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公開日:2020/01/15  

日本刀は長さや重さによって呼び方が変わる?

日本刀は同じように見えても長さや形状が異なる場合、呼び方も変わります。それがどのような時代に鍛造されたかを推測するのも大きな魅力ですが、正確に把握するためには刀身の違いをきちんと知ることが大切です。ここでは刀剣類の種類とその造りについて解説します。

日本刀には重さのバランスを取る技がある

日本刀を区分する場合、刀身の長さや形状から分類されることになります。刀身が長ければ長いだけ、刃幅が広ければ広いだけ重量も増しますが、単に重さだけで呼び方が変わるというわけではありません。

江戸時代に多く鍛造されていた2尺3寸5分の刀は、平均的に約200~300g、そこに鐸や柄、切羽などの刀装具を装着した状態で400~600g程度になります。抜き身でこれですから、鞘に収めて腰に挿したら1㎏程度が腰にかかることになります。

ただ実戦で使用する場合、重量は少しでも軽い方が疲労も少なく取り回しもしやすいので、刀には少しでも軽くする工夫がなされています。刀身には縦に樋と呼ばれる溝が彫られていますが、これは衝撃の緩和目的のほかに重さを軽減する役目も担っています。

日本の刀は西洋剣より細見で軽そうに見えてしまう人も多いですが、実際にはずっしりと重い武器だと言えるでしょう。ただ、そこには刀匠の技が活きており、実際の重さと持った感覚がまったく異なる刀もあります。数字だけ見ると非常に重く、とても振り回せるようなものには思えませんが、刀身は芯に柔らかい鉄を使い、周りを鋼鉄で包んで鍛錬されています。

このときに長さや重心の位置を最適に整えることで、構えたときに重量バランスが取れる状態に仕上げると、持っても重さを感じにくくなると言われます。正しい位置に構えると、とたんに握りやすく振りやすい刀は、実際の重みよりも軽く振るうことができる銘品となるのです。

長さと形状による区分を解説

それでは日本刀を分類別に紹介しましょう。

・直刀(ちょくとう)

名前の通り刀身に反りがない刀剣です。平安時代中期まで使われていたもので、大刀とも呼ばれています。刀身の幅が一定で、手元から先まで同じ太さのデザインです。

・太刀(たち)

平安後期から作られるようになり、戦国時代まで広く使われていました。刀身の反りが深いのが大きな特徴で、刀身の幅も変化し、鍔元が広く切先へ徐々に細くなっていく傾向があります。ただ、現代では60cm以上のものを太刀とし、それ以下のものは脇差に区分しています。

・大太刀(おおだち)

太刀の中で刃渡り90cm以上の長い刀身をもつものを大太刀、もしくは野太刀と呼びます。このサイズでは腰に挿せないため、背にかつぐスタイルとなります。馬上から歩兵などを攻撃する武器と考えられています。

・小太刀(こだち)

太刀の中で刃渡り30cm~60cm未満の短い刀身をもつものを呼びます。現代では脇差と同じ区分に分類されています。

・刺刀(さすが)

薙刀の補助武器となる短刀で、刺突に重点を置いています。歩兵の武器が薙刀の時代、乱戦で長い武器が使えなくなった局面で使われる刀です。

・打刀(うちがたな)

室町時代から発展した刀で、現代一般的に日本刀と呼ぶものはこのタイプである場合が多いです。刃渡り60cm以上が打刀、30cm~60cm未満が脇差に分類されます。

・短刀

脇差よりもさらに短く、刃渡り30cm未満のものをさします。ただし、30cm以上あっても反りや鎬がない場合、寸延短刀(すんのびたんとう)と呼ばれ短刀の区分になる場合もあります。また、 刃渡り21cm前後で身幅が狭く厚重ねの短刀は、鎧通(よろいどおし)と言われます。

・長巻(ながまき)

柄が長く、刀身とほぼ同じ長さのため全体が180~210cm程度になります。

・薙刀(なぎなた)

柄が長く、刀身に強い反りがある武器です。刀身は約30~60cmで柄は約90~180cm程度になります。

尺貫法を知っておくと理解しやすくなる

日本刀は長さによって呼び方が変わるため、刀身の長さを知ることはとても重要です。その際、日本古来の長さや重さの単位を知っておくと、さらに理解がしやすいでしょう。

尺貫法と言いますが、長さを尺・寸・分・厘、重さを貫で表すものです。メートル法に換算すると、1尺=30.3cm、1寸=3.03cm、1分=0.303cm、1厘=0.0303cmとなります。重さは1貫=3.75kgとなるので覚えておきましょう。

前述した江戸時代の刀の常寸は2尺3寸5分ですので、約71cmということが分かります。昔は1尺までが短刀、1尺~2尺までが脇差、それ以上を刀と呼びました。現在の区分基準とは少し異なりますが、だいたいのサイズ感を覚えておくと判断がしやすいでしょう。

 

日本刀は長さも重さも一振り一振り変わり、作られた時代によって呼び方も変わります。どの時代のものか、どのような目的で鍛造されたものかを考えるのも、鑑賞するうえで非常にロマンがあるでしょう。

価値を知るためには現在の分類を知ることも大事ですが、鍛造された当時の分類とは少々異なる場合もあります。より深く理解するためには、なぜそうしたサイズや形状になったかを推察し、尺貫法も理解したうえで歴史的背景を考察するのもおすすめです。

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