日本刀を所持している方でしたら、刀の価値だけではなく、いつ作られたかという点も気になるのではないでしょうか?日本刀の価値を決めるのは状態や種類はもちろん、制作された時期もポイントになるからです。そこで今回は、江戸時代の日本刀にはどれくらの価値があったのかについて解説していきます。
日本刀の中古品が多く出回っていた江戸時代
江戸時代は日本の歴史において、260年以上も戦乱が起きない安定した時代でした。そのため、市場や流通も大きく発達し、刀の材料となる鉄も安定して供給できたことから、数多くの日本刀が製造されるようになります。また、幕府は庶民に対し、護身用の脇差を許可したため、日本刀の需要もますます増えるようになりました。ただし、日本刀は何も良質な刀だけが出回るとも限りません。「金2分(5万円~10万円)で安刀を買った」という庶民が付けた日記もあることから、日本刀には安刀も数多く存在していました。
というのも、日本刀の寿命はあって無いようなものだからです。博物館や骨董店に行けば、江戸時代に作られた刀はもちろん、室町時代や鎌倉時代、平安時代に制作された日本刀も見ることができます。このように日本刀は、保存状態が良ければ何百年も持ちますので、江戸時代にはそれまでに制作された何本もの日本刀が市場に出回っていた可能性があるのです。それこそ江戸時代以前は戦国の世だったので、日本刀には高い需要があります。
また、諸大名は使い捨て同然の刀を大量生産し、足軽に貸し出していたこともあります。江戸時代には、こうした日本刀も市場に数多く出回っていた可能性があるうえ、盗品や火事の焼け跡から出てきた刀すら販売していたかも知れません。つまり、日本刀には1両以下で買える中古品も多く存在していたわけです。
江戸時代当時の日本刀の相場は?
それでは、江戸時代当時の日本刀の相場はどれほどだったのでしょうか?時期によって多少価値は異なりますが、安物で数万円程度、銘が入るような価値が高いものになると60万円~70万円ほど、さらに高価になれば100万円~300万円ほどの価値があったと考えられています。
また「江戸時代の貨幣価値換算表」では、平均的な日本刀の価格は1本25両とされており、現在の価格でいえば約165万円になります。つまり150万円前後が日本刀の相場であることが分かりますが、上級武士になると200万円~300万円の日本刀を所持することもできました。つまり、刀には身分はもちろん、収入の差も大きく表れていたということです。
さらに大名クラスが所持する日本刀にもなると、その価格はケタ違いに跳ね上がります。たとえば、幕府が諸大名に贈った日本刀の中には、当時の価格で約3,700万円~1億円もの価格が付けられていた刀もあります。
ほかにも、江戸時代後期に制作された「水心子正次」は1,000万円、江戸時代中期に制作された「虎徹」は3,000万円もの価値が付くなど、相場を上げるとキリがありません。とはいえ、幕末に活躍した新選組は、1本あたり1両~10両(70万円~100万円)という平均的な価格の日本刀を使用していた、という史料もあります。
江戸時代の日本刀は現在どのくらいの価値を持つか
現在では、日本刀は武器として使うのではなく、歴史的価値を持つ重要文化財として鑑賞するのが一般的です。また、刀の価値は種類や制作された時期だけではなく、現在の市場価値など複数の要因によって決定されます。江戸時代の日本刀でいえば「新刀」「新々刀」という区分に分類されていて、銘や鞘が揃っている状態であれば、10万円~100万円以上の価格が付き、著名な刀匠が製作した刀であれば、数千万円もの値が付くこともあります。
また、江戸時代は女性が護身用で短刀を所持することも多かったことから、短刀も多く売買されおり、平均数万円~10万円ほどで取引されています。ネットオークションをみても平均7万円前後で取引されており、安いもので数千円、高額な刀は100万円以上で取引されています。ただ一方で、日本刀は投機対象としてみられることもあります。
どういうことかといえば、例え高額な刀であっても市場の変化で価値が大きく下がったり、反対にそこまで価値のない刀でも、需要によって高額になったりするケースもあるのです。そのため、日本刀の価格は、必ずしも本来の価値を表しているわけではないということを念頭に入れておきましょう。ただし、価値を確立している刀は市場の動きに関わらず、高い価格で取引されています。
■日本刀を売るなら専門の査定士に相談を
日本刀は売るには骨董屋に持ちこんだり、ネットオークションで販売したりすることもできますが、こうした場所は日本刀の正しい知識や買取知識を有しているとは限りません。場合によっては、本来の買取価格より大幅に下回る査定を付けられる可能性も考えられます。そのため、日本刀を売りたい場合には、専門の査定士に相談することをおすすめします。とくに「刀剣評価鑑定士」を取得している査定士であれば、正確な査定が期待できますし、市場にも精通しています。
また、地方にお住まいで店舗まで足を運べない方でも、現在は多くの買取店が出張買取を行っていますので、利用してみるのも手です。なお、日本刀の売却には銃砲刀剣類登録証が必要で、許可証が無ければ所持も売却することもできません。万が一、手元に無くても、警察に発見届をすれば、新規登録の手続きが行えますので、まずは銃砲刀剣類登録証が日本刀の鞘に付いていないか、または手元にないか確認してみましょう。
江戸時代の日本刀の価格は平均150万円前後ですが、なかには数万円で購入できる安物から、数百万円する高級品までその差はピンキリです。日本刀といえば、半ば神格化されたイメージもありますが、当時はもっと身近に存在していたことでしょう。とはいえ、現在では希少な歴史資料ということで、ものによっては数十万円もの査定が付くこともあります。もし日本刀をお持ちのうえ、興味があれば、専門の査定士に相談してみましょう。ちなみに現代の日本刀は、10万~100万円ほどが相場となっています。