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公開日:2020/10/01  

刀鍛冶にはどうやったらなれる?

刀鍛冶になるためには、資格を持つ人のもとで5年以上修業し、研修会を修了すると取得できます。学校などはなく、現在はこの道しか存在しません。現在資格を持つ人のほとんどが入門を受けつけていないことから、これから刀鍛冶を目指すのは非常に難しいと見られます。今回は、現代の刀匠をとりまく環境について解説します。

「美術刀剣刀匠技術保存研修会」が実地試験

まず、文化庁が主催している「美術刀剣刀匠技術保存研修会」について知っておきましょう。美術刀剣刀匠技術保存研修会とは、若手刀匠を中心とした作刀技術の向上を目指し、昭和58年から開設されているものです。講師を招き、1年目に鍛錬、2年目に素延・火造、3年目に焼入れを行うことで、全3年で修了となる内容になっています。

研修会という名前がついていますが、実質的には刀鍛冶と認められる腕を持っているかどうかを図る実技試験です。それぞれ1週間かけて行われ、1尺3寸程度の鎬造りの脇差を制作することで技術が判定されます。ただ講師としては、この程度は楽に修了して欲しい内容だと認識しています。

真面目に修行をし、職人として技術を体得した人なら、問題なく修了できるはずの内容だからです。この研修会程度でつまずいているようでは、とても本職として刀鍛冶にはなれないでしょう。

それだけに、研修会などより毎日の修行のほうがずっと重要だといえます。基本的に資格を取るためには5年の修行が必要ですが、研修会へは4年の修業を終えた人から参加が認められています。作刀一般の技術と知識が問われ、基礎が間違いなく身についていないと修了は望めません。

最も難しいのは研修会より入門です

前述のとおり、研修会は日々の修行を怠らずに技術を磨いていればクリアできるものです。当然難しいですが、それよりもずっと難しいのが入門先を得ることでしょう。そもそも刀匠の資格を持つ人が限られているうえに、常時入門を受け入れているところがありません。文化庁の許可を持たない人が日本刀を作ることは一切禁じられていますので、この道以外にないところで一番のハードルともいえます。

その理由は、刀鍛冶が経済的に豊かではないうえに、責任が非常に重いからです。弟子を採ろうと考える人はあまりなく、よほど断れない紹介でもない限り、入門することがかなわないのが実情です。また弟子は無給で衣食住は当然すべて自分で面倒を見なければならないうえに、場所代や材料代は自分で支払う必要があるのが一般的です。

毎日休みなく5年間、この状態で肉体的負担、経済的負担、精神的負担にも耐えなければなりませんので、そう簡単に挑むべきものでもないでしょう。そもそも日本刀は現代において美術品だとはいえ、殺傷能力を持つ武器でもあります。作り手の責任も重く、常に発注者や制作数を文化庁に届け出る義務も負い、社会的責任も果たさなければなりません。

刀鍛冶は単に技術を持つ職人ではなく、諸官庁への手続きを確実に行える常識を持ち、社会に対して誠実に行動できる人格者です。健康な体と正しい判断力を持つと認められて初めて認められますので、誰もが入門できるというわけではないことも納得でしょう。

一般社団法人全日本刀匠会が相談に乗っています

従来までは、本人が一人で刀匠を探し、門戸をたたくところからはじめるのが基本でした。ただ近年は刀匠を統括する「一般社団法人全日本刀匠会」が、後継者育成支援委員会という窓口を設けて相談を受けるようになっています。

これは刀鍛冶になるにはどうしたらよいかという問い合わせが増えてきたことが理由ですが、情報があまりに少ない中で、心構えから教えるために動き出した結果ともいえます。委員会が行っているのは、研修会を開催し、数日間の体験入門などを実施したうえで、入門先を探したり入門先との面談を斡旋したりする活動です。

ここでは実際に修業中の方から話を聞くことができますし、研修会が終了したあと、希望があれば数日間体験入門することも可能です。今まで得られなかった詳しい情報を得られるのは魅力ですが、参加すればすんなり入門できるというわけでもありませんので、そこは理解しておきましょう。

ただ、こちらには年齢制限は設けられていません。ですので、刀鍛冶になりたいと考えているのであれば、研修会へ参加してみてください。また、委員会から入門先の紹介を受けても、実際に入門先と面接や交渉を行い、結果的に断られる場合もあるのでそこは留意しておきましょう。委員会も、入門先を探すのは正直かなり困難であり、案内や紹介はしても入門が保証されるものではないとしています。入門できるか否かは、あくまで入門先と本人の話し合いの結果によります。

 

刀鍛冶になるためには、文化庁から刀匠として認可されている資格者のもとに入門し、5年の修行を務める必要があります。そのうえで文化庁が主催する「美術刀剣刀匠技術保存研修会」に参加し、実質的な実地試験を3年に分けて受け、修了できれば認められることになります。

ただし、本当に難しいのは研修試験ではなく、刀匠のもとへ入門することです。相談にのるため一般社団法人全日本刀匠会が、後継者育成支援委員会という窓口を設けていますが、こちらの研修会に参加しても紹介を受けられるのみで、入門は本人の交渉になります。

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