日本刀にはさまざまな種類があり、その価値については各関連組織団体が評価をつけています。買取に出す際には、そうした組織団体のお墨付きがあれば信頼性が高くなりますが、よくよく見ると認定書ではなく鑑定書がついている場合があります。
どちらも刀剣類の価値を認める内容の書面ですが、この2つには何の違いがあるのでしょうか。
認定書では認められないケースもある
刀剣類の鑑定においては「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」が一番権威を持つ団体と言えるでしょう。鑑定書を発行している機関はいくつかあり、中には個人も存在しますが、やはり協会の発行する鑑定書の有無が信頼性を左右する重要なポイントとなります。
日本美術刀剣保存協会が発足したのは昭和23年で、文部大臣の認可を受けて設立されました。現在に至るまで刀剣類だけでなく、刀装具を審査鑑定し、所在を明確にするため台帳管理をおこなうなど保存のための活動をおこなっています。
同時に刀剣博物館での展示などもおこない、文化として美術品として刀剣全般をサポートする鑑定元です。買取店は多くありますが、同協会のお墨付きであれば、まず間違いなく正しい価格で評価してくれるでしょう。
ただ1点気になるのが、同協会の発行していた認定書についてです。『発行していた』と過去形で表現したのは、認定書が発行されていたのが昭和25年から昭和57年までの間のことだからです。
こちらの認定書制度は現在では廃止されていて、現在の鑑定書制度へと完全に移行しています。こうした変化は鑑定の技術の進歩に伴うものであり、以前の鑑定方法では判断し得なかったことも、現在では判るようになったことが関係しています。
従って、以前の認定書がついている刀剣類でも、現在あらためて鑑定をおこなうと価値が認められないというケースもあります。そうしたことから、例え認定書がついていても、鑑定書がついていないと取り扱うことができない場合もあり、売却に響く結果になることもあるのです。
過去に発行されていた認定書について解説
認定書は、日本美術刀剣保存協会が過去に発行していた正式な鑑定書です。現在の制度とは異なり、現在のほうがより厳しい査定になっているため、残念ながら認定書では効力が薄い点があるのは否めません。
当時の認定書は、貴重刀剣(刀装刀装具)・特別貴重刀剣(刀装刀装具)・甲種特別貴重刀剣(刀装刀装具)の3種類に分類されていました。位付は一番低いものが貴重刀剣、次いで特別貴重刀剣、一番評価が高いのが甲種特別貴重刀剣となっています。
刀剣類をランク付けする制度は現在も同じですが、現在は4つのランクになっており、当時の貴重刀剣は現在の保存刀剣ランク、特別貴重刀剣はそこから特別保存刀剣のランクが該当するでしょう。甲種特別貴重刀剣は現在では特別重要刀剣に相当し、非常に価値の高い刀剣と言えます。
諸所の事情はあれ、新しい認定制度が導入され、現在では過去の評価は制定され直されています。新しい証書は審査の合格基準が厳しく、 既に認定された刀剣であってもあらためて審査に出したら合格に至らなかったという事例も多数見受けられます。
こうした流れを知らずに買取店に刀剣類を売却しようとすると、想定とは程遠い低価格を提示されて驚いたり、まさか値が付かないという事態に予想を裏切られたりするかもしれません。もちろん良いものは変わらず高い評価を受けますし、場合によっては評価が上がる可能性もなくはありません。
前の制度から相場が大きく変動しているのは事実ですので、もし売却を検討するのであれば、あらためて現在の鑑定を取得するほうが賢明でしょう。
鑑定書は重要な役割を果たしている
刀剣類は、基本的に銃砲刀剣類登録証がついていれば誰でも所持することができますし、売買することも譲渡することも自由です。所有者がどこの誰かは教育委員会に届け出る必要がありますが、所有することに免許や資格が必要なわけではなく、美術品や骨とう品と同じように、誰でも愛で楽しむことができます。
鑑定されていなければ売却できないというわけでもなく、鑑定に関する書類がなくても買い取りをおこなっている店舗は少なくありません。もっとも店主や店員が鑑定人となって値をつけるわけですから、過去に鑑定がされていようがいなかろうが、そこで相応の値段が提示されることに違いはないでしょう。
ではなぜわざわざ鑑定をおこない書面を発行する必要があるかというと、例えばオークションにかける場合や遺産相続をおこなう際に一番有効だからです。所有者本人が納得しているだけなら良いですが、場合によっては第三者の評価が必要される局面もあるでしょう。
特に名のある刀匠の手によるものや銘の打たれたものであれば、鑑定書の有無によって価値は大きく変動することになります。無銘であっても時代が南北朝期以前であれば、古名刀として高い価値を有する場合もあります。
歴史的価値のあるものもありますし、今日の進歩した鑑定技術や膨大なデータに基づき、専門機関で正しい判定をおこなうことには、やはり意義があるのです。国宝制度が創設され、優れた刀剣が美術品と同様の価値を持ち、現在では国宝や重要文化財として指定されるに至りました。
現在国宝とされている刀は約110点、重要文化財は約650点あります。平安末期から鍛造されて来た刀剣類は、明治初期には500万本あったとされています。現存する刀剣数は非常に少なく、その中でも美術品として鑑賞に耐え得るものは本当に微々たるものでしょう。
もちろん国の指定を受けるほどの刀剣は数あるわけではありませんが、その価値を認め、後世に遺し伝えるために、鑑定書は重要な役割を果たしているのです。
日本刀の価値を示す公益財団法人 日本美術刀剣保存協会発行の評価書面には、認定と鑑定の2種類があります。どちらも同協会の発行したものに違いはありませんが、過去制度である認定書の効力は、現在ではより薄くなっているのは事実です。鑑定技術の進歩もあり、過去の認定が現在もそのまま認められるとは限りません。
必ずしも売却できないというわけではありませんが、正しい価値を知るためには現行の鑑定を受けることをおすすめします。