中世時代の武士の武器として製作された日本刀は、現在は美術品として愛好家の間で支持されるアイテムとなりました。昨今は若い世代の間でも日本刀ブームが訪れていますが、刀には大刀の他に脇差という小刀もあります。ここでは脇差にスポットを当てて、その価値と買取り時に高い査定金額が提示されるものについて詳しく見ていきましょう。
そもそも脇差とは一体どんな刀なの?
一般的に日本刀と呼ばれるものは、1400年代の室町時代から1800年後期の江戸時代にかけて製作された刀のことを指します。戦国時代までの刀は太刀と呼ばれる1.5尺寸(約120cm)ほどの、一刀の刀で構成されていました。戦国時代までは武器という位置づけのものであったので、素早く腰から抜いて使用するという実用性に特化したものが好まれていたというわけです。
ところが江戸時代になると天下泰平の世の中となり、武士で刀を携帯していても武器として使用する機会は一気になくなります。それでも自身の身分を証明するためのアイテムで日本刀を携える必要があり、この時代から脇差が誕生しました。
脇差は小刀とも呼ばれるもので、5尺寸(約60cm)の長さになっているものです。大刀と一対にして腰に差すことでバランスよく見た目を保つことができ、大半が打刃となっているのが一般的でした。打刃とは地刃のない刀のことをいい、大刀の見栄えを高める価値のあるものとみなされてきました。初めて脇差を携行したのは3代将軍の徳川家光で、朝廷に征夷大将軍の任命式を受ける際に帯刀したのが始まりです。
それ以降、武士の間でも正装姿という形で小刀を携えるのが常となり、江戸時代に製作された刀は大小が一対となったものとなります。主に漆塗り・螺鈿細工などのきめ細やかな細工を施したものが多く、現代でいうところのアクセサリーになったものです。
高価な脇差の特徴とその査定価格について
脇差(小刀)は現代的なアクセサリーの位置付けになったもので、武家社会の正装時に必ず帯刀されていたものです。江戸時代以降の日本刀には必ずといってよいほど大刀と対を成した小刀も製作されており、買取専門店では一対となっている日本刀は高値で買い取っているところが一般的です。
小刀の場合、大刀よりもこだわった細工を施しているものも多く、単品でも価値のあるものとみなされて買取りもなされています。インターネットでは高額な価値のある脇差を網羅したwebサイトが多数ありますが、その中からとくに希少価値のある小刀をピックアップして見ていきます。
「螺鈿小夜刀」「昇竜刀」の2つが非常に希少価値のある小刀とされており、2020年時点で一刀の最高金額は約250万円で買い取りをされているほどです。
「螺鈿小夜刀」とは打刃の部分にアコヤ貝を設けているもので、美しい七色の光を放っているのが特徴です。寛永年間に広く普及した小刀で、主に加賀藩・京の都の武士の間で人気となったことが歴史資料で目にできます。
「昇竜刀」は脇差では珍しい地刃で、鞘が漆塗りとなっているのが特徴です。柄に設けられた小刀の細工が龍の姿となっていて、縁起を重んじる武士に愛用されていたものでした。比較的多く流通しており、こちらは買取り査定では約20万円前後で買い取りされている品になります。
脇差を少しでも高く査定してもらうにはどうしたらいいの?
日本刀はもちろんのこと、古美術品というものは大昔に製作されたものであるためキレイな状態で保管されていない場合が多くなります。基本、保管状態がよろしくないと査定金額が下がる傾向になり、これは脇差にも当てはまります。
小刀だと大刀と違って鞘・鍔・柄に細かい細工を施した工芸品にもなっているため、なお一層よい状態の品物ほど高値となる傾向です。保管状態がよろしくない場合でも査定金額を高くしたい時は、しっかりとお手入れをしてから専門店に持ち込むのが望ましいでしょう。
たとえば「螺鈿小夜刀」の場合、打刃部分にアコヤ貝が備わっています。この小刀の価値を決める部位でもあり、アコヤ貝がはがれている場合は補修を行えば本来の価値のある逸品に仕上げることが可能です。打刃なら真剣に当たらず、宝飾店や刀専門店で補修を依頼できるので気軽に持ち込めることでしょう。直径2cm程度の補修であれば約5,000円で依頼できるので、さほどコストも掛からないのが特徴です。
他の小刀でも当てはまり、鞘が漆塗りで表面の艶がないときでも補修を依頼すれば元通りにできます。この補修を行った状態で専門店に持ち込めば、買取り査定にも反映されて高値で引き取ってもらうことが可能です。なお、自身で補修を行うとかえって状態が悪くなる可能性があるので、技術がない場合は避けるのが賢明といえます。
以上、日本刀における脇差の概要と価値のある逸品などについて見ていきました。大刀に付属するものが脇差であり、大半が地刃のない打刃となっています。武士の身分を証明する正装に帯刀されたものであり、大刀にはないきめ細やかな細工が施されたものは非常に価値が高くなります。