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公開日:2021/03/01  

日本刀買取前の基礎知識|刀の鑢目(やすりめ)の種類とは


日本刀は骨董品として人気を集めているコレクション品の一つ、さまざまな見所があるため買取を利用する際にはいくつかのポイントを抑えておくことが高価な値段で売却することにつながります。この見所は、日本刀を作る上で細部までこだわりぬかれた結果でもあり、日本刀の鑑賞や買取に役立つ細かなポイントでもある鑢目について紹介します。

現代に近づくにつれて鑢目にも凝った意匠が登場

鑢目(やすりめ)は、日本刀の持ち手部分である柄に差した茎(なかご)を抜きにくくするために、茎に施してある滑り止めを意味します。茎は刀身の柄に覆われている部位で、滑り止めとなる鑢目があるので腰に差しているときでも刀身が抜けない、昔の職人さんの知恵ともいえる部分です。

この鑢目には日本刀が作られていた時代ごとに異なるのが特徴、上古の時代では物を打ち付けたり潰したりする工具でもある鎚を使って叩いて、形を整えただけの鎚目だけでも充分滑り止めとして役立てることができたのですが、次第に鑢がかけられるようになり時代が変わると同時に鑢目にも凝った意匠のものが登場するなど、デザインにもいろいろな種類のものが登場するようになりました。

鑢目は日本刀が作刀された時代や流派、刀工などの手法を把握できるため、買取の際に重視されることが多く鑑定の際に重要なポイントになる部分です。

これと同じく買取で鑑定が行われるものに刀身彫刻や日本刀の疵、疲れなどがありこれらがどのようなものであるのかは価値を知る上で大切なものです。日本刀は世界中のどのような刀剣とも異なる重層構造を持つのが特徴で、この珍しい重層構造は内側の柔らかい心鉄を外側の硬い皮鉄で覆うといったものであり、このような構造は折れにくく曲がりにくく、何よりもよく切れるなどの理想を実現します。

刀匠の工夫で矛盾を解決することも特徴の一つ

折れにくく曲がりにくい、そしてよく切れることは優れた日本刀の理想条件ではありますが、このような条件には矛盾があるといわれています。たとえば、折れない条件はゴムのごとく柔らかくて弾力がある、曲がりにくいということも硬く強固であるなどの意味があるためです。

しかしながら、比較的柔らかくて粘り気が強い心鉄を硬い皮鉄で包む手法は矛盾を解決するやり方でもあり、刀身の芯部分には柔軟性が高い鉄を使い、斬り付けた際に衝撃を吸収できるため刀身が折れることはありません。さらに、外側部分は強固な鉄で包んであるため曲がらないなどの理由があるわけです。

これに加え硬い皮鉄は耐久性が非常に高いので、鋭い切れ味を維持することができます。このような日本の技術が、日本刀に活用されているのです。鉄は空気に触れると酸化してしまう性質があり、この酸化により起きるのがサビです。

買取に出す際に、刀身やその他の部位にサビが生じていると査定評価はマイナスになりやすいため、保管には充分な注意が必要です。ちなみに、日本刀の材料は玉鋼と呼ぶ鉄であり、玉鋼はたたら製法で作り出されるもので砂鉄から直接鋼を作るケラ押し法と呼ぶ手法で行われるのが特徴です。

原料は不純物が少ないとされる真砂砂鉄が使われており、この砂鉄は花崗岩の母岩から生成されるチタンの含有量が極めて少なく融解温度が高めです。ケラ押し法は、炉にこの真砂砂鉄および木炭を入れて鞴と呼ぶ機能を使い空気を送り込みながら燃焼させるのが特徴です。

鑢目の種類により価値が変わる

鑢目には、いろいろな種類があるのですが、所有している日本刀がどのような種類になるのか、その形や取り付け方などにより把握することができます。鏟鋤は、鉋を使い茎の表面を鋤き取り、縦の荒い線だけが見えるのが特徴です。

切鑢は横と呼ばれることもあり、刀身の一番厚みのある部分に通る稜線でもある鎬筋に直角にして刀身に対して横向きに掛けてあるのが特徴で、最も標準なスタイルです。勝手は右側のことを意味するもの、鑢目が右上がりに掛けられているのは勝手上り鑢ですが、右下がりになっているものは勝手下り鑢と呼び、こちらは左利きの刀工が作った日本刀に多くみられます。

勝手下り鑢の傾斜がさらに急になっているものを筋違鑢と呼び、この傾斜がさらに大きなものを逆筋違鑢と呼ばれています。それぞれの特徴を把握しておけば、買取に出そうとしている日本刀の鑢目の種類を知ることができます。

筋違鑢の中でも角度がさらに急になっているもの、目安としては45度を超えるものは大筋違鑢と呼び、古刀の筑前国(現在の福岡県)の左文字派や備中国(現在の岡山県)の青江派などの作品の特徴です。

檜を編んだ垣をモチーフにした文様を檜垣と呼びますが、このようなデザインになっているものが檜垣鑢です。筋違鑢と逆筋違鑢の2つを掛け合わせて、2つを斜めに交差させてあるのが特徴、主に大和伝や美濃伝の作品やその流れを汲む刀工の中で見かけることが多い種類です。

 

鑢目は刀身の滑り止めといった役割がありますが、時代により形が異なり、種類も豊富にあります。その種類で買取価格が変わるため、鑑定の上では重要な部分です。どのような種類があり、価値が高い種類はどれなのか、査定前にしっかりと知っておく必要があります。

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