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公開日:2021/07/01  

単なる装飾じゃない!柄巻の役割と技法について


日本刀の「柄巻」は持ち手となる柄に巻かれており、柄を補強したり滑り止めとしての効果があったりする部位のことを指します。どのような意味があるか、さまざまな種類があることを知っている人は、多くないのではないでしょうか?そこで今回の記事では、柄巻の役割や種類について紹介します。日本刀に興味のある人は参考にしてください。

柄巻とは

「柄巻」は「つかまき」と読み、刀剣を握る際に持ち手となる柄(つか)にまかれた糸のことをいいます。刀剣を扱うために欠かせない部位で、拵の装飾や刀剣の操作に必要不可欠です。柄巻は組紐や革緒などを柄の鍔側に装着し、「縁の際」という部分から「頭」という部分の下側で巻き止めています。柄巻は古墳時代から奈良時代にかけて作られた直刀から見られ、紐のようなものや藤つるや漆木が用いられていました。

平安時代に直刀に変わり、日本刀の主流となる湾刀には、薄い金属板などでらせん状に施した文様、蛭巻という巻き方が登場します。蛭が巻きついたように見えることから蛭巻といわれ、柄の補強や手溜まりをよくする効果がありました。鎌倉時代に入ると紐や糸が巻かれるようになり、江戸時代では柄の母体となる木製の柄下地を革で包み、正絹といわれる混じりけのない絹糸で作られた組紐を巻き締めるようになります。

組紐は、鮫皮を張り付けているのが特徴です。鮫皮を使用することで、柄糸がすべりにくくなる効果があるのです。柄巻は、柄を補強、装飾する「柄巻師」によって巻かれます。柄巻師は鮫皮の品質を見たり、鮫皮を実際に着せたりしているのです。柄巻は柄巻師の技量によって美しさが変わり、巻き方の種類も豊富なものとなります。

素晴らしい職人である柄巻師ですが、現代では柄巻師を専門にしている職人はほとんどいません。現代で作られる刀剣に柄巻が用いられることは少なく、古い刀剣の柄巻を巻き直したり、再現したりすることが現代の柄巻師の仕事です。しかし、柄巻は刀身と同様に美術品としての価値があるほど美しく、柄巻師の技術とこだわりが詰まっています。

柄巻の役割

柄巻は、日本刀を持つときに握る部分である柄に巻かれている、組紐などのことをいいます。柄巻には木製の柄全体に巻きつけ、柄巻が緩まないようにしっかり巻き締めることで、柄そのものを補強する効果があるようです。また、柄を握ったときに手から抜けないための滑り止めとしての効果もあります。

柄の手溜まりをよくするといわれているのです。手溜まりとは、手の位置を固定するために設けられる場所で、手にしたときの具合について表すときにも使われます。もともとは日本刀が滑ったりするのを防ぐ、またしっかり握るためなどの実用性のために藤つるや組紐を巻いていました。しかし、鎌倉時代に入り糸や紐が使われるようになった頃から美術品としての価値を上げるため、また装飾を楽しむための柄巻が巻かれるようになったのです。

さまざまな柄糸と柄巻の技法

柄巻に使われる糸を柄糸といい、柄糸には主に組紐と皮革が使われます。組紐を使用する場合は基本的に絹が使われますが、組み方や柄の幅の広さによっては金属や布を使用することもあるようです。

柄糸には糸の組み合わせ方によってさまざまな種類があり、細い1本の糸を左右に縒りかけて組み合わせる蛇腹糸、偶数の糸で左右に縒りかけて組み上げる常組糸、表面にあまり織り目が見えず、平坦な組み方の糸である高麗組糸や織り目が連続したV字型のような、矢羽根文様や鷹の羽文様となって表れる笹浪組糸、織り目が縦に筋立って現れる畝組糸、比較的厚手に仕立て織り目が目立つように組む繁組糸といった、組み方によってさまざまな柄糸が存在します。

これらの柄糸を柄に巻くことを柄巻といいますが、柄巻の巻き方にも種類があるのです。糸の幅はそのままに、柄糸が重なる部分を盛り上げずに平らな仕立てにする平巻、重なる部分を高く盛り上がるように編み上げる摘巻、柄糸がひし形になるように組み合わせて巻く菱巻、柄糸を交差させずらせん状に巻き締める片手巻、柄糸が重なる部分で半ひねりしてより高く糸を盛り上げる捻巻、柄糸を複雑に組み合わせて蛇の背中のような文様を表すように巻く蛇腹巻き、柄を強調するために頭の上から掛けて抑えるように固定して巻く掛巻、などの種類があります。

柄巻をすることで柄の補強、拵えを華やかにする効果がありますが、さまざまな色の柄糸や巻き方を組み合わせることで、柄に個性を出せるのです。柄巻を行う際には、菱紙という加工していない和紙を使用します。柄糸を巻くときの目貫を固定するために使用するのですが、菱紙の詰め方は柄巻師によって異なり、個性が出る工程ともいわれているのです。刀剣の柄巻は個性を出し、美術品としての美しさを再現するために、柄巻師の技法とこだわり、個性が詰まった部分となっています。

 

柄巻は日本刀の美術的価値を高めるだけでなく、滑り止めとしての効果もあるなど、重要な役割を担っています。柄巻は柄巻師の技術とこだわりが詰まっており、日本刀全体で見た時とはまた違った美しさを持っているため、柄巻にも注目してみてくださいね。

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