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公開日:2020/12/01  

一番古い日本刀はどのくらい前のもの?


日本刀は刀剣であり、古墳時代にはすでに作られていた歴史があります。ただ、一般的に現代で日本刀と呼ばれるのは、平安時代に生まれたものであることが多くあります。いずれにしても古い歴史を持つものですが、果たして一番古いものはいつぐらいのものなのでしょうか。ここでは日本固有の鍛冶技術でつくられた刀について解説します。

古墳時代よりも昔から刀はつくられていた

日本で刀がつくられていたのは、古墳時代よりも前のことです。ただしこの頃の刀は、現在多くの人が知るような形ではありませんでした。反りがなくまっすぐで、「上古刀」(じょうことう)と呼ばれますが、厳密には日本刀の分類には入らない刀です。

とはいえ、日本でつくられていた刀ですから、いわゆる現在の日本刀ではないにしろ、その歴史は知っておきたい存在です。また、三種の神器のひとつとなる「天叢雲剣」(あめのむらくものつるぎ)も上古刀ですし、刀身が雷のように枝わかれしている「七支刀」(しちしとう)も該当します。

七支刀は奈良県天理市の石上神社の宝刀ですが、上古刀は上古時代の刀を意味し、古墳時代から大化の改新までの間につくられたことを示しています。古墳時代は3世紀中頃から8世紀初めころで、弥生時代の最後にも重なりますが、おそらく邪馬台国(やまたいこく)の女王「卑弥呼」(ひみこ)のころと聞けば想像できるでしょう。

所説ありますが、このころすでに鉄は輸入するだけでなく、国内でも加工技術が定着していたともいわれています。そんな中、国産の鉄で鉄製武器も増え、垂仁天皇(すいにんてんのう)は1000振もの日本の刀を打たせたとも伝わっています。日本で精製した鉄を日本人が鍛錬して作った刀、本来の意味でいえば、これこそが一番古い日本刀かもしれません。

現在知られる日本刀は平安末期に生まれた

現代人がよく知る日本刀は、平安時代末期に世に生まれました。刀身が細く、反りがあり、刃は刀身の片側にだけついている形です。現在、文化庁が日本刀と呼んでいいものを限定していますが、日本古来の製法にしたがってつくられていて、素材が玉鋼(たまはがね)であることが条件です。

ご存じの人も多くありますが、刀身は何度も火にくべて折り返し叩き、鍛錬して焼き入れを施したものでなければなりません。日本の文化として将来に残すため、現在は武器ではなく美術品として扱われています。これらの条件に合うもので、一番古いとされるのが平安時代末期にあらわれた「古伯耆物」(こほうきもの)と呼ばれる刀です。

日本刀として成立した最古級の刀であり、多くが国宝や重要文化財に指定されています。この最古級の刀については、近年大きな発見がありました。2018年、奈良の春日大社の宝物庫の天井裏から発見された太刀のうち、1振りが古伯耆物だったことを発表したのです。

出てきたのは12振りの太刀でしたが、そのうちの1本だけが、日本で一番古い部類の刀であったことがわかりました。見つかったのは1939年なのですが、無銘でもあり修理に時間がかかったようです。使った形跡もなければ研いだ形跡もほぼなく、日本刀の当時の姿を伝える重要な存在となりました。

形状や刃文の特徴から伯耆国(現在の鳥取県)で作られ、非常に高名な刀工「安綱」の作である可能性もあるといいます。安綱は「酒呑童子の首を落とした」という伝説を持つ国宝「童子切」(東京国立博物館蔵)を打った刀工ですから、この太刀の価値は一気に高まることになるでしょう。

そうでなくとも、制作時の姿をほぼそのまま残したあまりに貴重な宝であり、極めて現存数が少ない古伯耆物の中で、長寸で珍しい刀だといわれています。

なぜ直刀から反りのある太刀へと変わったの?

刀身に反りがある太刀が生まれたのは、平安時代中期以降です。その理由は、刀が現在のように美術品ではなく武器であり、実戦に使われていたからに他なりません。当時戦には馬が登用されるようになっていて、馬に乗って戦う武士にとっては、抜きにくい直刀は非常に不便な武器でした。

腰あたりで大きく反る太刀は、馬に乗ったままでも抜刀しやすかったのです。太刀はかなり長い刀わたりを持っていますが、これもまた馬に乗ったまま相手を攻撃するのに必要な長さでした。実は根本より先へ向かってだんだん細くなっているのですが、これは切先を小さくすることで、刺しやすく抜きやすい形状にしたものです。

平安時代後期は武器の需要が高まり、刀工が組織化し流派が生まれはじめたころでもありました。前項で登場した安綱も、平安時代中期に刀工として名を挙げた最初期の人物のひとりです。ちょうど直刀から反りのある形状へと変遷するさなかに活躍し、現在国宝となった童子切は東京国立博物館へ納められています。

 

日本でつくられた最古の刀は、古墳時代にまでさかのぼることができますが、現在日本刀としての定義を満たすもので一番古いものは、平安時代後期のものとされます。当時はちょうど直刀から反りのある太刀へと変遷を遂げた時代であり、刀工が集団化して組織をつくり、それぞれの流派が生まれ始めた時代でもありました。当時の刀は「古伯耆物」(こほうきもの)と呼ばれ、最古級の刀は奈良の春日大社の天井裏から、ほぼ当時そのままの姿で見つかっています。

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