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公開日:2020/06/01  

日本刀の「名物」って何のこと?

日本の骨董品において、国内外で最大の人気を誇るのが武士の象徴「日本刀」です。戦国時代において武力の象徴ともいえる日本刀は、各地にたたら場などの専用の製作場によって数多く生み出されています。そんな数多く生み出された日本刀には特別製が存在し、その特別製のことを名物と言います。

元々名物は茶道で用いられた言葉

日本刀で用いられる名物という言葉は、元々は茶道で使われたことが始まりの言葉です。現在のまれているお茶の始まりは、平安時代以前に中国に派遣された師団が貿易品と引き換えに持ち込んだのが始まりになります。

その後お茶は上流階級の間で爆発的にヒットし、おいしいお茶を飲ませる人物は宮殿で専用の茶室を用意されるなど厚遇を受けたのです。お茶が爆発的にヒットしたことにより、さらにおいしく飲むための方法としてお茶の品質だけでなく抽出や飲むための道具にも吟味するようになります。

そのお茶の抽出や飲むための道具を専門に作る職人が、自身が作成したものの中で最高品質になったものを天皇とその近い上流階級に卸したのが定着したのです。

見た目と性能が合致している状態を意味する

元々名物とは茶道の世界で使われたのが初ですが、その後この言葉はいろいろな形で使われるようになります。その中の一つが、平安時代以降で戦争の道具となり、武士の魂の象徴として扱われるようになる日本刀です。

そして名物といわれる特徴として挙げられるのが、鞘から出してろうそくや日光に当てたときに輝いて見える程に見た目が良いことが第1の条件です。日本刀は人を含めたものを切るための道具なので、畳を丸めたものなど試し切りをしたときに軽い力でも抵抗がなく一回で切り終えられる性能を持つのです。

これらの条件を満たした日本刀が名物といわれ、天皇家だけでなく各地の有名な戦国武将に高値で取引されるなどこよなく愛されることになるのです。

さまざまな好条件を満たさないと名乗れない

日本刀の世界において名物と名刀が混合される場合がありますが、この2つは全くではないのですが別の意味を持ちます。一般的に名刀といわれる業物は、正宗シリーズやムラマサシリーズなど名工が作った刀や槍などの道具を意味するのです。知名度も高く名刀といわれて差支えのないものなのですが、ただ名刀はあくまで名工が作った作品の一種ということになります。

正宗シリーズやムラマサシリーズ―は、刀だけでなく槍や弓などさまざまな道具に名付けられています。要はこれらのシリーズものというのは、その関係者が作ったことで名付けられるだけなのです。その点、名物とはそのシリーズ物を作った職人が作ったものの中でも最高品質のものを意味します。

今一度作り方をおさらいすると、鉱山から鉄などの上質な鉱物を選別して収穫しそれをたたら場と呼ばれる工房に運ぶのです。そこでは大型の炉が存在しており、その炉が鉱物を溶かすのに最高の温度になるように人力で風を送り続けて1000度以上の火を作ります。

そこに鉄と鋼そして炭素系の鉱物を大量に入れて、この1000度の温度で溶かして融合させることで素材となる玉鋼を作るのです。上質な玉鋼ができたら、それを刀を作る工房に持っていき、そこで玉鋼を成型するために再び1000度以上の炉の中に入れて柔らかくします。職人の目で最適な高度になったことが確認できたら、一度取り出して不純物を取り除くために専用のハンマーでたたき続けるのです。

この工程を何度も繰り返して、玉鋼に残っている不純物を取り除けたら再び炉の中に入れて柔らかくし刀の形にします。そして刀の形にしたら研ぎ石で切れ味を作り、最後に取っ手部分などさまざまな道具を装着して出来上がりです。

日本刀の作り方をおさらいしたところで、名物というのはこれらの工程のすべてが好条件で進まないとなし得ないものということになります。例えば最初の鉱物において採取された鉱物の品質が上質でないと、どんなに最高の職人が政策をおこなっても見た目と性能が伴わないです。

そして玉鋼を作る工程においても、日本には四季という言葉があるように季節によって全く温度と湿度が違います。温度と湿度というのは刀づくりにおいて最も重要な気象条件であり、これらの条件によって出来上がった品質にも大きく影響を与えます。

実際に刀の形にする職人も、先に言った温度や湿度だけでなく体調面も作品に影響を与えるのです。これらのすべての条件が偶然噛み合わないと、名刀の中から名物は誕生しないので貴重といわれる所以になります。

 

名物とは元々は茶道の世界で使われた言葉であり、お茶の品質だけでなくお茶を飲むために使う道具の中でも天皇家などの上流階級に卸す際に問題ない品質を献上することを意味します。

その後この言葉はさまざまな形で使われるのですが、戦国時代においては日本刀で見た目と性能が合致した最高品質に名付けられる言葉になっているのです。当然ながら見た目と切れ味が最高品質なので、さびや汚れがなければ同じシリーズの製品であっても買取においての値段設定はかなりの違う値段が提示されます。

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