有名な言葉「敵に塩を送る」。戦国武将である上杉謙信の言葉は有名ですよね。実は戦国時代の中でも多くの武将に才能を認められていた人物でもあります。また同じく有名な武将、武田信玄と長く戦った戦場ではどのような刀を持って戦っていたのでしょうか。今回は上杉謙信の愛刀、そして愛刀のエピソードを含めて紹介します。
上杉謙信とは
上杉謙信とは戦国時代の有名な武将の1人。越後の国(現在の新潟県)を統一した山内上杉家の16代当主です。どのような人物だったのか紹介しましょう。
異名を持つほどの才能
上杉謙信は多くの武将から「戦上手」と称されていました。生涯の中で約70回にまで上る合戦へ参戦していたのです。多く参戦している中でも敗戦したのはたったの2回。勝利もしくは引き分けで終わる上杉謙信の強さは「越後の龍」「軍神」とも呼ばれました。
かの有名な織田信長でさえ、上杉謙信の強さを認めるほどです。上杉謙信が生きている間は同盟関係を維持し続けることを望み、敵対することを避けました。さらに上杉謙信は戦の才能だけではなく、領国の運営も上手だったのです。
宿敵武田信玄と塩エピソード
上杉謙信の宿敵とも呼ばれる武田信玄。2人の戦い川中島といって、なんと12年続きました。ここで生まれた「敵に塩を送る」という言葉。しかし武田信玄のいた甲斐国(現在の山梨県)は海がなく、同盟国であった今川家から塩を購入していたのです。
しかし武田信玄は同盟関係を破り今川家に攻め入ったため、塩の購入ができなくなりました。塩は食料保存に欠かせません。甲斐国の人々が窮状に陥っていることを聞いた上杉謙信が甲斐国へ塩を送るよう命じるというエピソードがあります。
実は「敵に塩を送る」という言葉は創作の可能性もあり、本当に上杉謙信が放った言葉なのか、真意は定かではありません。しかし上杉謙信の義に厚い一本筋な性格をよく表している話でしょう。
深い信仰心
上杉謙信は6歳の頃に父親を亡くします。同時にお寺に入門する形で預けられ、学問や武道を習いました。幼少期から育まれた仏教の信仰心は、武将となっても影響力を持っていたのです。後に毘沙門天を祀った毘沙門堂を居城建立しました。
上杉謙信の愛刀
戦上手な上杉謙信は刀剣のコレクターでもあったのです。持っていた愛刀は何があるのか、特徴や逸話を含めて紹介していきましょう。
姫鶴一文字
姫鶴一文字は鎌倉時代後期に作られた刀です。備前国の福岡一文字によるもので、鍔(つば)のない合口拵(あいくちごしらえ)の作りになっています。上杉謙信は姫鶴一文字の形と美しさを好んでいました。刃長は約71.5cm、反りは約2cmの太刀です。また姫鶴一文字は刃紋が弦の羽に似ていることも名前の由来でしょう。
山鳥毛
「山鳥毛」と書いて、さんちょうもう・さんしょうもう・やまとりげなど、さまざまな名称を持つ山鳥毛。上杉家の家宝とされていたほどの名刀でした。姫鶴一文字以上にとても美しい刀でした。備前国の福岡一文字派の作であり、刃長は約79.5cm、反りは約3.4cmです。
上杉謙信にまつわる刀剣エピソード
実は上杉謙信が持っていた刀剣は、あるお話があるのです。刀剣にまつわるエピソードを紹介していきましょう。
姫鶴一文字:逸話1
上杉謙信は姫鶴一文字の太刀が長いことから、刀鍛冶へ刀身を短くするよう家臣に依頼させました。姫鶴一文字を受け取った刀鍛冶は太刀の美しさから、万全の状態で作業をすべく依頼された翌日に取り掛かることを決めます。しかし刀鍛冶は夢を見ました。
美しい姫君のような女性が泣きながら「どうか、切らないで」と乞うのです。刀鍛冶は同じ夢を続けて見たため、上杉謙信の家臣の元へ姫鶴一文字を持って行き説明します。するとなんと家臣もまた同じ夢を見ていました。上杉謙信へ報告がされるとすぐに姫鶴一文字を短くすることはやめたのです。
姫鶴一文字:逸話2
明治天皇が姫鶴一文字を拝見された際に、とても気に入られたため刀剣の形を写すことを望んだという逸話もあります。
上杉謙信の愛刀の現在
エピソードを持つ上杉謙信の愛刀の1つ山鳥毛の現在は1940年重要文化財指定、1952年新国宝指定にされています。さらに現在瀬戸内市が購入を決め「山鳥毛里帰りプロジェクト」を立ち上げました。反響は大きく、当初目標としていた5億円は最終的に約9億円にぼったのです年3月に瀬戸内市へ保管が決まったものの、新型コロナウイルスの影響があり未公開となっています。
現在の保管場所は岡山県立博物館です。しかしオンラインでの観覧は可能となっているため、自宅から見られるでしょう。また時期は未定ですが、備前長船刀剣博物館へ保管場所を移動する予定となっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。戦国武将の1人上杉謙信の持つ、愛刀の逸話を含め紹介しました。上杉謙信はまさに武に生きる人物であり、義に厚い漢です。また、刀剣のコレクターが持つ刀は美しさにもこだわりがあります。刀剣の逸話からも美しさが漂ってくるように感じました。国宝指定された山鳥毛の今後の公開も楽しみになってきます。