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公開日:2021/03/15  

日本刀の鋩子(ぼうし)種類は買取で重要!刀工の技量や流派がわかる


一見すると同じように見える日本刀ですが、実はさまざまな種類があります。いくつかある判断ポイントとの1つが、鋩子(ぼうし)です。聞き慣れない単語だと思いますが、これは日本刀の先端部分である切先の焼き刃であり、返りとも呼ばれています。本記事では、買取査定にも影響する日本刀の種類を見分ける鋩子について紹介していきます。

切先を補強する焼き入れによって生み出される鋩子

日本刀の切先部分は、戦闘において最も使用する部分であるため、刃こぼれしやすくなります。補強のため焼入れしなければなりませんが、その際に生じる刃文(焼刃)が鋩子です。日本刀を見るとわかりますが、この切先部分は極めて狭く小さいため、刀工の技量が顕著に現れるため買取でも重要視されています。

刃文の種類としては大きく分けて地蔵(じぞう)と焼結(やきつけ)、掃掛(はきかけ)と火焔(かえん)の4つがあります。

地蔵はリアス式海岸のように凹凸のある刃文が特徴になっており、その姿が地蔵に見えることからそう呼ばれるようになりました。

焼結は、刀身と切先が横手を超えて先端部分まで入り込み、そのまま棟で焼きが止まっています。極めて変化が少なく、刃先部分からあまり離れていない刃文が特徴です。

掃掛は、砂の上をほうきで掃いたように見えることからそう呼ばれるようになりました。刃先部分から横手を超えて切先に入り、見ようによっては日本庭園の枯山水のようなスタイルをしており、返しの掃掛の幅が広くなる傾向があります。

火焔は、一見するとは掃掛に似ていますが、切先にはっきりとした返りを持ちます。とくに切先にある返しが、炎が燃え上がっているように見えるため、そう呼ばれるようになりました。

これに加えて刀身から焼刃が切先でたるんだスタイルをしたたるみ、刀身の乱れ刃がそのまま切先内まで続いて焼かれているものを乱れ刃、先端が尖った形をしている尖り、切先内のほとんどすべてに焼きを入れたものを一枚と呼びます。

3種類ある鋩子の返りにも注目ポイント

鋩子にある返りも注目してほしいポイントです。横手を超えて切先に延びる刃文が、先端部分でUターンして折り返し棟部分に向かうため、そう呼ばれています。また業界では返りが棟へ向かうスタイルによって「反り深い」や「堅く止まる」といった表現が使われており、この返りの違いによって作刀された時代や流派、作風がわかることから買取で重視されます。

Uターン半径の小さなものを小丸と呼びます。小丸で有名なのが鎌倉時代中域から南北朝時代にかけて活動した山城派であり、来国俊や来国光で有名です。また江戸時代前半から末期にかけての新刀期で活躍した大坂政宗とも呼ばれる井上真改、越前守助広も小丸でした。

中丸は、全体的にバランスがよく上品さを感じられる特徴を持ちます。鎌倉時代末期から室町時代中期に活躍した大和五流派で最も盛んだった包永、山城国の来国俊や来国長、備前伝の助宗や則房で知られており、いずれも勇壮さの中に優美さを感じさせます。

大丸は、大きなUターンを描きながら棟へ向かって刃文が延びており、とくに鎌倉時代に活躍した志津三郎兼氏以降に流行しました。兼氏は、実用性と勇壮さを持つ相州伝に連なる独自の流派を形成、その弟子たちは大和伝と相州伝の特徴を併せ持った美濃伝を完成させています。この他にも山城国の来国行や二字国俊、美濃にとても近い尾張の政常らの日本刀に特徴的です。

鋩子の中でも一枚はとても特殊な存在

日本の長い歴史の中には、戦いが戦いを呼ぶ戦乱の時代もありましたが、この影響が鋩子にも現れます。最も顕著なのが、切先全体に焼きを入れている一枚です。焼きを入れることで切先を補強できますが、実際に戦闘が繰り広げられた戦国時代に作られた日本刀の多くが、一枚の特徴を持ちます。

数ある日本刀の中でも特殊といってよい存在であり、平安から戦国時代末期まで、戦乱が珍しくなかった時代に製作されたものに多く見られます。代表的な刀工としては、南北朝時代に活躍した越中国の江義弘です。鎌倉時代末期に相模国で活躍しさまざまな創作物で登場する「正宗」の生みの親である正宗の10名の弟子であり、銘入れをしていないため在銘作は皆無ですが、戦国時代の大名らはこぞって手に入れようとしました。

備前国の与三左衛門(祐定)や五郎左衛門尉清光(清光)も一枚の特徴を持つ日本刀を制作しています。祐定は室町時代末期の長船派を代表する刀工であり、末古刀の最上作とも評価されるほどです。

古刀期末期にあたる当時は戦乱が多かったため、大量生産された数打物も市場に出回りましたが、備前国で作刀された刀は、国内でも屈指の品質でした。その中心となったのが長船派であり、とくに祐定と清光が双璧として活躍しています。もし鋩子に一枚の特徴を持つ日本刀が手元にあるなら、買取でも有利になる可能性があります。

 

切先の刃文や返りの半径によって作刀された時代や流派、携わった刀工を推測できるため、買取でも重視されています。それぞれのスタイルには大きな違いがあり、勇壮さや優美さなどを感じられます。もし手元に日本刀があるなら、切先の鋩子にも注目してみてください。

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