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公開日:2020/08/15  

切羽詰まるの語源「切羽」とは

日本独自の言葉の文化である諺の多くは、明治以前の時代背景によって生まれたのが多数あります。その中でも「切羽詰まる」とは武士用語であり、この言葉の由来になっているのは刀のある一部分が関係しています。この記事ではどんな場面で使い現在の伝わっているのか、その詳細を紹介していきます。

切羽とは鞘と刀を固定するための金具

切羽詰まるの語源になっている、切羽というのは鞘と刀を固定するための金具のことです。刀は不純物を取り除いた玉鋼で作っているので、基本的に錆や汚れに強いという性質を持ちます。ただ、むき出しのままだと、さすがに酸素による酸化やほこりなどの影響を受けてしまい刀の品質が落ちてしまいます。

そこで酸化やほこりからの影響を最小限に食い止めるのと、むき出しのままで相手に敵意がないことを伝えるのと自身が傷つかないために鞘が存在しているのです。ただ鞘はあくまで入れ物なので、刀を入れても固定できないです。

そこで切羽が必要になり、これはる部分の刃と取っ手部分の中間に取り付ける金具であり、鞘に納めたときに空間を生まないようにします。鞘と刀に空間を生まないようにしたら、切羽には糸を通す穴が開いているので糸を通します。その糸で固定することによって、鞘から刀が出ずに安全に持ち歩きが可能になるのです。そしていざ使うときが来たら、その糸を通した穴から刀を出して見守ることで使います。

江戸以前ではピンチの場面で使う

実は切羽詰まるという言葉というのは、江戸以前と江戸以降で全く意味合いが異なるようになった面白い言葉です。江戸以前の切羽詰まるの場合は、所有主にとって最大のピンチになったときに使う言葉になります。

江戸時代は戦国時代と言われ、各地方同士が領地の各段を目的に内乱を起こしあった時代です。そのため刀は重要な武器であり、常に手入れをして戦争が起きたときにすぐに使えるようにしています。

ただ何度も言うように、切羽の役割は刀を鞘に納めるために固定するために存在する部分です。そのため持ち歩いたときに外に出ないように、あえてあけられている穴部分に糸を通して固定をします。しかし戦国武将の中には、本来身を守るために簡単な固定で良いはずが誤って厳重に固定してしまう場合が多いのです。

そして厳重に固定をしていることを忘れて戦場に向かった結果として、自身の周りに敵がいるのに厳重に固定してしまったときに固まってしまって取り出せないという自体になってしまいます。これが江戸以前での語源であり、現在でも多く使われる意味として認知しているピンチの場面を想定して使われていたのです。

江戸以降では歌舞伎用語になった

江戸以前ではピンチの場面で使う機会が多かった言葉ですが、戦乱の世の中が終わった江戸後期になると新たな意味合いとして解釈されます。江戸後期になると戦乱の世の中が終わり、刀を使う風習は少なくなりピンチの場面で使うことは少なくなります。その代りに、この言葉が使われるようになったのが歌舞伎といった芸事のときに使われるようになったのです。

戦乱の時代に起きていたさまざまな出来事は、その後伝書という形でまとめられることで後世に残されます。ただ文面だけでは情景がわかりにくいということもあり、そこで舞台で舞うことが仕事の歌舞伎の世界で新しく表現されなおしたのです。それはこれまでの使い方は、何度も言うように安全のために糸を厳重に巻きつけた結果肝心なときに厳重にしたことがあだとなって使えなくなることを意味しています。

しかし歌舞伎の世界では、厳重に巻きつけたことを別の解釈として使うことになったのです。それは人情という要素であり、戦国の世の中でも人の心を忘れていない武士が、襲ってくる相手に対して情けをかけるという意味合いになります。

襲ってくる相手にも家族など大切な人たちが存在するので、自身が有利な立場になっていてもさやから刀を出しづらい雰囲気を出すことで切ろうとしている人間の心情を分かりやすく表現する手法として用いられます。このように時代背景によって、言葉は2つの情景を表す言葉として使われるのです。

 

何度も言うように日本の諺の多くは、時代背景によって生まれた言葉がたくさんあります。それは言葉として残しておくことによって、情景を分かりやすくし対処しやすくするためです。切羽というのは鞘から刀が出ないように、意図で固定できるようにするための金具です。安全に持ち運ぶために必須とはいえ、慎重すぎて厳重に巻きつけてしまうといざというときに使えずピンチを招いてしまいます。

現在にも伝わるこの言葉は、大半の認識ではその意味通りに使われることが多いです。しかし戦乱の世の中が終わったら戦場で使う機会がなくなったので、後世に残すために芸に取り込まれるなどさまざまな手法で残されることになります。このように諺の中には単体の意味ではなく複数の意味合いを持つ言葉がありますが、それは先人の知恵を後世に残すための知恵と考えられるのです。

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