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公開日:2022/05/01  

時代劇がもっと面白くなる?日本刀にまつわるルールや豆知識


日本刀の知識が深まって歴史が好きになると、映画やテレビの時代劇にも興味を持つのではないでしょうか。とくに、刀の名士と呼ばれた人の話なら、「あの役者が演じるあの武士は、あの日本刀を持っていたはず」「あの日本刀で殺陣(たて:闘争の演技)をするところがぜひ見たい」と思うはず。本記事では、時代劇の注目ポイントをお伝えします。

将軍の横で控えている小姓の役割

時代劇を見ていて、将軍(大名)の後ろに座って日本刀を持っている若者が気になったことはないでしょうか。あの若者は一体何者なのでしょうか。答えは、将軍や大名の身辺で雑用を行なう「小姓」(こしょう)という役職の人物です。室町時代に将軍に近従した者を「小姓衆」と呼び、以後、役職となったといわれています。

この小姓には、主に人質に取った大名の子弟が選ばれました。そのため、若年者が多かったのが特徴です。有名なところでいうと、織田信長の小姓である森蘭丸や前田利家、豊臣秀吉の小姓である石田三成、上杉謙信の小姓だった直江兼続などが挙げられるでしょう。

小姓は、将軍(大名)の左側(向かって右)で正座し、日本刀を持ちます。持ち方として平時には、刀の柄を上にして右手で持ち、刃を自分に向けます。さらに「鐺」(こじり:鞘の末端部分)に「袱紗」(ふくさ:貴重品を包む布)を敷いて垂直に立てるのです。重い刀を正しい姿勢で持ち続けるのは、とても重労働で大変な仕事だったといわれています。

武士たちが雨の日に徹底したルールとは

時代劇でもよくある、何気ない「雨」のシーン。雨のシーンは、刀剣ファンならば要注目の場面です。現代ではタブーではないので見過ごされがちですが、武士ならば絶対にしないことがたくさんあります。それでは、雨の日に武士が絶対にしないこととは何でしょうか。

それは、雨の中を「小走り」すること、軒下に入って「雨宿り」をすること、他人の傘に入れてもらい「相合傘」をすることです。これらは武士の教育にない、してはいけないこととされていました。たとえ突然雨が降ってきたとしても小走りはせず、普段と変わりないように悠々と雨に濡れて歩くのが武士の鉄則。武士たる者、雨ごときにうろたえてはいけない、と教えられていたのです。

しかし、自分はよくとも刀の柄だけは雨に濡れないように守る必要がありました。その理由は、柄を濡らすと柄を握ったときに滑って感触が悪くなるからです。柄が雨に濡れていると、非常事態が起きたときに思わぬアクシデントを招く可能性がある、というのは想像に難くないのではないでしょうか。

また、柄に鮫革が巻いてある場合、雨に濡れると水分を吸って、ふやけてやわらかくなってしまいます。鮫革は乾燥しているときは、とても硬くて切れませんが、濡れるとやわらかくなり刃物で簡単に切れてしまうのです。それを防ぐためにも、柄だけは濡らさないようにしなければなりませんでした。

したがって、雨が降ってきたら武士は、小走りや雨宿りをせず、持っている「手ぬぐい」で柄を巻くか「左袖の袂」で柄を覆い、柄が雨に濡れるのを防いでいました。

日本刀を他家に持ち込む際の作法

時代劇で、日本刀を室内に持ち込む武士の中にも、刀を指したまま座っている武士と、刀を置いている武士がいます。「作法」としては一体どちらが正しいのでしょうか?

答えは、刀を置いている武士です。他家を訪問した場合は、履物を脱ぐ前に必ず帯刀していた刀を抜き取り「下緒」(さげお:鞘に装着して用いる紐)をさばいて三つ折にし、右手に刀を持ってそのまま客間か案内される部屋へと進みます。刀を手持ちすることを、正式には「提刀」(さげとう)といいます。

そして着座するときには、刀を自分の右側、膝のあたりに鐔(つば)がくるように置くのです。このとき、刃を自分に向け「栗形」(くりかた:下緒を通す突起物)が下になるように置くのが礼儀。この行為により、敵対する意志がないことを示すことができます。

なお、刀を抜き取った後、左手に提げて持つのは、絶対にしてはいけない所作です。刀を左手に持てば「右手ですぐに抜いて斬るぞ」という意味になり、害心があって侵入したと思われて、取り押さえられる事態になりかねません。

実際の戦闘はもっと生々しい?

時代劇の戦のシーンでは刀で戦っているシーンが多く見られますが、実はテレビの時代劇での戦のシーンと実際の戦い方は大きく異なっていたようです。江戸時代以前の戦乱では、実は刀はあまり有効な武器ではなかったのです。甲冑を着ているので刀では敵に太刀打ちできず、遠距離では弓、鉄砲を用い、近距離ではリーチが長く、突くことにも叩くことにも適している槍が主に使われていました。

甲冑は防御力が非常に高く、刃物に対しては充分な耐久性があるうえ、また、たとえ弓矢が刺さっても甲冑と生身の間にはすき間があって致命傷にはならないそうです。近距離戦で槍が使えなくなったときに刀を抜いて戦いますが、斬るというよりは叩いたり、甲冑のすき間を狙って突いたりして戦っていました。あとは取っ組み合いになり、相手を羽交い絞めにして刀でとどめを刺し、首をはねました。

戦での戦いぶりは弓や鉄砲での撃ち合い、槍や刀での突き合い、叩き合い、取っ組み合いで、とても斬り合いと呼べるものではなかったようです。そのため実際のところ、時代劇の殺陣(たて:闘争の演技)のような次々に敵を切り倒していく戦闘はなかったといえるでしょう。残念なことにフィクションではありますが、殺陣の演技は時代劇の花形。史実通りではなくとも、それはそれとして楽しむことをおすすめします。

まとめ

ここまで、時代劇をもっと面白く見るための、日本刀に関するルールや時代劇の豆知識をお伝えしました。時代劇は、できるだけ史実通りの姿を再現しようとしています。そのため、雨のシーンや刀の扱いに注目して見ることでより楽しく時代劇を鑑賞することができるでしょう。ぜひ武士や日本刀の知識から江戸時代の日常を知り、さらに深く時代劇を読み込んでみてください。

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