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公開日:2021/05/01  

日本刀を保護するだけではなかった?拵の主な役割について!

日本刀の外装のことは拵(こしらえ)といわれ、鞘や茎を入れる柄、鍔などの部分すべてを指します。拵の役割は、日本刀を保護するだけではありません。柄や鞘の部分には日本刀を運べ、かつ見た目も洗練されるような工夫が施されています。この記事では、拵の主な役割や種類について解説していきましょう。興味のある人は参考にしてください。

拵の主な役割とは?

拵(こしらえ)には主に4つの役割があります。

刀身を保護する役割

拵の一番の役割ともいえるのが刀身の保護となります。鞘や柄に納まっていない日本刀は、いわゆる「剥き身」と呼ばれる状態です。そのまま置いておくと意図せず怪我をしてしまう可能性があるだけでなく、空気にさらされることで刀身が錆びてしまう原因にもなります。刀身を鞘におさめることで、怪我だけでなく刀身を保護することもできるのです。

実用性を高める役割

拵があることで日本刀の実用性は格段に高まります。たとえば、柄巻(つかまき)を例に挙げましょう。柄巻とは、柄に柄糸(つかいと)という組紐などが巻かれたものを指します。柄巻があることで柄の強度が高まるだけでなく、握りやすくする役割があるのです。拵の柄巻ひとつとっても、柄巻師という柄に装飾を施すプロが存在し、柄糸の素材や巻き方にさまざまな工夫がなされています。

所有者の嗜好を表す役割

日本刀は基本的にはすべて一点物です。いわゆるオーダーメイドで作られており、拵への装飾には発注した人の嗜好や想いが反映されていることもあります。経済的に余裕のある武士は、黒色で統一された登城用の拵だけでなく、日常用やよそ行き用といった拵えも持っていました。武士が個人の好みで作った、いわゆるプライベート用の拵は趣味性の高いものだといえます。

所有者の地位を示す役割

拵には所有者の地位を示す役割もあります。拵に施される装飾によっては、一部の権力者しか持つことが許されなかったものもあるのです。質素倹約が推奨された江戸時代には、江戸幕府が拵を派手に装飾することを禁じられました。そのため表面に朱色や金色を塗ったり、大きな鍔を付けたりできなくなったのです。しかし拵全体ではなく、一部だけを凝ったものにすることで威厳や地位を示すスタイルに移り変わりました。柄の縁頭(ふちがしら)や目貫(めぬき)、鍔などに工夫されるようになったのです。

拵の歴史

拵は、古いものでは古墳時代に神社の御神体として祀られていたものもあります。木でできており、赤色の漆塗りで宝石が付けられている鞘が弥生時代のころの出土品として出てきているものもあり、拵は非常に長い歴史のあるものです。

刀剣が使われる目的は、時代によっても変遷していきます。奈良時代から平安時代にかけては、公家が行う儀式のためであることがほとんどでした。儀式に用いる目的であることから、金や宝石で装飾した豪華な拵が多く見られます。

ところが、鎌倉時代にはいると、武士同士の争いが激しさを増していったのです。戦いの武器としての役割が求められるようになった刀剣の拵にも変化が起きました。金や宝石など豪華な装飾ではなく、黒の漆が塗られた実用性の高い拵が主流になったのです。

さらに、戦いの形式によっても拵は変化していきます。室町時代には、騎馬戦から徒歩戦へ移行しました。拵にもさらに実用性が求められるようになります。そして江戸時代には、拵の形式に規定が設けられるようになりました。拵の歴史は長く、彫金、漆塗り、組紐などの日本の伝統技術とともに、時代ごとに形式を変えて受け継がれてきたものだといえます。

拵の種類

拵といっても種類はさまざまあり、代表的な3つの種類について特徴を解説していきます。

太刀拵(たちこしらえ)

神社などで低調に保管され、国宝や重要文化財に指定されているものも多い日本刀です。豪華な装飾があるものが多い理由は、実用ではなく主に儀式のために作られているためでしょう。人が争いを始める前から制作されており、拵のなかでもとくに長い歴史があります。騎馬戦が盛んな頃は太刀が重宝されていましたが、歩兵戦になると打刀がメインに変わっていきました。そのため、太刀拵は実用品ではなく完全に儀式用のものとなったのです。飾太刀拵、毛抜形太刀拵、兵庫鎖太刀拵、糸巻太刀拵も太刀拵の一種とされています。

打刀拵(うちがたなこしらえ)

平安時代の末期ごろから鎌倉時代の初期に台頭した日本刀で、鞘は黒塗りが多いのが特徴です。太刀拵よりも安価で、帯にさすことで簡単に固定できること、戦場で槍を使うときにも邪魔にならないことから、武士に重宝されてきました。安土桃山時代には厳格な規定もなく、身分の高い人は自由に装飾できたため、拵の装飾の黄金期ともいえる時代です。肥後拵、天正拵、薩摩拵も打刀拵の一種といえるでしょう。

腰刀拵(こしがたなこしらえ)

腰刀拵は寸法の短い拵です。太刀の差添えとして用いられた腰刀は、接近戦や自害のために使われてきた歴史があります。短い拵でありながらも、品格があるものが多いようです。

 

拵には長い歴史がありますが、見た目の華やかさや実用性と、時代や人々のニーズによって変化をとげてきました。ただ日本刀を保護するという役割だけではなく、拵の歴史やどのような思いで作られたのかに思いを巡らせることで、日本刀により愛着を感じられるはずです。

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