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公開日:2020/03/01  

日本刀の製法とは?

日本刀の人気は世界的に非常に高く、多くの人が買取店を利用しています。どのような刀かによっても買取価格が変わりますが、刀のことをもっと知りたいと感じたなら、その製法についても知っておくと良いでしょう。

伝統美術品である日本刀は、刀鍛冶がたくさんの工程を経て持てる技を駆使し、あの美しさを生み出します。

玉鋼の製造からすべてがはじまり

刀の素材は玉鋼と言われる炭素量1~1.5%の鋼です。これを生み出す日本古来の製鉄法がたたら製鉄であり、砂鉄から木炭を使って生み出す奇跡の技術と言われています。不純物元素の含有量がこれほどまでに低い鉄鋼材料は世界でも稀であり「極めて純粋な素材」と世界的にも評価されているほどです。

現在ではたたら操業を担うのは日本で唯一、奥出雲町「日刀保(にっとうほ)たたら」のみであり、そこで作られた玉鋼が全国の刀匠へ向けて頒布されています。日本刀と呼べるのは、松の炭と出雲地方の砂鉄から作られたこの玉鋼で作られたものだけですので、まずはそれを心にとめておきましょう。

たたらというのは大規模な精錬場で、時間をかけて砂鉄を溶かし、現在では年に数回のみ貴重な鋼を生み出しています。最初は大きな鉄塊ですが、砕いて上質な鋼を選別し玉鋼を集めます。

炭素の含有量でランク分けし、分類をしたら再加熱して「へし金」という板を作ります。へし金は何枚も平らな板の上に積み重ねて和紙で巻いて水粘土と稲藁の灰をつけて1300℃で加熱したのち、ハンマーで叩いて圧着します。この工程で不純物を取り除きつつ鍛錬し、玉鋼はより強靭、より精錬された金属に変化していくのです。

折り返して繰り返し加熱し、何度も何度も鍛造する折り返し鍛錬は日本刀を作る中でもっとも重要な工程と言われています。この折り返し鍛錬なくして硬く粘り強い玉鋼は作れず、この地金なくして日本刀は作れません。

刃金と皮金をあわせて鍛造

折り返し鍛錬を8~20回繰り返し、ようやく徐々に日本刀の形になっていきます。刀の刃になるのが刃金、峰になるのが皮金と言いますが、刃金と皮金をあわせて鍛造することで基礎を作りこんで行くのが大きな特徴です。

ただ宗派によっては2つではなく4つの刃金を組み合わせる手法などもあり、それぞれの刀匠が秘術として来ました。刃金と皮金を合わせてからも何度も加熱し、何度も鍛造がおこなわれますが、組み合わされた玉鋼がいつしか一つの玉鋼へ変化することで、強く美しい刀身が生まれるのです。今となってはすでにどのようにして作られたのかわからない製法もたくさんあり、作り込み製法が現在すでに失われてしまった刀の多くが、重要文化財や国宝として遺されています

鍛接が終わったら刀の形を作り込みますが、刀工は仕上がりの形を読んで焼き入れし、ハンマーや小槌などの道具を駆使して叩きに叩き、細部に渡るまで細かい調整を続けます。ようやく刀らしい形になるのがこのあたりからですが、まだ反りはなく直刀です。

この段階で火造りと呼ばれる切っ先の作り込み工程に移ります。切っ先はご存じのとおり斜めに切り出していますが、どちらかというと峰側に伸ばすことで刃金を均一に使い、頑丈な切っ先を作るのが特徴でしょう。ここで刀らしいフォルムが形作られ、いよいよ荒仕上げへと移ります。

焼き入れで刀に命を吹き込む

荒仕上げでは刀身にヤスリや砥石をかけて美しいフォルムに整え、表面をなめらかにする程度まで仕上げます。その後、魂を吹き込む焼き入れ工程へと移りますが、その前に土置きという重要な工程を忘れてはいけません。

土置きは刀身を焼き入れ用の土で覆うことなのですが、なぜそんなことをするかは複雑な理由があります。デザイン的に重要なのは「刃紋」を出すという理由で、刃と峰の冷却速度に差を出すために刃側を薄く、峯側を厚く土盛りして、冷える速度を変えることが知られています。

焼き入れは最重要の工程であり、800℃ほどに刀身を熱し、水に入れて急冷することで組織変化をうながす工程です。鋼はこの工程で強固に変化し、ここではじめて刃の機能を持つことになります。

先ほどまで直刀であった刀身にも反りが生まれ、刃紋が現れ、見る間に別のものに生まれ変わるほどにその姿を変える劇的な段階と言えるでしょう。刀匠にとって非常に難しい段階であり、温度管理をシビアにおこなうため、夜の暗闇の中で鋼の色だけを見つめながらひたすらに魂を注ぎ込むことを繰り返します。

厳しい工程を終えたあとは、刀の名前を中子に刻み「銘切り」をおこないます。年号と銘を刻む行為ですが、銘は宗派の名と刀工の名を組み合わせたものとなるのが慣例です。

刀として仕上げるためには、このあとに専門の研ぎ師の手に渡りますが、刀匠は銘を切った段階で命をつぎ込み終えたと言えるでしょう。その後、はばきやせっぱ、鍔などの金具をつくる専門職人「白銀師」が腕を奮い、専門の鞘師が鞘を作り、ようやく日本刀として完成を見るのです。

 

日本刀は、原料となる玉鋼をたたら操業により製造するところからすべてがはじまります。粘り強く不純物をほとんど含まない玉鋼を刀工が何種類も合わせて全身全霊で打ち、焼き入れをすることではじめて刀として生まれ変わります。

宗派によって秘術とされる技もあり、現在重要文化財や国宝として遺された刀の中には、すでにどのようにして作られたか製法がわからないものも多数あります。現在技術を受け継ぐ人が少なくなっていますが、世界に誇れる日本の素晴らしい伝統技術は、これからも守るべき使命があると言えるでしょう。

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