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公開日:2020/10/01  

日本刀の鍛冶職人はどのくらいいる?

日本刀は、古くから製作技術が受け継がれてきた伝統工芸品であり、現在でも鍛冶職人が刀剣を作り続けています。しかし伝統工芸というのは、その伝承や後継者の確保が難しいケースが多いため、刀剣の愛好家の中には刀鍛冶の現状に興味を持っている人もいるでしょう。そこで今回は、刀鍛冶は現在どれぐらいいるのかと職人になる方法をご紹介します。

刀鍛冶に関する歴史と現在の人数

そもそも刀鍛冶とは、刀剣を製作する鍛冶職人のことであり、有名な職人になると「名刀~」といったように、名前を後世に残す存在になることもあります。そして優れた刀剣は美術品としても評価されるため、刀鍛冶は単なる職人ではなく芸術家としての側面もあるといえるでしょう。

歴史的に見ると、刀剣が盛んに作られていたのは主に江戸時代までであり、明治時代の廃刀令や、第二次世界大戦後のいわゆる「昭和の刀狩り」によって、日本刀の文化継承は危機的な状況に追い込まれました。

しかし、戦後の1958年に「美術刀剣類製作承認規則」という法律が整備されたことで、刀鍛冶という職業が合法化され、刀剣の製作ができるようになったのです。現在は、刀鍛冶として仕事をする場合は国家資格を取得する必要があるため、修行さえすれば誰でもなれる職業ではないといえます。

では、現在日本国内にどのくらいの刀鍛冶がいるのかというと、2017年時点では「300人程度」いるとされています。しかしこの300人程度というのは他の職業との兼業も含めた数字であり、刀鍛冶だけで生計を立てている人は30人程度しかいないといわれているのです。

なぜこれほど少ないのかというと、後で詳しく説明しますが、職人になるまでの道のりが厳しいことや、サラリーマンのように一定の収入が保証されているわけではないことなどがその理由だといえるでしょう。伝統工芸の継承は、どの分野でも困難な状況にあるといえますが、刀鍛冶の場合もそれは同じだといえます。

刀鍛冶になるための方法について

何かの専門職に就きたい場合は、専門学校などに通って技術を習得したり資格を取ったりする方法がありますが、刀鍛冶の場合はそうした専門学校のような教育機関はありません。そのため刀鍛冶になるためには、先輩の刀鍛冶に弟子入りして修行し、その上で資格を取得するという方法しかないのです。

もっと詳しく説明すると、弟子入りできる先輩の刀鍛冶は、刀匠資格を持っている人だけであり、鍛冶職人なら誰でもいいというわけではありません。そして資格を取得するための修行期間は5年以上と決められているため、スムーズに資格が取れた場合でも最短で5年はかかることになります。

ここでいう資格とは、文化庁主催の「美術刀剣刀匠技術保存研修会」に参加して修了することであり、そこで刀鍛冶に必要な基本的な技術が習得できているかどうかの実技試験のようなものが行われます。そのため、研修会に参加したからといって必ずしも資格を得られるわけではなく、まだ技術の習得が充分でないと判断された場合は、再び研修を受け直さなければなりません。

また弟子入り先での修行については、多くの場合、給料が出るわけではないので、住居費や生活費などは自分で用意する必要がありますし、さらに修行で使用する材料費などを負担しなければならない場合もあります。そのため、修行期間中の経済的な負担をどうするかということが、実は一番大きな問題になることも多いといえるのです。

さらに、弟子入りできる刀匠の情報も簡単には入手できないのが現状なので、修行先を探すだけでも苦労することが少なくありません。しかし最近は、刀匠の統括団体が窓口になって、体験入門や入門先の紹介などを行うという動きもあるため、興味がある場合はまずそちらへ問い合わせてみるのもよいでしょう。

独立の資金や収入はどうなっているのか

無事に修行を終えて資格を取得すれば、晴れて刀鍛冶の仕事ができるようになりますが、独立する場合は、製作場所の確保や資金が必要になります。資金に関しては、土地代を別にしても設備や道具を用意するのに数百万円~1000万円程度が必要になりますし、材料などを用意するための運転資金もある程度必要になってくるでしょう。

刀鍛冶の収入については、有名な刀匠になると年収が1000万円程度になるといわれていますが、実際はピンからキリまであるといえます。勤務するところや勤務形態などの条件によっても変わってきますし、有名か無名かということでも大きく違ってくるのが現状でしょう。このように、刀鍛冶というのは資金が必要ですし、一般的な会社員のようにある程度決まった収入があるわけではないため、そのことも成り手が少ない理由になっているといえます。

 

日本国内の刀鍛冶の人数は、300人程度ですが、それだけで生計を立てている専業の人は30人程度しかいないといわれています。刀鍛冶になるためには、最低でも5年間の弟子入り修行と国家資格の取得が必要であり、修行期間は無給なので、経済的な面での困難が大きいといえるでしょう。そして独立するときも設備や道具の用意で1000万円近くの資金が必要になりますし、収入もピンからキリまであり、安定していないことも成り手が少ない理由になっています。

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