槍も薙刀も日本刀に負けず劣らず刀剣ショップの人気商品です。
人類最古の武器という説もある槍は、保存状態が良ければ買取金額が日本刀を凌ぐことさえあります。
ただし、槍には精巧な贋作も多いため、鑑定には豊富な知識と確かな審美眼が必要とされます。
ご自宅に眠っている槍があるなら、一度信頼できる刀剣ショップを訪ねてみることをおすすめします。
日本の槍の歴史
ニニギノミコトが天から降り立ったときに、大地に突き刺した天逆鉾(あまのさかほこ)から日本の歴史が始まりました。
鹿児島と宮崎の県境にある霧島連山の名峰、高千穂の峰の山頂には大地に突き刺さった巨大な鉾を祀ってあります。
鉾=矛であり、長い木製の柄の先に、先の尖った金属の刃を差し込んだものを言います。
つまり、槍と何ら変わることはありません。
鉾と槍の違い
鉾=槍と思って何ら差し支えありません。
けれども、紛れもない呼び方の違いがあり、何より槍は両手で持つことが多く、鉾の場合、片手に盾を持つため必然的にもう一方の手で持たざるを得ないという違いがあります。
やがて甲冑が使われるようになり、盾を持たなくなりました。
両手で持つことが可能になった鉾は進化したのです。
鉾と槍の違いは時代の違い、戦い方の変化による違いです。
古墳時代から戦や狩猟に欠かせなかった鉾ですが、平安時代後期あたりから薙刀(なぎなた)の普及に圧され、やがてまったく見られなくなりました。
あの武蔵坊弁慶が五条大橋で振り回していたのは薙刀です。
一時期、日本の歴史から名を消した鉾はその後、南北朝時代に槍と名を変えて活躍することになります。
武士の戦いが1対1の個人戦ではなく団体でのぶつかり合い、甲冑の素材も革となり、それまでの斬るという行為が難しくなり槍(鉾)は復活しました。
敵を倒すためには鋭く突き刺すことが必要であり、そのためには槍を用いることがもっとも効果的だったのです。
有名な槍、天下三名槍(てんがさんめいそう)
槍の世界にも際立った美しさを誇る名槍があり、ことに日本号(にほんごう)、御手杵(おてぎね)、蜻蛉切(とんぼきり)の3本は天下三名槍と呼ばれ、博物館所蔵となっているものもあります。
① 日本号
福岡市博物館が所蔵している槍で室町時代の作と言われています。
有名な民謡「黒田節」に謡われている日の本一の槍とはこの「日本号」を指し、全長3.2m、先端の刃の長さだけで80㎝になります。
刃の中央部分には龍が彫られ、その美しさと完成度の高さから大身槍の中でも最高位の槍とされています。
② 蜻蛉切(とんぼきり)
立てておいた槍の刃先に留まった蜻蛉が真っ二つになったという逸話から蜻蛉切と呼ばれるようになったということです。
戦国時代の武将、本田忠勝の愛用していた槍として有名です。
刃先の長さが60㎝、全長は6mになります。
後年、本田忠勝の衰えに合わせ90㎝ほど短くなったということです。
作者は藤原正真(ふじわらまさざね)、三河文殊派の刀匠です。
③ 御手杵(おてぎね)
東京大空襲で焼失してしまい、天下三名槍のうち唯一現存しない槍です。
全長3.8mのうち刃の長さが138㎝と半分ほどの長さになります。
このかなり長い刃の鞘が手杵の形に似ていることから御手杵と呼ばれるようになりました。
現在はレプリカが茨城県の結城蔵美館に展示されています。
槍の種類について
基本的には長い柄に短い刃の付いたものを槍と呼びますが、薙刀などの長柄武器と混同しやすく定義が曖昧になってきています。
槍には集団戦に威力を発揮した長槍と接近戦向きの短槍、そして投槍の3種類があります。
投槍の中にも柄の長いものと短いものがあり、短槍を投槍として使用することもあるので非常に曖昧な分類と言えます。
刃先の形状による分類がもっとも一般的であり、素槍や十文字槍、片鎌槍など市場に出回っています。
① 素槍
すっきりとした形状の槍で装飾性には欠けます。
直槍、徒槍と表すこともあり、集団戦において先陣を切る徒兵などの持つ槍です。
② 片鎌槍
素槍に対して穂に枝のようなものが付いているものを鎌槍と言います。
鎌槍の中で片側だけに枝の付いているものが片鎌槍です。
この枝の用途は相手の刀や槍の攻撃を引っかけて倒すためのものであり、技術を要する高度な戦い方と言えます。
そのため、武将クラスが所持していました。
戦国武将では加藤清正などが有名です。
③ 十文字槍
穂に枝のある鎌槍の一種で、枝が両側に対になっているものをその形状から十文字槍、あるいは両鎌槍と言います。
真田幸村が十文字槍の名手であったことはあまりにも有名です。
日本の槍は海外でも人気がある
日本の侍文化は、欧米の人々にとってエキゾチックでミステリアスなものとして依然絶大な人気を博しています。
栃木の日光江戸村や京都の太秦映画村を訪れる外国人観光客が途切れることはありません。
日本=侍・刀というイメージはいまだ根強いものがあります。
槍についても同様、槍は外国の歴史においても大いに活躍しましたが日本製の槍は外国製の槍とは違います。
日本刀と同じように多くの名工によって美しく殺傷能力の高い槍が作られました。
ご自宅で眠っている槍がかの名工の作である可能性もあります。
仮にそうでなかったとしても、保存状態がよければ刀剣ショップとしても両手を上げて大歓迎することでしょう。
槍は市場に出回ることが少ないため希少品として高価買取が期待されます。