Skip to content
公開日:2020/05/01  

現代にも名を残す有名な刀匠について解説

数々の名刀を世に送り出してきたのが刀匠、刀工と呼ばれる職人です。刀鍛冶は平安時代に始まり、さまざまな流派、伝法が派生しながら発展していきました。たくさんの刀匠が知られますが、今回は特に有名な名工の三条宗近、相州正宗、粟田口派について紹介していきます。

名刀「三日月宗近」「小狐丸」で知られる三条宗近

三条宗近(さんじょうむねちか)は、現在の京都南部にあたる山城の国で活躍した刀匠です。備前友成、伯耆安綱とともに「平安末期の三名工」と呼ばれていました。三条宗近という名前は、山城国の三条に住んでいたことが由来しており三条小鍛冶とも称されます。

有名な作品は「三日月宗近(みかづきむねちか)」や「小狐丸(こぎつねまる)」です。三日月宗近は国宝に指定されている名刀です。反りが高く踏ん張りが強くて細身の姿、たいへん優美な姿をしています。天下五剣のひとつとされますが、そのなかでもっとも美しいのがこの三日月宗近といわれます。三日月の名は、刃紋に三日月の形をした打ちのけが見られるところから来ています。

小狐丸は、一条天皇の勅命を受けて宗近がつくった大刀です。献上されたのちに九条家のもとへ渡り行方不明になったことから、幻の名刀ともいわれます。

謡曲に「小鍛治」がありますが、そのモデルになっているのは宗近であり、小狐丸の作成を依頼されたときの様子が謡われています。その内容は、一条天皇の守り刀を作るよう命じられた小鍛冶の宗近が、良い刀ができるよう神社に参り稲荷明神のつかいである狐とともに見事に刀をつくりあげたというものです。刀が「小狐丸」と名付けられたのはそのためだともいわれています。

宗近は貴族の出身でありながら刀鍛冶になったともいわれます。刀が優美な姿をしているのも、その影響なのかもしれません。

数々の天下の名刀を世に送り出した相州正宗

鎌倉時代から南北朝時代の初期にかけて活躍した相州正宗(そうしゅうまさむね)は、もっとも著名な刀匠の一人です。相州の新藤五国光が開いた「相州伝」を確立させ、数々の名刀を世に送り出しました。

徳川時代に名刀を記録した「享保名物帳」に多くの刀が掲載され、現在でも刀4口と短刀5口が国宝に指定されています。政宗は姓を岡崎といい、通称を五郎としていたので「岡崎正宗」「五郎入道正宗」との呼び名もあります。

行光、則重らと推し進め作風を完成させたのちには、多くの弟子も育てました。作品は「不動正宗」「京極正宗」などが有名です。不動正宗は、滝不動明王の彫り物があることからそのように呼ばれている短刀です。京極政宗は、讃州丸亀城主の京極家が豊臣秀吉から授かったためその名がつきました。

実は正宗の刀の多くは、作者の名を入れない無銘のものが多く、それゆえに偽物も多く出回っています。正宗の刀は、刀身に使われる鋼と高温で焼き入れをしたときにできる「沸(にえ)」、波打った刃紋の美しさが魅力です。

また切れ味は鋭く、大道芸の「がまの油売り」にも「天下の名刀正宗」をうたったフレーズが出てきます。現在でも木刀やおもちゃの刀には「正宗」と名が入り、刀を使わなくなった日本人にも周知される「日本刀の代名詞」となっています。

刀づくりのエリート集団・粟田口派

鎌倉時代の初期から中期にかけて活躍した粟田口(あわたぐち)派は、 京都東山にある粟田口で刀づくりをしていた一派です。粟田口派には、粟田口の始祖・国家(くにいえ)の子6兄弟、藤四郎吉光などがいます。作風は白っぽく見える「梨子地肌」と優美さを感じさせる刃紋が特徴です。

長男の国友は粟田口派を立ち上げ、現存している在銘作のうちのひとつは重要文化財として熱田神宮に保管されています。次男の久国は藤次郎との名を持ち、作品に短刀の「藤次郎久国」があります。三男の国安は太刀を多く残しました。

四男の国清は国安に似た作風を持ち、二品が現存しています。五男・有国の作品は伊勢神宮所蔵の重要文化財一口のみですが、もっとも粟田口派らしい作風を持っているところが特徴です。六男の国綱は、粟田口派のなかでも作風の異なる豪快な刀をつくっており、代表作には「天下五剣」のひとつ「鬼丸国綱」があります。

国友の子孫にあたる吉光(藤四郎吉光)は、短刀づくりの名手で、鎌倉時代には正宗と並ぶ名工とたたえられていました。しかし吉光がつくった刀は戦乱に巻き込まれ消失してしまったものも多く、現存しているものは二口のみとなっています。この粟田口派では、特に六男の粟田口国綱と藤四郎吉光が名工として有名です。

 

天下の五剣「三日月宗近」で知られる三条宗近、もっとも有名な名刀・相州正宗、鎌倉時代の名工集団・粟田口派を紹介しました。刀剣マニアはもちろん、刀の知識がない人でも聞いたことのある名前がひとつはあったのではないでしょうか。

刀匠によってこだわりや作風が異なり、それぞれの刀に違った味わいが感じられます。また、今回紹介した名工のほかにも子備前派、長船派などすばらしい刀工がいます。刀剣に興味のある人は、さらに刀づくりの歴史を紐といてみてはいかがでしょうか。

よく読まれている記事