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公開日:2022/04/15  

強度や使い方が異なる?日本の刀剣と西洋の刀剣は何が違うの?


時代劇を見ていると、必ずといってよいほど武士が登場しますよね。そして、武士が必ず持っているのが日本刀です。日本刀は伝統的な日本の技術の粋を集めた武器で、美しさの中に優れた機能性を有しています。同じ武器である西洋の剣とはどんなところが違うのでしょうか。ここでは日本の刀剣と西洋の刀剣との違いについて紹介します。

戦い方に違いがある

日本の刀剣と西洋の刀剣とでは、第一に戦い方に違いがあるようです。これは、戦いに際して重視するポイントの違いが反映されていることによります。

■切れ味に重点を置く日本の刀剣

日本刀は、刀身の片側にのみ刃がついている、いわゆる片刃剣の一種です。かつて大陸から鉄器が伝来した頃は儀礼用として用いられることが多かった刀は、その後実際の戦いに導入されるようになったことで、実戦に適した形状に姿を変えていきます。代表的なものが反りです。

もともとは、直刀よりも、反りがある方が騎馬で戦う際に適していたことから採用された特徴ですが、刀に反りがあることで抜刀の際の素早い動きが可能になり、また、引き斬るという動作が加わったことで、力を容易に刀身に伝えることができるようになりました。このような形状変化に伴い、戦国時代に至っては歩兵の集団戦でも効果的な打刀が登場しました。

■豪快に叩き斬ることを目的とする西洋の刀剣

西洋の剣は、多くの場合直刀で両刃の形状をしています。このような形状をとることで、斬るというよりも「突く」「叩き斬る」という用途でその真価を発揮しました。

合戦において主として槍や盾が用いられていた古代においては敵にとどめを刺すために斬る、刺す、という使われ方をしていたこともありましたが、とくに中世においては、プレートメイルのような全身を覆う重い鎧をまとった相手に大きなダメージを与えることを目的として、斬突武器あるいは鈍器として扱われました。幅広で厚みがあるので、極めて頑丈です。

製造方法の違い

日本の刀剣と西洋の刀剣とでは、製造方法にも多くの違いがあります。

■何度も叩くことで粘り強さを手に入れた日本の刀剣

日本刀は、鍛造による作刀が主流となっています。作刀の際の燃料は高温になりにくい木炭のみで、原料である玉鋼を充分に溶かすことができませんでした。その結果不純物の残った鋼でつくられた刀は脆く、とても実戦に耐えられるものではありませんでした。

試行錯誤の末、編み出されたのが、鋼を繰り返し叩いて不純物を取り除くという方法です。鋼は炭素と結び付くことによって硬くなる性質を持ちます。繰り返し叩いて重ねる、この「折り返し鍛錬」という鍛刀方法が、日本刀らしい粘り強さをもたらすことになりました。

また、日本刀には、玉鋼の炭素量が異なる皮鉄と心鉄という2種類の鋼が用いられています。比較的柔らかい心鉄を包むように、硬い皮鉄を巻き付けるという造り込み(この方法は造り込みの中でもとくに「甲伏せ」と呼ばれています)の工程を経ることで、外側は硬く、内側は柔らかいという2種類の性質を持たせることが可能になりました。

■高温で鋳造することで安価による生産が可能となった西洋の刀剣

西洋の剣は、金属を液体にして型に流し込む鋳造によって作られます。このとき使われる燃料がコークスです。コークスとは、石炭を蒸し焼きにして炭素部分だけを残したもので、燃焼時に高音を発します。

そのため、剣の原料となる鉄をしっかり溶かすことができます。この温度の違いによって、日本では行えなかった鋳造が可能になりました。鋳造ならば複雑な形もつくりやすく、工程も少なくなるため安価につくることができます。

切れ味などの実用性の違い

西洋剣と日本刀とでは、前述のとおり、そもそも用途が違うということが前提にありますが、実用性にはどのような違いがあるのでしょうか。

■切れ味

切れ味の点でより関心が深かったのは日本刀だといえます。戦国時代から江戸時代初期にかけて、日本各地で刀の試し斬りが行なわれていました。これは武芸の鍛錬および日本刀の性能確認の目的によるもので、時には大名が手ずから試し切りを行うことも。また、江戸時代に編纂された「懐宝剣尺」はもっとも鋭い切れ味の日本刀についての本であるなど、刀の鋭さは昔から関心の高いテーマであったようです。

■頑丈さ

頑丈さ、という点では西洋の刀剣に軍配が上がるでしょう。防御の最終形態ともいわれるプレートメイルを叩き斬ることのできる剣の頑丈さはいうまでもありません。日本刀は、西洋の刀剣ほどの厚みがなく、使うほど刃こぼれを起こし折れやすくなります。したがって日本の戦場における主力武器は弓矢でした。刀は近接用の武器として携帯されていたものの、ここぞというときに用いられる武器、という認識だったのかもしれません。

■あり方としての刀剣

刀剣のあり方は武器だけに留まりません。日本において原初は武器というよりもむしろ儀式用であり、近世以降の太平の世になると観賞用としての価値が見いだされるようになりました。西洋でも、近代以降、銃火器の台頭などに伴い装飾品としての意味合いが強くなるようになりました。西洋、日本のいずれにも共通するのは、刀剣が騎士道や武士道といった精神の象徴になっていることです。これらの精神は、刀剣を通じて現代にも確かに引き継がれています。

 

ここまで日本の刀剣と西洋の刀剣の違いについて紹介しました。まず、日本刀と西洋剣とでは、目的による用途が異なることが分かりました。手に入る燃料の違いなども背景に、作り方もまったく異なります。成り立ちが異なる両者ですが、古代より祭神具や美術品などさまざまな側面を持ち、とくに近現代においてはいずれも騎士道や武士道といった高い精神性の象徴となっています。今後も人々は刀剣を通じて、そのあり方に思いを馳せていくのではないでしょうか。

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