未だに日本刀を所有する人はかなりの人数になりますが、手放すことを考える時には日本刀を取り扱う専門店に持ち込み、買取を依頼するのがベストです。
それというのも、何でも買取をするという店では、日本刀の本当の価値を見出すだけの目利きができないため、本来ならもっと高い価値があるものを二束三文で手放してしまう可能性があるからです。
日本刀はその出来栄えから格付けがされており、その格付けに見合った価値で買い取ってもらわないと、手放すにあたって悔いが残るでしょう。家族が所持していたものや、先祖代々伝わってきたものであれば、必ず日本刀取り扱い専門店に持っていくべきといっても過言ではありません。
日本刀の鑑定は格付けをもとに行われる
日本刀を作った刀鍛冶には、非常に切れ味が鋭く、それでいて刀身に美しい紋様を作り出す技術に秀でた名人が多数存在しました。これら著名な刀鍛冶が作る刀は業物、あるいは大業物と呼ばれ、非常に高価なことが特徴でした。そのため、ごく一部の限られた人しか持つことができず、また、業物と呼ばれる刀自体、そうそう作れるものではなかったことから、格付けの際の重要な要素になるのは間違いありません。
まず、鑑定するにあたっては対象の刀を格付けすることから始めます。格付けのランクは5つになり、上から順番に最高の出来栄えの最上大業物、次いで大業物、業物と続きます。並みのランクが準業物で、ほとんどの武士がこのランクの刀を所持していたと言われています。もっとも低い評価はなまくらで、これは包丁よりは切れるものの、上の4つに比べると切れ味ははるかに劣る物足りない切れ味の刀です。
今でも切れない包丁のことをなまくら包丁と称しますが、もともとは刀を格付けする言葉であり、包丁よりは切れる刀のことだったのが、刀が身近なものでなくなったことにより、本来の意味とは違う使い方がされているのは興味深いところです。とはいえ、言葉そのものが残っているところに、日本の刀文化が今でも続いていることを感じさせてくれます。
格付けから鑑定が行われるとどうなるか
鑑定される品は、なまくらを除くすべてといっていいでしょう。最上大業物と呼ばれるような刀は、優れた刀鍛冶でも一生のうちでそうそう作れるものではなく、作れずじまいということも珍しくないほどの素晴らしい刀です。そのため、鑑定結果が気になるのは、大業物や業物で鑑定書が付いているものになるでしょう。あるいは鞘書と呼ばれる証明書も判断材料として重視されます。
鑑定書が発行される要素は4階級に分かれており、上から順に特別重要刀剣、重要刀剣、そして特別保存と続き、最後が保存です。それぞれの階級でまず対象となる刀が異なることや、いつの時代に作られた物かによっても鑑定対象となる階級が変わってきます。
また、鑑定によって格付けされるものの、現在では日本刀は美術・骨とう品として取り扱われていることから、鑑賞に耐えうるかということが争点になってくるところも特徴です。つまり、最上大業物であり、特別重要刀剣の階級に該当するものであっても、美術品として鑑賞可能なレベルに修復することができなければ、価値があるとは認められないところが、美術品となった日本刀の現在の価値を測る判断基準となっています。
鑑定と格付けの両方に必要な要素とは
刀の鑑定には、刀がどのようなものなのかを示す格付けが大きな要素であることははっきりしましたが、より具体的に言うと、まずはその刀が本物かどうかという銘の真為の確認が重要です。どこの誰といった具合に鍛冶職人の名前を明らかにすることによって、その刀が本物であるかどうかはもちろん、値段にまで大きな影響をもたらすことになるほど、銘の真為は重要な要素となります。
ただ、在銘であったとしても、人気のある刀鍛冶の作る刀には贋作も多く作られたことから、真贋の確認が求められます。本当にその時代に作られたものなのかは、刀鍛冶それぞれが持つ作風に照らし合わせるなどして、在銘の確認が可能です。
また、無銘であっても刀にできる紋様によって時代や作者、さらには作られた国までが分かりますので、無銘でも高い価値を持った刀が見つかる可能性があります。柄の中に入った茎と呼ばれる部分には、作者や作られた国を特定する要素が盛り込まれていますので、鑑定の際には柄を外して茎をしっかりチェックされる要素の一つです。
刀身を収めた刀装にも順番があり、特別重要刀装から始まり、刀と同じように重要刀装から特別保存刀装、そしてもっとも低い保存刀装といった区別が行われます。普通に考えれば、刀身と刀装は同じ価値を持っているはずですので、このバランスも鑑定においては重視されます。
素人が見たのではその価値基準がはっきりしない日本刀であっても、真贋を見抜く目を持った人が見れば、どのランクに格付けすべきかがはっきりわかります。そのうえで、さらに詳しい鑑定が行われ、最終的にどのくらいの価値を持つ刀なのかが決まるという仕組みです。
もし、刀が見つかったときや、刀を手放したいと考えるのであれば、刀を専門に取り扱う専門店に持ち込み、買取価格がいくらになるかを聞くことが大事です。どのような根拠から買取価格が決まったのかをしっかりと伝えてくれる店であれば、安心して買い取ってもらえます。