鹿児島の照国神社が所蔵する「太刀 銘 国宗」は鎌倉中期頃の作とされ、現在は日本の国宝に指定されている刀剣です。
概要
照国神社所蔵の国宝「太刀 銘 国宗」は、鎌倉中期に活躍した備前三郎国宗の代表作で、日本刀史の中核を語る刀剣です。所有者は鹿児島の照国神社、保管は鹿児島県歴史・美術センター黎明館です。文化財指定の時期については、重要文化財が1927年7月21日、国宝が1964年5月26日と早期で、その評価の確かさを物語ります。刃長約81.3センチ、反り約2.6センチ、元幅3.3センチ・先幅2.2センチの長大で量感ある体配に、刃縁の冴えと肉置きの充実が伴い、第一級の武用美を示します。文化庁台帳でも東照宮伝来の国宗作に比肩する最優秀作と位置づけられ、同銘の国宝四口の一角として、備前伝の華やぎと鎌倉期太刀の気迫を併せ持つ典型作と評されています。研究・鑑賞双方で基準作となる一口です。
作風
作風の要は、地刃の「豊かさ」と「切れ味の理」の両立にあります。造りは鎬造・庵棟で踏張りが力強く、腰反り高い堂々の姿に、やや短めの切先を備えて均衡が取れます。地鉄は板目に肌立ちごころを示し、地沸が厚く総体に乱れ映りが立ち、要所に地景・地斑が現れて奥行きを与えます。刃文は匂口の冴えた丁子乱れに互の目が交じり、深い足と細かな葉が頻りで、ところどころ金筋が掛かって、刃中の働きは実に多彩です。物打上では表裏に飛焼が連なり、打ち合い部の鋭さを強調。帽子は乱れ込みから小丸へ返る古調で、焼刃の勢いを端正にまとめます。茎は生ぶ、浅い勝手下がり鑢、目釘孔二、区下棟寄りに角張った二字銘「国宗」。銘振りの力感も備前名工の格を伝えます。焼刃は匂出来を基調に沸が絡み、華美に流れない格調が保たれます。
来歴
来歴も名品の格にふさわしい劇的な道程を辿ります。島津家の重宝として守られ、1927年(昭和2)に当主・島津忠重が、始祖・忠久七百年祭に合わせて照国神社へ奉納しました。ところが先の大戦敗戦後の混乱で所在不明となり、一時は喪失が危惧されます。1963年、アメリカ合衆国の愛刀家であるウォルター・コンプトンが骨董店で偶然発見し、その後日本に返還。返還後は東京国立博物館での保管を経て、所有照国神社・保管黎明館という体制で保存公開が進められています。現在は年1~2回の特別展示が行われ、来館者が実見できる機会が整備されました。国宗は一文字・長船と系譜を異にする直宗系で、鎌倉鍛冶の黎明に関わった刀匠と伝わり、本刀はその到達点を体現します。
まとめ
総じて「太刀 銘 国宗」は、備前伝の重花風丁子の華麗さと、鎌倉中期太刀の量感・踏張り・肉置きを緊密に調和させ、日本刀の美・技・機能を同時に極めた刀剣です。鑑賞ではまず体配の雄大さを捉え、次に板目に厚く付く地沸と乱れ映りを、光の角度を変えながら追ってください。物打の飛焼・金筋、匂口の締まり、足・葉の入り方まで丁寧に観察すると、国宗作の生命感が鮮やかに立ち上がります。区付近の二字銘と生ぶ茎の情報も作域確定の拠り所。公開時には、東照宮・徳川美術館・ふくやま美術館に伝わる同銘国宝と比較し、備前から相州へ展開する鎌倉期技術史を多面的に学べます。刀剣・日本刀への関心を深める格好の手引きとなるはずです。