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日本刀と脇差の違いとは?

 

日本刀と脇差の違いとは?言葉の定義と日常の認識との間にズレが生じるのはそれこそ日常茶飯事のことです。
それは立場や専門性の認識と一般認識との違いとも言えます。
刀=日本刀という認識と、日本刀の種類のひとつとしての刀という認識がまさにそれです。
本来、脇差は刀や太刀と同様に日本刀のひとつの種類であり、刀身の長さが約30~60㎝のものを言います。
日本刀=刀・太刀とするとき脇差と日本刀との違いとしてまず挙げられるのが長さの違いです

 

脇差とは?

脇差とは、長い刀を本差しと呼ぶことの対とした短い刀の呼び名です
時代劇などに見られるように武士は大小2本の刀を腰に差しています。
これは江戸時代に発令された武家諸法度の第一次改正により決められたことで、武士の差料は大刀1本と小刀1本、小刀の長さは1尺から2尺未満とされました。
武家諸法度により小刀の需要が大きく伸びたのは言うまでもありません。
ちなみに小刀(しょうとう)と読む場合は脇差のことを指しますが小刀(こがたな)と読むと日常的に使う極めて小さな短刀や片刃のナイフの類を言います。

 

武家諸法度とは?

武家諸法度とは江戸時代、徳川家康が国を統一するために発令した武士や公家に向けた禁止事項のことです
発令当初は13カ条でしたが、さまざまな改案を経て3代将軍家光の時代に19カ条となりました。
その後8代将軍吉宗の時代まで改訂が続き、徳川幕府安泰の礎を築いていきます。

 

大脇差(長脇差)の流行

脇差はあくまでも本差しに対する補助であったため、刀という認識から除外され、帯刀を禁止されていた百姓や町人たちが所持することも許されました
脇差は一般庶民の護身用や力の誇示に大いに活躍し、大脇差という脇差の規格いっぱいの長さの打刀で諍いを繰り返す博徒や、理不尽な武士の上意討ちに刃向かう者も少なくありませんでした。
些細なことで無礼討ち、上意討ちされた庶民は命がけで理不尽と戦い、庶民の抵抗に遭い、傷ついた武士は不名誉を罰せられ士分の剥奪や家の没収という厳しい処分を受けました。
大脇差は武士の間にも流行し、二天一流の宮本武蔵や幕末の新撰組局長、近藤勇らに代表されます。

 

刀との違い

脇差と刀との定義上の違いは約60㎝を境い目とする長さの違いです
しかしながら、長脇差のように59㎝くらいのものもあれば、61㎝の刀も存在するので見た目で明確な分別はできません。
脇差と刀の、最もわかりやすく決定的な違いは鍔(つば)に施されている穴の数です
刀の鍔には小柄(こづか)と笄(こうがい)それぞれを通す穴が2つ開けられていますが、脇差の鍔には小柄を通す穴ひとつしかありません。

 

短刀との違い

脇差と短刀の違いも定義上は長さの違いですが、何よりの相違点は鍔があるかないかということです

鍔のあるものは本差、あるいは脇差、鍔のない日本刀で1尺(約30.3㎝)未満のすべてのものを短刀と言います
用途や長さによってさまざまな呼び名があり、刺刀(さしが)懐刀、腰刀、鞘巻や匕首などの呼称もあります。
稀に短刀の形状を保持していながら1尺を超えるものもあり寸延短刀(すんのびたんとう)と呼ばれています。

 

長さによる分類

脇差は尺貫法により、その長さに応じて3種に分類されます。

 大脇差(長脇差)
本差しすれすれの長さ1尺8寸~2尺(54.5~60.6㎝)未満の脇差を大脇差と言います。
小太刀と呼ばれることもありますが厳密には太刀と刀は形状が異なります。
新選組の土方歳三が堀川国広の大脇差を所有していたことは有名です。

② 中脇差
1尺3寸~1尺8寸(40~54.4㎝)未満の脇差は中脇差と言い、このサイズの脇差では石田三成の所有していた石田貞宗が有名です。
作者の貞宗は相州正宗の子、あるいは養子とも言われています。
関ヶ原の戦いにおいて、石田三成が脇差の石田貞宗と共に帯刀していた本差は石田正宗。
紆余曲折を経て現在は二帯そろって東京国立博物館所蔵となっています。

③ 小脇差
1尺から1尺3寸(30.3~40㎝)未満の脇差を小脇差と呼びます。
小脇差に分類される名刀として鎌倉時代の刀匠、藤四郎吉光作の鯰尾藤四郎(なまずおとうしろう)があります。
薙刀直しの脇差で、ふくらの形がふっくらと鯰に似ているとのことから命名されました。
現存し、徳川美術館に所蔵されています。

 

脇差と本差との価格比

日本刀の値段は時流に流されにくいとはいえ銘や保存状態によって大きく左右されます。
買取金額の情報は入手しにくいため売り手側の数少ない口コミによりますが、余程のことでもない限り購入金額を上回ることはありません。
総じて購入金額の60%~が買取相場と言われています
また、本差と脇差のセットの場合、本差の半分ほどの査定金額になるということです。

 

脇差をたのしむ

脇差は太刀や刀と同列の日本刀の一種であり、庶民にとってのお護りであり、ときに本差をしのぐ武器にもなりました
また、短刀より短いこともあり、その定義と所在はどこまでも曖昧でフレキシブルです。
日本刀の中でもっとも自由に作られたのが脇差とも言えます。
日本刀を所有し鑑賞したとき、長い刀一振だけでは物足らないと思う方が少なくないのも事実です。
日本刀一振ごとの素晴らしさを堪能することはもちろん、石田正宗、貞宗のように大小揃った姿を楽しむこともまた一興です。