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公開日:2022/07/01  

機械で製造されていた?軍刀はどのような刀なのか


この記事では、機械製の軍刀の歴史について詳しくご紹介します。軍刀は、時代の需要や歴史背景をも感じ取れる刀です。従来の日本刀とは異なり、軍力需要や戦闘様式に応じて進化してきました。軍刀の歴史を知れば、鑑賞の楽しみも広がるでしょう。軍刀について詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください。

明治時代に登場した機械製の軍刀

刀といえば、水減し・折り返し鍛錬・焼き入れなどの工程を経て、刀鍛冶職人によって一つひとつ丁寧に作られるイメージがあります。しかし、明治時代には軍刀が機械で作られるようになりました。その背景には、明治維新の富国強兵があります。富国強兵とは、国の経済発展と軍事力の強化を目的とした政策です。政府は政策のひとつとして、戦闘様式にフランス陸軍の集団戦を取り入れました。

そして、戦闘方法を一新したことで、戦闘に使用する武器も新しく考え出されました。それがサーベル式軍刀です。しかし、サーベル式軍刀は片手で扱わなければならない軍刀だったため、両手で扱う日本刀しか知らなかった日本人が、サーベル式軍刀を扱うのは、なかなか難しいものでした。

そこで、1886年に刀身が日本刀、外装はサーベル式の軍刀が開発されたのです。そしてその後、戦闘方法や生産性に応じながら、軍刀は機械で作られるように変化していきました。明治時代の機械製の軍刀は、日本刀に比べて切れ味が劣り、壊れやすい粗悪品が多かったともいわれています。

■その後、昭和刀が製作される

明治時代に登場した機械製の軍刀ですが、その後、昭和刀や靖国刀がつくられるようになりました。昭和刀は造兵刀とも呼ばれ、将校が所持していました。鋼やステンレスをローラーや機械で打ち延ばした機械製の軍刀です。明治時代の軍刀と比べ、切れ味や耐久性は大幅にアップし、日本刀にも近い性能を実現していました。

軍刀は戦時中にどのように活躍したのか

軍刀には、将校・上級士官が自費で用意していたものや、騎兵・憲兵などの軍人が装備品として配給されていたものがあります。戦時中、日本は自然が乏しく、武器も不足していた一方で、敵国は大砲や拳銃を十分にもっていました。そんな状況のなか、軍刀はどのように活躍したのでしょうか。

ここからは、戦時中の軍刀の価値や意味についてご紹介します。

■精神的象徴としての軍刀

戦時中に装備品として支給されていた軍刀は粗悪品が多く、軍刀を使いこなせる兵士も少なかったようです。また、大砲や拳銃をもった敵と軍刀で戦うことは不利だった、と容易に想像できるでしょう。そのため、一見すると、軍刀を持っている意味などなかったのではないかと思われます。

しかし、日本兵たちは軍刀を常に身に着けていました。それは、拳銃や大砲などの武器が不足していたからというだけではなく、軍刀が日本人としての心の支えであったからです。日本の歴史のなかで生み出され、作り続けられてきた日本刀。軍刀を見て、武士道の精神や日本人の誇りを感じ取っていた兵士もいたことでしょう。

■恩賜の軍刀は成績上位者の証

軍刀のなかには、恩賜の軍刀(おんしのぐんとう)として陸軍士官学校を卒業する成績上位者に贈られることもありました。恩賜刀とも呼ばれ、1878年に明治天皇が洋式軍刀を優等卒業生に下賜したことがはじまりです。この恩賜の軍刀をもつ卒業生は、恩賜組や軍刀組と呼ばれて、高位高官候補者として優遇されました。有名な恩賜刀として「刀 銘 大阪住月山貞勝謹作 昭和七年十月吉日」があります。これは、西郷隆盛の甥の於田秋光が陸軍大学を卒業した際に受け取ったものです。

機械製の軍刀の価値は高いのか

機械製の軍刀と聞くと、大量生産された粗悪なものというイメージをもつ人もいるかもしれません。しかし、軍刀は戦闘方法や生産性に応じながら変化したものであり、軍人たちの心の拠り所として重宝されたものです。そこに高い価値を見出す人も大勢いるでしょう。また、軍刀は美術品としての価値も高く、今でも多くの愛好者がいます。機械製だからといって価値が低いわけではなく、その時代の需要や歴史背景が反映されたものとして、価値は高いといえるでしょう。

ただし、軍刀のみならず日本刀の価値は、保存状態や付属品の有無に大きく左右されます。さらに、誰が持っていたか、どのような所以があるのかも価値に関わる重要なポイントです。

 

この記事では、機械製の軍刀の歴史について詳しく紹介しました。明治時代の富国強兵を背景に戦闘様式や生産性に応じて、機械で作られるようになった軍刀。戦時中は、日本人としての誇りや、武士道が感じられる兵士の精神的な象徴として意味をもっていました。また、恩賜の軍刀として、陸軍士官学校を卒業する成績上位者に贈られていたこともあります。機械製といわれると、大量生産された不良品と思われますが、軍刀は美術品としての価値は高いです。ただし、軍刀の価値は保存状態や付属品の有無に大きく左右されるため、注意が必要でしょう。

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