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公開日:2025/06/24  

刀工貞宗作の日本刀、亀甲貞宗とは?

刀工貞宗作の日本刀、亀甲貞宗とは
亀甲貞宗(きっこうさだむね)は、鎌倉時代(14世紀)に作られたとされる、日本の国宝に指定されている打刀(うちがたな)です。2025年現在、東京都台東区の東京国立博物館に所蔵されています。

概要

亀甲貞宗は鎌倉末期から南北朝時代(14世紀)に活躍した名工・貞宗による日本刀(打刀)で、現在は東京国立博物館に所蔵されており国宝に指定されています。本刀は元太刀として製作後、大磨上げされ打刀仕様に改修されました。刃長約70.9cm、反り約2.4cmの寸延で、身幅広く重ね薄い洗練された姿が特徴です。

名前の由来

亀甲貞宗という名は、茎の指裏に繊細な花菱亀甲紋が毛彫りされている点に由来します。この意匠が本刀の大きな特徴であり、日本刀としての芸術性と象徴性を高めています。刀剣研究家の福永酔剣氏は、自著『日本刀大百科事典』の中で、亀甲紋が出雲大社神紋であることに触れ、本作と出雲大社に直接の関係はないものの、間接的なつながりがある可能性に言及しています。実際に、出雲国松江藩初代藩主・松平直政が所持していたとされ、その後は陸奥国窪田藩の土方雄久に渡り、土方家に長く伝来しました。しかし、1684年の窪田藩改易により、家中の混乱とともにこの刀剣も売却の運命を辿ることになります。歴史の中を受け継がれてきた日本刀ならではの由緒ある逸品といえるでしょう。

作風

亀甲貞宗は、刃長70.9センチメートル、反り2.4センチメートルを備え、やや幅が狭く中鋒の姿が特徴です。造りは鎬造で、棟は屋根形をした庵棟。切先は2.7センチメートルで、元幅は2.7センチ、先幅は1.8センチとなっています。茎は大磨上無銘で、指表の茎先には花亀甲紋が彫られています。鍛えは板目肌がよく詰み、地には美しい地沸がきらめきます。刃文は湾れを基調に、金筋や二重刃、足・葉の働きが豊かに現れ、帽子は掃きかけて小丸に返ります。また、表裏には貞宗が得意とした二筋樋が刻まれ、正宗作には見られない個性を示しています。こうした細部の造形からも、刀剣としての高い完成度がうかがえます。

刀工貞宗

貞宗(さだむね)は鎌倉時代末期、相模国(現在の神奈川県)で活躍した刀工で、日本刀史において相州伝を代表する重要な存在とされています。生没年は明確ではありませんが、元応元年(1319年)生まれ、または貞和5年(1349年)没とする説があります。正宗の子あるいは養子と伝わりますが、確証はなく、観智院本『銘尽』にて「正宗五郎入道 貞宗 彦四郎左衛門尉ニにんす」と記されており、直接の親子関係には触れていません。その後、文明15年(1483年)の『能阿弥本銘尽』に「江州高木に住し、号を高木彦四郎、五郎入道の子」と記され、実在の刀匠であることが裏付けられています。現存する刀剣に銘は確認されていませんが、作風や伝承からも日本刀の発展に深く関わった名工であったことは疑いありません。

まとめ

亀甲貞宗は、日本刀の中でも造形美と技術水準の高さが融合した特異な存在であり、刀剣ファンや研究者から高く評価されています。指裏亀甲紋や、穏やかで整った刃文、大磨上げによる改修の歴史も含め、刀剣文化の深さを物語る名刀です。国宝として守られるにふさわしい、鎌倉南北朝時代の遺産といえるでしょう。

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