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公開日:2020/04/01  

正宗の名作、短刀無銘正宗について解説

正宗は相州伝と呼ばれる独自の作風を作り上げて日本刀の世界に新しい風を送り込んだことで知られています。日本でも多くの人から認知されている刀工で、数多くの名刀が現在にも残されています。現代の刀工からも憧れの作品が多く、短刀無銘正宗はその中でも知名度が高いものです。

そもそも正宗とはどんな刀工なのか

短刀無銘正宗の位置付けを理解するうえでは正宗とはどんな刀工かを理解するのが重要になります。正宗は鎌倉時代から南北朝時代にかけて数々の名刀を残してきた刀工で、相模国で日本刀を制作していたとされています。

日本刀の五ヶ伝の一つとして数えられている相州伝の始祖として知られている人物で、多数の弟子を輩出している優秀な刀工です。正宗の銘の刻印がある刀もあり、城和泉守所持正宗磨上本阿 相州正宗を代表として、名物中務正宗、名物池田正宗、名物不動正宗の合計四振りが現存しています。

この他にも数多くの無銘の名刀が残されていて、国宝や重要文化財になっているものも少なくありません。刀の作品が多いのは確かですが、短刀の名刀も数が多く、さらに脇差、小太刀も現存しています。短刀無銘正宗はこの中で短刀に該当するもので、その中でも特に歴史的、文化財的価値が高いものとして位置付けられています。

短刀無銘正宗にも実は五振りある

短刀無銘正宗が高い位置付けになっているのは国による認定の度合いから理解することができます。正宗の残した名刀は国宝になっているものには刀が四振り、短刀が五振り存在しています。重要文化財となっているのは刀が六振り、短刀が三振り、脇差が一振りです。

それ以外にも十以上もの正宗作とされる刀や短刀がありますが、短刀無銘正宗は五振りが国宝に指定されています。この状況からいかに優れている刀と評価されているかが容易に想像できるでしょう。それ以外にも正宗の無銘の短刀として現存しているものもあるのは確かですが、一般的には短刀無銘正宗と呼ばれる場合には国宝になっている五振りのことを指しています。

さらに国宝になっている正宗の短刀も三種類に分類することが可能です。名物庖丁正宗とされているものが三振りあり、さらに名物日向正宗、名物九鬼正宗が一振りずつあります。全て正宗の作風である相州伝に基づいているもので、無銘でありながらも正宗の作であることが認められて国宝として指定されています。

五振りの短刀無銘正宗の特徴とは

それぞれの作品についてどのような特徴があるのかを簡単に解説していきます。一振り目に挙げられるのが愛知県の徳川美術館に収められている短刀、名物庖丁正宗です。

刃長が23.9cm、茎長が9.4cmの短刀で波紋には大ぶりの耳形乱れが入っている特徴があります。庖丁正宗は他の二振りに共通する部分があることが知られていて、幅広の姿になっていること、重ねの程度が薄いのが特徴です。

庖丁の作りに近いことから名物庖丁正宗という名前が付けられています。この名物庖丁正宗は徳川家康の遺品の中に入っていたもので、ほりぬき正宗とも呼ばれているものです。

二振り目に挙げられているのが永青文庫に所蔵されている名物庖丁正宗です。奥平松平家伝来の庖丁正宗で刃長は21.8cmになっています。安国寺恵瓊の蔵刀で、関ヶ原の戦いを経て徳川家康の手に渡ったという経緯を持っています。その後、徳川家康から奥平松平家に伝来しています。

三振り目に挙げられているのが大阪府の法人が所有している名物庖丁正宗です。日向延岡藩主の内藤家伝来の刃長21.7cmの一刀で、包丁透し正宗とも呼ばれています。

四振り目は三井記念美術館に所蔵されている名物日向正宗です。刃渡りは24.8cmで、水野日向守勝成が所持していたことで日向正宗と名づけられています。力強いしつらえになっているのが特徴で、五振りの中でも人気が高い一刀です。

五振り目に挙げられているのが林原美術館に保管されている名物九鬼正宗です。九鬼正宗と呼ばれているのは九鬼家の長門守守隆が所持していたことによるもので、後に徳川家康に献上されています。波長が24.8cmで内反りの仕上がりになっているのが特徴です。

 

正宗の手掛けた名刀は国宝や重要文化財として認められているものが多く、正宗本人も相州伝の始祖としてもよく知られています。銘を売ってある刀は四振りしか残存していない中、無銘でありながらも国宝となっている短刀が五振りもあり、高い評価を得ていることがわかるでしょう。

短刀は全て相州伝に基づいた仕上がりになっていますが、それぞれに特徴があって外観からしてもかなりの違いがあります。名物庖丁正宗が三振り、名物日向正宗と名物九鬼正宗がそれぞれ一振りあり、美術館で見ることができるので興味がある人は実物を見に行ってみると良いでしょう。

どの短刀も同じ場所に置いてあるというわけではないですが、関連する美術品も見比べながら正宗の手掛けた短刀巡りをしてみるのも一興です。

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