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公開日:2022/08/01  

身分によって所有できる刀に違いがあった?その理由とは


現在、美術品として扱われている刀には独特な魅力がありますよね。誰もが一度は美術館や城内で展示されている刀を見たことがあるのではないでしょうか。戦が行われていた時代、美術館で飾られている名刀は身分の高い武士に与えられ、身分の低い武士は質の低い刀を使用していました。今回はそんな身分による刀の違いを紹介します。

時代とともに帯刀する刀の種類が変化した

室町時代から安土桃山時代にかけて、武士の持つ刀は変化しました。室町時代初期では太刀を使っていたのに対し、室町時代中期から安土桃山時代にかけては打刀が使われるようになったのです。「太刀と打刀はなにが違うの?」と疑問を持った方もいると思いますので、太刀と打刀の違いについて次の見出しで解説します。

太刀とは

太刀とは刃渡り80cmを超える刀のことで、太刀緒と呼ばれる紐を使って腰から下げます。名前の由来は「断ち切る」の「断ち」をとったという説が有力です。太刀の種類には主に大太刀、小太刀、糸巻太刀、黒漆太刀、厳物造太刀などがあります。また、太刀はもともと直刀といって刀身が真っすぐな品が主流でした。国内で湾刀が使用されるようになったのは平安時代からといわれています。南北朝時代あたりでは、騎乗して戦う戦が主流であり、直刀よりも敵を切るのに向いていた湾刀が使われていたようです。

打刀とは

打刀とは室町時代中期から武士の間で使われるようになった刀で、刃渡りは約2尺(60cm)程しかなく、太刀よりも軽く扱いやすいのが特徴です。南北朝時代周辺では騎乗がメインで、太刀よりも打刀が使われるようになったのは、歩兵と呼ばれるような徒歩がメインの武士が増えてからです。なぜならその時代の男性の平均身長はおよそ150cm程度しかなありませんでした。そのため刃渡りが80cmもある太刀を振り回すには少し無理があり、茎(柄の中に入っている部分)を削って調整し、徒歩でも使いやすい打刀が使われるようになったのです。

所有できる刀は身分の違いによっても異なる

身分によっても刀の種類や価値が異なります。

大名の刀

大名は藩を統治するほどの力を持っていたため、大名の大半が古名刀や最上位の刀を持っていました。儀式の際には帯刀が義務であった糸巻太刀を豪華に飾り付け、腰に付けていたといわれています。大名の刀は現在でも、美術品として扱われている刀です。

中級武士

中級武士が差す刀は、日本刀の中でも上位か中位程度の刀です。その中でも武士の出身地で作られたお国刀をほとんどの武士が身につけていました。

初級武士

初級武士は、お国刀のお下がり、もしくは既製品程度の刀を帯刀していました。また、主家断絶などで職を失った武士は「浪人」と呼ばれ、刀を縦に差す「落とし差し」で大刀を帯刀していたのです。

江戸時代から帯刀は武士の特権へ

安土桃山時代から江戸時代になると、士農工商という身分制度ができました。そのため、農民の帯刀は禁止され、武士のみが刀を帯刀してよいことになります。また、武士は打刀と脇差の2本の帯刀が義務化されていたため、刀は武士の象徴となっていったのです。

現在は登録証があれば誰でも所持できる

銃刀法がある現代、刀剣の類は登録証があれば所持できます。こちらで銃刀法や登録書について解説しましょう。

銃刀法について

まず銃刀法とは「鉄砲刀剣類所持等取締法」の略称です。銃や刀剣などは人に危害がおよびやすいため、法律によって取り締まられています。刀剣類に関しての定義は次のように定められているのです。

「第2条2則 この法律において刀剣類とは、刃渡り15cmを超える刀、槍および薙刀、刃渡り5.5cmを超える剣または匕首(あいくち)並びに飛び出しナイフ(以下省略)をいう。」

この文を読んで「15cmの刀なんてあるの?」「ナイフや包丁もダメなの?」と思った方もいるでしょう。

ナイフ・包丁と刀を見わけるには、目で判断するしかないのですが、大体は「反りがあるかどうか」で判断できます。剣先と刃の付け根を線で結び、刀身から線がはみ出るのが刀、線が刀身と重なるのがナイフや包丁と考えてもらえれば問題ありません。

また「5.5cmの剣も短くない?」と思ったかもしれませんが、剣は刀や包丁とは違い、刀身の両方に刃が付いているものを指します。そのため5.5cmでも凶器として扱われるわけです。ここで注意したいのが「ダガー」の扱い。牡蠣を剥くためのナイフやダイバーナイフなども銃刀法の対象ですので注意が必要です。

上記のような刀や剣は所持が禁止されているので、間違って買わないようにしましょう。もちろん美術品として登録証のある刀は家で所持が可能です。

登録証とは

登録証とは、美術品としての刀を所持するために必要な書類です。登録証がない状態で刀が見つかった場合には銃刀法違反になるので、刀と一緒に保管しておくとよいでしょう。もし登録証をなくしてしまった場合は、近くの警察署で登録証発行の手続きを行ってください。

まとめ

今回は身分による日本刀の違いと、現在の刀剣の取り扱いについて紹介しました。現代でも登録証があれば日本刀を所有できます。時代背景を知ったうえで日本刀を見ると、また違った魅力があることがわかりますね。

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