日本刀は、制作された時代によって分類されます。同じ日本刀でも特徴や作刀された時代によって作風が異なるため、買取においても重要視されています。現在の日本刀が誕生したのは武家が台頭した平安後期とされており、現在まで絶えることなく伝えられてきました。ここでは、買取評価のポイントになる分類について触れていきます。
古刀期(平安時代後期~戦国時代)
平安時代後期になると武家が台頭したため、太刀の需要が増えました。原料である良質な砂鉄が取れる伯耆国や備前国、京の都のある山城国や機内の大和国で作刀され、数々の流派が誕生しています。この平安時代後期から戦国時代を古刀期と呼ばれており、アニメや漫画などの創作物に登場する伝説的な童子切安綱(安綱作)や小狐丸(三条宗近作)が作られました。
古刀期も大きくわけて4分類されており、794~1185年まで続いた平安、1185~1333年までの鎌倉、1333~1394年までの南北朝、1394~1573年までの室町、さらに武士が最も活躍した1573~1600年までの安土桃山時代に分けられます。平安末期に作刀されたものの特徴として鎬造りや庵棟、狭い身幅や小切先で反りが高くなっていることが挙げられます。元幅から先幅にかけて狭くなるなど、公家にふさわしい優美さを感じられるでしょう。
武家が政治の中心となった鎌倉時代になると、武家らしく一回り大きな切っ先へと変化するだけでなく、豪壮かつ華麗で実用性も供えた相州伝が普及しました。大太刀や野太刀など大振りなものが増えたのは戦乱が起きた南北朝であり、平和が訪れた室町以降になると優美な腰反りが知られている備前長船祐定などが制作されています。
さらにたくさんの刀工が活躍した戦国の世になると長時間戦闘のできる両手持ちの日本刀へと変化し、薙刀のようなスタイルを持つ長巻も作られました。
新刀・新々刀(江戸時代から明治)
戦国の世が終わり、徳川家による治世が始まった江戸時代には、戦国末期の刀工の手による日本刀が数多く作られました。とくに名刀と讃えられるものは初期に作られており「虎徹」で知られている長曽祢虎徹や「繁慶」で知られている野田繁慶、3つの胴体を重ねても切れる意味を持つ「三つ胴截断山野加右衛門六十八歳永久花押」を作刀した大和守安定、当代の最高峰とされる「津田越前守助広延宝七年二月日」の津田助広などが活躍しています。しかし、平和が長く続いたためか、江戸中期以降になると有名な刀工が、見られなくなりました。
新々刀は江戸末期から明治にかけて製作された日本刀を指します。江戸時代末期になると倒幕派が台頭し内戦の様相を呈したため、刀剣も盛んに作られました。実用性を重んじた作風が特徴になっており、平安から室町に盛んに制作された古刀を理想とする刀工が多数登場、とくに南北朝時代の古刀を理想とする祖水心子正秀が有名です。盛んになった復古調作刀のパイオニア的存在といってよいでしょう。
また、実用性を重んじた古刀を理想としながらも刃に荒沸でき(あらにえ)といった彫刻を施されたものや、備前伝や相州伝など異なる流派の特徴を併せ持った日本刀が生み出されています。黒船を代表する海外の圧力に対抗するかのように堂々としたスタイルをしており、幕末の世情を感じられるのも大きな特徴といえるでしょう。
現代刀(昭和から現代にかけて)
昭和以降に作られた日本刀を指して現代刀と呼びます。明治維新後に廃刀令が出されたため、刀工が極端に減少しました。しかし、日本最後の内戦である西南戦争で士族が使用した日本刀の威力に改めて関心が集まり、日本刀鍛錬伝習所や日本刀鍛錬会が設立され、刀工技術の再現と継承に力が注がれました。
この時期に盛んに作られた軍刀は、寒冷地での戦いでも折れないスウェーデン鋼と和鋼を合わせた刀身を採用するなど、科学技術を駆使した日本刀といっても過言ではありません。敗戦後はGHQによって刀剣所持や製作が禁止されましたが、伝統技術の保存や伝承に力を入れた刀工によって数々の名作が生み出されています。明治から大正期に活躍した月山貞一は当時の著名人や華族だけでなく、皇族の軍刀や守り刀に加えて恩寵刀などを鍛えており、現存するものは買取査定でも高くなります。
また高橋貞次や宮入行平、隅谷正峯、天田昭次人間国宝となり、いずれも伊勢神宮の式年遷宮の御神宝太刀に携わりました。とくに戦後以降に作刀された日本刀は美術品としての価値を重視している点が特徴です。
買取で最も取引されているのが現代刀であり、中には軍刀も扱われています。粗製濫造のイメージがある軍刀ですが、それらの多くが戦中末期に製作されたものであり、明治から戦中までに作られた軍刀の多くは実用性と適度な美麗さを与えられるなど品質も高く、現代刀同様に評価されています。
日本刀の買取では保存状態や携わった刀工だけでなく、制作された時代も重視されています。その違いによって作風に顕著な違いがあり、プロフェッショナルな買取査定の担当者であれば、すぐに見分けられます。もし手元に日本刀があるなら制作された時代にも関心を持ってみてはいかがでしょうか。