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公開日:2021/02/15  

買取額にも影響あり?日本刀の本質を表す地肌の種類とは


日本刀の見どころは、地肌や沸(にえ)匂(におい)などさまざまです。これらのでき栄えによって日本刀の評価は左右され、買取価格にも影響します。見どころについての理解は鑑賞する上でも、先祖より受け継いだ品を手放す際にも避けることはできません。そこで地肌にはどのような種類があり、高価買取の対象はどういった状態か見ていきます。

どのような工程を経て地肌はできるのか

日本刀の外観は離れて眺めると、つややかな光沢を持ち対象物を映す鏡のような印象があります。しかし近づいてよく見ると、曲線や直線あるいはそれらが組み合わさった模様があるのがわかります。これは日本刀を製作する工程に起因するものです。日本刀の元となる鉄には微量ながらも炭素が含まれており、これを鋼と呼びますが、強度を増すために鋼の炭素を平均化しなければなりません。

平均化するために行う作業が鍛錬です。鍛錬には下鍛えと上げ鍛えがありますが、地肌のできを決めるのは下鍛えです。一枚の鋼を熱し、うち伸ばした後に真ん中辺りへたがねで横向きに筋を入れ、折り返します。再び叩いて伸ばし今度は縦向きに筋を入れ折り返します。

この下鍛えによって地肌の形が決まるのです。地肌は黒っぽい模様の濃淡を描きますが、鍛錬の末に平均化した炭素が複雑に混ざることで生まれます。折返しには一文字または十文字あるいは四方柾といった方法がありますが、それぞれが独特の地肌を生み出す要因となるので、折返しを理解することは日本刀を鑑賞する上で欠かせません。

一文字は横へたがねを入れる方法で、十文字は横そして縦と交互にたがねを入れます。打ち伸ばす方向が異なることで自ずと炭素の描く模様が変化します。これは日本刀を製作する地方と大きく関わりがあり、地肌は鑑定対象の刀がどの地方伝来のものか判断する基準のひとつです。

地肌にはどのような種類があり、各地方との関係とは

鍛錬の方法によって地肌の模様は変化しますが、それぞれの模様ごとに名称が付けられています。木を裁断した際に、山形や渦あるいは波の形が現れますが、日本刀も鍛錬の仕方で似た模様が浮かび上がります。それが板目肌です。一番よく見られる地肌といわれ、十文字に折り返すことでできます。相模辺りの刀工によくある特徴です。

板目に混ざった渦がはっきりと年輪のように浮かぶのが杢目(もくめ)肌です。備前辺りにしばしば見られます。木を裁断した際に真っ直ぐなラインが並ぶのが柾目です。刀にも柾目肌が存在し、大和地方の特徴の一つとされます。

これらの模様がさらに細かく詰まったものを、蒔絵の梨地に似ていることから梨子地肌と呼びます。山城地方に多く見られる特徴です。これとよく似た外観を肥前では小糠肌ともいいます。柾目肌の一種なのですが、真っ直ぐではなく大きくうねる様子を持つものが綾杉肌です。奥州で見られることから、地元の山にちなんで月山肌とも呼ばれます。

松の皮に似たものを松皮肌、雲が立ち上るような姿のものを八雲肌と呼び、それぞれ越中あるいは水戸に見られる特徴です。こうした特徴的な肌がない刀もあり、それを無地風と呼びます。無地風は江戸後期から一定期間に現れました。地肌は日本刀を鑑賞する上でも、価値を判断する上でも大切な視点ですから、買取の依頼など契約する際はよく理解し、誤ることがないよう注意しなければなりません。

買取額に影響する日本刀の価値を判断する基準

日本刀の価値を高める点はどこなのか理解することで、鑑賞する目を培うことも先祖から受け継いだ日本刀の価値を知ることにも役立ちます。とりわけ自身が購入した刀でない場合は、粗末に扱いかねないため要注意です。あまり興味がない方でも価値が判断しやすいのが、鑑定書でしょう。公益財団が4つのカテゴリーに分けており、その鑑定書が付されていれば容易に判断できます。

また有名な刀匠による作品ならば価値が高いと考えてよいでしょう。刀匠については、なかごに刻まれた銘などを参考にするとわかります。これら以外で買取額に影響する要因は、日本刀の鑑賞と関連性が高く、全体の姿や刃文あるいは地鉄の様子が重要です。

とはいえ一朝一夕に理解できるものではなく、かなり専門性が高いので注意が必要です。地肌はこうした要素のうち地鉄に関するもので、沸や匂さらには刃文とともに製作工程で違いが出ます。この他切先の形や焼きの入れ方などとともに、なかごの形にもさまざまな種類があります。

これらは刃に着目した基準ですが、拵(こしらえ)もまた重要で、鐔(つば)に関連する切羽やはばきさらには柄を巻く方法もさまざまですし、鯉口や下緒なども外観を美しく飾ります。これらを総合的に見定めて、日本刀の価値が決まります。文書などを参照して判断できないときは、専門家に鑑定を依頼するほうが賢明でしょう。買取を依頼する際は、複数の業者へ見積もりを取ることも大切なことです。

 

日本刀は鑑定書があるか、よほどの収集家でない限り地肌や刃文など価値の判断が容易ではありません。とはいえ、相続などで仕方なく受け継いで価値も知らずに買取を依頼するのは賢い方法ではないでしょう。専門家のアドバイスをお願いしたり、文書を調べるなど適正価格を把握する努力が大切です。

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