています。熱田神宮の公式案内でも国宝の一つとして明記され、宝物館や「草薙館」関連の展示情報とともに周知されています。展観の可否は会期により変動しますが、神社所蔵の性格上、寄託展示と里帰り公開が織り交ぜられる運用です。見学の際は、最新の展示予定を公式情報で確認するのが確実です。

まとめ

短刀 銘 来国俊」は、来派の冴えを短刀寸に凝縮した名品で、姿・鍛・刃文・帽子・銘文のすべてに時代的完成度が宿ります。重ね厚く内反りを帯びる均整、沸出来の広直刃に見える小足・葉の働き、明快な大振り二字銘と年紀は、来国俊の作域を知るうえでの教科書的要素です。刀剣・日本刀の鑑賞では、まず姿態の比例(身幅・重ね・反り)を押さえ、次に地鉄の詰みと地沸、刃文の匂口の冴え、帽子の収まり、茎仕立てと銘字の書風を順に点検すると理解が深まります。所蔵は熱田神宮で、展示は同宮および寄託先で不定期に開催されることがあるようです。

よく読まれている記事