御物とは、貴人の持ち物という意味も含まれています。刀剣、絵画、書跡がこれに含まれます。有名なものとして正倉院の美術工芸品、足利義政の茶道具、徳川家の柳営御物などがあります。今回の記事では、現在御物となっている刀剣を紹介します。御物について興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
そもそも御物とは
貴人の持ち物という意味も含まれているため、持ち主によって変わります。茶道具、絵画、壺、刀剣などがこれにあたります。
時代による御物の対象者の変化
奈良県にある正倉院では、壺や絵画などの美術工芸品が数多く納められていますが、現在も変わらずそこに保管されています。江戸時代の将軍である徳川家の御物もあります。有名なものとしてよく挙げられるのが、足利義政の茶道具です。足利義政は、茶道に精通しており、茶室を設けたことでも有名です。東山御物とよばれています。現在の銀閣寺は東山殿とよばれていたため、このようによばれていました。
明治時代から昭和時代にかけての御物
現在は、宮内庁が管理している皇室の私有品のことを指すようになっています。これまで管理していた場所は、東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館です。1945年に終戦を迎えた後は、正倉院の美術工芸品などが国有財産となりました。
昭和天皇崩御後の御物
国有財産となっています。なお、三種の神器や日本刀などの品々は、国庫の帰属から除外されています。
歴代天皇の御物
絵画、書跡、刀剣などが御物とされています。
現皇室御物
菊御作、壺切御剣、鬼丸国綱、一期一振、小烏丸、鶯丸、鶴丸国永、平野藤四郎、会津正宗、十万束、則宗、三条小鍛治宗近、道誉一文字となっています。
旧皇室御物
1989年にこれまでとは違い国庫に移されるようになりました。それが、若狭正宗、京極正宗、浮田志津、長船光忠、正家、行光となっています。
元皇室御物
現在は、東京国立博物館に移管されています。1947年に移管されました。吉房、上杉太刀、真長、北条太刀、獅子王、光忠、薙刀長光、国宗、雲生、長義、青江吉次、一文字、水龍剣、主水正正清、毛利藤四郎、定利、二字国俊、来国光、包永、大和則長、藤原正弘、延房、薙刀景光、兼光、雲生、光忠、吉包、小竜景光、岡田切、助真となっています。
御物とされている刀剣一覧
日本屈指の名刀として有名なものがあります。歴史とともに振り返ってみましょう。
小烏丸
奈良時代後期から平安時代初期に作られたものです。桓武天皇が小烏丸と名付けたとされています。平安時代中期の承平天慶の乱を鎮めた平貞盛が朱雀天皇から授けられ、それ以降平家の宝物として伝承されることとなりました。壇ノ浦の戦いで平家が滅亡すると、小烏丸の行方が分からなくなりましたが、江戸時代に伊勢家で保管されていたことが明らかになりました。その後、明治天皇へと献上されたことが明らかになっています。鑑定した結果の区分は御物となっています。また、刃の長さは63cmあります。平貞盛から明治天皇へと伝来し、現在は東京国立博物館で所蔵されています。
鶯丸
平安時代に作られたものです。力強さと華やかさの両方を兼ね備えている刀剣として有名です。1439年、小笠原政康は足利義教から手柄として鶯丸を授かりました。明治時代に入るまでは、鶯丸は小笠原家の家宝として大切に保管されるようになります。その後、1908年に明治天皇が大日本帝国陸軍の陸軍大演習の後に立ち寄ったところで献上されました。鑑定した結果の区分は御物となっています。刃の長さは81.8cmあります。足利家から小笠原家へ、小笠原家から明治天皇へと伝来しました。
鶴丸国永
平安時代中期に作られたものです。五条国永によって作られたとされていますが、五条国永の詳細は分かっていません。鶴丸国永は、鎌倉幕府の御家人の1人である安達泰盛が所持していました。ただし、平安時代中期に作られた刀剣が、どのようにして安達家に伝来したのかは分かっていません。しかし、1285年の霜月騒動で安達家が滅亡しました。一緒に安達泰盛の墓に葬られましたが、そのことを知った北条貞時は、安達泰盛の墓を暴き、鶴丸国永を自分のものにしたといわれています。
当時は、鶴丸国永を巡って争奪戦が起きていたこともあり、人気の高さが伺えます。その後、織田信長、伊達家へと伝来してから明治天皇に献上されました。銘は国永、鑑定した結果の区分は御物となっています。刃の長さは78.6cmあります。織田信長から藤森神社へ、藤森神社から伊達家へ、伊達家から明治天皇へと伝来し、現在は宮内庁で所蔵されています。
まとめ
当時の権力者たちの私有品ということもあり、刀剣にまつわるエピソードは興味深いものがあります。当時は刀剣が権力の象徴でもあり、家宝として大切に保管されていました。奈良時代や平安時代に作られた刀剣が、さまざまな人に伝来して、いくつもの時代を超えて現在所蔵されていることは、大変感慨深いものがあります。皇室の御物には、宮中の儀式に欠くことができないものも保管されているので、歴史と刀剣に興味がある人は、インターネットや書籍などで調べてみてください。また、史跡を研修してみるのも当時の歴史を振り返るうえで楽しめるでしょう。